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10年で20万円以上高くなった楽器も 少子化や楽器価格高騰で「吹奏楽部人口」が将来半分以下になる恐れ 複数の学校集まりプロなどの指導受ける「地域展開」で活性化する学校も 地方では「受け皿」なく12月06日 05:00

中学校で放課後に聞こえてくる吹奏楽部の演奏と言えば、まさに青春の1ページ。 しかし専門家によると将来、「吹奏楽部人口」が“実質上半分以下”になるという「危機的な」予測があるといいます。 その最大の理由は少子化。 その対策として国が進める部活の「地域展開」は、これによって活性化する学校もあるものの、指導者が確保できない地方では、”足枷”になっている面もあります。 さらに「楽器価格の高騰」も。20万円以上高くなっている楽器もあるのです。 ■進む部活の「地域展開」プロのサクソフォン奏者が指導

放課後の音楽室に鳴り響く楽器の音。兵庫県・猪名川町の中学校で吹奏楽部の練習が行われていました。 【プロのサクソフォン奏者 野島レナさん】「ここでまたブレスとって、次のフレーズやな」 こう指導するのは顧問の先生ではなく、プロの演奏者です。 【プロのサクソフォン奏者 野島レナさん】「できないところも、言ったらすぐ『あっ、そっか』と言って、素直に改善していくスタンスがいいなといつも思います」 これは、学校の先生に変わって野島さんのようなプロや民間団体などに部活動を委託する「地域展開」と呼ばれるものです。 こうした背景には、部活動によって教師の労働時間が長時間になったり、少子化で学校単位での部活が困難になったりする問題があり、その対策として国が2年前から進めています。 猪名川町でも6年後には、生徒の数が現在のおよそ800人から半数以下の350人ほどになる見通しです。 4月から2つの中学校の吹奏楽部の生徒を集めて、野島さんをはじめ地域のサポーターおよそ20人が指導しています。 【中学2年生】「言っていることが分かりやすいし、実際に一緒にやってくれたりするから良いと思う」 【プロのサクソフォン奏者 野島レナさん】「これ(部活指導)を学校の先生が授業の準備の合間行っていたと思うと無理があったんだろうなと。『地域展開』していくというのは、学校の先生の働き方を考えれば仕方ないことだと。 みんなで吹奏楽の場を何とか残していこうという方向に向いていると思う」 ■音楽ホールでオーケストラが指導も!

部活動を地域展開したことで新たな体験をしている生徒たちもいます。 門真市では市内にある6つの公立中学校全てで吹奏楽部を地域展開していて、生徒40人余りが音響設備の整った音楽ホール・「ルミエールホール」に集まり、関西を代表するオーケストラのひとつ「関西フィルハーモニー管弦楽団」の団員などから指導を受けています。 【ルミエールホール 別府尚武館長】「関西フィルのメンバーの指導の後は急に上手くなる。びっくりするぐらい変化がある」 さらに、大人数で活動するメリットもあります。 【ルミエールホール 別府尚武館長】「部活動として(学校単位で)やってるのが10人とか8人とかでやっていると、どうしても小編成の演奏しかできない。 ただここに集まってくると40人以上で大きな編成での演奏ができるので、それが非常にやっぱり楽しいと生徒たちは言ってくれています」 ■楽器を用意するための資金確保が必要など課題も

一方、現状、ホールで全体練習ができるのは週2回。それ以外は、生徒の自主練習に頼らざるを得ないという課題もあります。 さらに別府館長は別の課題も指摘します。 【ルミエールホール 別府尚武館長】「もし部員が増えた時とか、古い楽器なので壊れた時に、新しい楽器を購入するというのが非常に課題だと思います」 これまでは、学校が用意していた楽器を、「地域展開」後は、受け入れ団体や生徒個人で用意する必要があり、資金確保が必要になってくるというのです。 ■10年で20万円以上高くなった楽器も

中学時代、吹奏楽部に所属していた記者が10年前に40万円ほどで購入したトロンボーンの価格を楽器店で尋ねてみました。 (Q.私が10年ほど前にトロンボーン購入したときのカタログなんですけど、今ってどのぐらい?) 【ハーモニー楽器 福永一矢代表】「これですね。64万9000円」 なんと、同じ型番の楽器が10年前と比べて、20万円以上高い値段で販売されていました。 【ハーモニー楽器 福永一矢代表】「材料がまず輸入品なんで、輸入するということは、為替の問題が出る。いろんなコスト面で上がってしまってるというのが一番大きいですね」 こうした楽器の高騰などは吹奏楽部の「地域展開」の障壁の一つとなっています。 【ハーモニー楽器 福永一矢代表】「結局一番恐れているのが、ある程度費用がかかるので、楽器を購入するのが高いので、それを持っている方しかできないということになってきますよね。それが果たして教育としてどうなのかというのは、ものすごく疑問には思いますね」 ■「減っているのをV字回復する方法は無いので危機的だということです」

しかし専門家は「地域展開」を急がなければ、吹奏楽文化の維持が困難になると話します。 【北海道教育大学 渡部謙一准教授】「(部員数が)平均で5%ずつくらい下がっているんですよ。減っているのをV字回復する方法はないので、危機的だということです。 『地域展開』しないでいったら、維持できるのかと言ったら、できない。それは明白です」 ■地方では指導者が見つからず「地域展開」が困難な学校も

一方で、猪名川町や門真市のような“受け皿”がない地域もあります。京都市から車でおよそ1時間離れている京都府南丹市は、その一つです。 陸上などの運動部では、地域の大学生が指導するなど「地域展開」が進んでいますが、吹奏楽部では夕方の時間帯に指導できる指導者を見つけることは、できませんでした。 【園部中学校・吹奏楽部 黒田毅顧問】「地方になってくると、そんなにプロの方がおられない部分で、ここまで来てもらうだけでもかなり経費がかかったり、なかなか難しいと思うんですよね」 コンクール入賞を目指して努力を続ける生徒にとって吹奏楽部は大切な存在です。 【吹奏楽部 部長】「学校とはまた違う勉強以外でみんなで頑張る場所、思いっきりできる場所っていうのが楽しいです」 少子化で、10年後には生徒数がおよそ半分になる見通しの南丹市。 しかし、学校単位での活動が維持できなくなった場合でも、近くの学校と合同で活動することは難しいといいます。 【園部中学校・吹奏楽部 黒田毅顧問】「南丹市だけでも広いので、自転車来てもらういうわけにもいかないところがある。それに楽器が付いてきますので、部活自体をやめるところもありますので、その後吹奏楽はどうなるんかなあと、私も不安があります」 生徒が吹奏楽を楽しむ環境をどう守るのか。その音色が未来へ響き続けるための対策が求められています。 (関西テレビ「newsランナー」2025年12月5日放送)

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