
「全額自己負担になるかも薬品リスト」”大バズり”国の医療費減っても“家計の負担は大幅増”の見方も07月19日 05:00
いまインターネットやSNSで話題になっている「全額自己負担になるかもしれない医薬品リスト」。
SNSでは転載が繰り返され、いわゆる「バズって」いる状態だ。
参院選の争点の一つである「社会保険料の引き下げ」の一環として、一部の党が公約にも掲げる「OTC類似薬の保険除外」問題。
「OTC類似薬」という聞きなれない言葉のせいか、今一つ関心が薄いように感じていたが…
「実際に保険から除外されそうな薬のリストを見ると、自分にも関係がありそうなものが並んでいて、多くの方が興味を持ったのではないでしょうか」
と話すのは、このリストをXに投稿した張本人、「全国保険医団体連合会」の事務局次長・本並省吾さん。詳しく話を聞いた。
■処方箋なのに「類似薬」?
【全国保険医団体連合会 本並省吾さん】
「OTC医薬品」とは、Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)の略で、ドラッグストアなどで医師の処方箋なしに購入できる医薬品、つまり『市販薬』のことです。
一方、「OTC類似薬」は、医師の診断を受けて処方される薬の中で、「OTC医薬品(市販薬)」と成分や効果が似ている薬のことです。
保険適用となるため自己負担は1~3割、市販薬より安価で入手できます。
政府は、国の医療費を削減するため、「OTC類似薬」を保険適用から除外し、全額自己負担の「OTC医薬品(市販薬)」を購入するように検討、早ければ2026年度から実施しようとしています。
■「子育て世帯」も「中高年」も負担“大幅増”
市販薬は処方箋に比べて格段に高く、試算では10~40倍ほど個人の負担が増加します。
そのため、「治療が続けられなくなる」と患者団体などから反対の声があがっていますが、影響を受けるのは特定の患者だけではありません。
例えば、中高年に多い「ひざ痛(変形性膝関節症)」。
炎症を抑え、痛みをやわらげるためにロキソニンなどが使われますが、4日分の薬代は「病院で処方箋をもらうと(3割負担で)40円」に対し「市販薬700円」と約18倍の価格差があります。
厚労省発表の患者数は、自覚症状のある人が約1000万人、潜在的患者数は約3000万人です。
患者数の多さでいえば、「花粉症を含むアレルギー性鼻炎」も大きな影響が考えられます。
2019年の全国疫学調査で、国民の2人に1人が罹患していると発表され、患者数は年々増加しています。
28日分の薬代で計算すると「処方箋(3割負担)170円」に対し、「市販薬2000円」と12倍の価格差です。
そしてOTC類似薬の保険外しで大きな影響を受けるのが、子育て世代です。
保険から外そうとしている薬には、「咳止め」や「熱さまし」、「皮膚の保湿剤」などがあります。
風邪や皮膚トラブルは、多くの子供によく起こりますから、特に小さいお子さんのいる家庭の負担は大幅に増加します。
保険外だと子ども医療費助成制度も適用されなくなるので、まさに「子育て世代の家計を直撃」です。
便秘の薬として多くの妊婦に処方される「酸化マグネシウム」も、保険外しのリストに入っていますし、妊娠中のお腹のかゆみや妊娠線の予防に必要な保湿剤も、保険外しの対象です。
■日常生活が送れない 患者さんの訴え…
先日、「全国保険医団体連合会」宛に変形性関節症の患者さんから、「OTC類似薬が保険適用除外になると日常生活が送れなくなる」との訴えが寄せられました。
この方は、両膝、両股関節、両足首の6か所に症状があるため人工関節などは利用できず、車いすや装具を利用しつつ、消炎鎮痛剤(ロキソニンテープ、ボルタレンゲル軟膏など)や医薬品を併用して日常生活を過ごされています。
保険適用から除外され、市販薬の購入が必要となると、負担が大幅に増えて治療の継続が困難になると訴えられています。
治療を必要とする患者さんが安心して治療できる制度の継続を強く希望します。
(全国保険医団体連合会 本並省吾さん)