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ペットにも押し寄せる“高齢化”通院は飼い主の負担も大きい 『往診専門』“犬・猫”ドクターの取り組み06月15日 07:43

犬の平均寿命が延びている。 一般社団法人ペットフード協会によると、調査を始めた2010年に13.87歳だった犬の平均寿命は、2024年には14.9歳と、14年間で1歳延びた。 犬の1歳は人間でいうと4歳(小型・中型犬)~7歳(大型犬)。 (※環境省の「ペットフード・ガイドライン」より) 高齢化の波は犬にも訪れている。 大切なペットが長生きしてくれることは本当にうれしい。一方で病気や介護といった新たな問題も出てくる。 犬も糖尿病やガンになるし、認知症にもなる。歯周病も多い。定期的な検診が必要なのは人間と同じだ。 とはいえ、ペットの通院は何かと手がかかる。 DXを通じて動物病院の支援を行うTYLの調査によると、犬や猫の飼い主の6割近くが「動物病院に連れて行くのに苦労している」と回答。 「待ち時間が長い」「移動が大変」「ペットが病院を嫌がる」が悩みの上位を占めている。

そんな悩みの解決策につながりそうな『犬と猫の往診専門ドクター』が、徳島市に誕生した。 永嶋彩巴さん(30)。往診する獣医師はいるが、「往診専門」は珍しいという。 ことし5月、夫で獣医師の永嶋惇平さんとともに「とくしま鳥の病院」を開院。 鳥の診療を中心に行う惇平さんをサポートしながら、彩巴さんは犬と猫の「往診専門」獣医師として活動している。 往診診察で動物病院と同じようなケアが受けられるのか?診察の様子を見せてもらった。 ■往診ならではの「待ち時間なし」

「今から病院を出るので30分後ぐらいにお伺いします」 30分後、永嶋獣医師が患者宅に到着。往診カバンと体重計を持っての登場だ。 動物病院の待ち時間は長いことが多い。予約をしても長時間待つのはザラだ。 永嶋獣医師は、予約時に到着目安時間(1時間程度幅をもたせる)を伝え、自宅への到着前に連絡をくれるシステムなので、患者は待ち時間がほとんどない。 ■犬も慣れた環境でリラックスして受診

家に入ったら手を洗い、さっそく診察に取り掛かる。 患者さんはトイプードルのメイちゃん。1歳の男の子で、生後間もないころから永嶋獣医師の診察を受けているという。 まずは体重測定と検温。次に聴診器でお腹の音を聞く。 その後、目、耳の穴、歯と丁寧にチェック。 メイちゃん、自宅ということもありリラックスして診察を受けている様子だ。

【永嶋彩巴獣医師】「特に問題ないですね」 事前に飼い主さんから「最近、何回か嘔吐した」と聞いていたので、特に胃のあたりを念入りに触診したが異常なし。 嘔吐時の状況を詳しく聞き、「胃の炎症を抑える薬と吐き気止め」を処方することに。 胃に優しいドックフードをいくつか紹介し、サンプルについて説明していた。 ■狂犬病の予防接種もスムーズに

この日は年に一度の狂犬病の予防接種を行った。 同行していた夫の永嶋惇平獣医師がサポートし、あっという間に完了。 メイちゃんは鳴くこともなく、いたって順調だ。 自治体への登録手続きも、動物病院と同様、永嶋獣医師が代行してくれる。 ■耳掃除や爪切りなどの対応も

続いて永嶋獣医師が始めたのが、耳の掃除。 犬の病気で多いのは外耳炎など耳の病気。犬の耳は入り口から鼓膜までがL字型に曲がっているため耳あかなどがたまりやすく、炎症や感染を起こしやすいのだ。 表面の汚れをさっとふき取るぐらいは飼い主でもできるが、耳毛を切ったり、奥の汚れを取るのは、敏感な部分だけにプロに任せるのが安心といえる。 永嶋獣医師は耳の中の毛をカットし、専用液を染み込ませた綿とピンセットを使って耳奥の汚れを丁寧にふき取っていく。最後に炎症を抑える軟膏を塗って耳掃除は完了。 この日の診察はこれで終わりだ。 なお「耳掃除」の他にも「爪切り」や「肛門腺絞り」、「歯の検診と歯みがき」などもお願いできる。 ■「往診料」は往復5キロまで1500円

気になる「往診料金」は、往復5キロまでが1500円で、5キロごとに500円加算されるシステムだ。 この日の往診料金は3000円。 しかし、通院なら軽く2~3時間はかかるところを、40分程度の診察時間のみで済み、犬を連れて移動する手間もなく、何より犬がリラックスして診察を受けられているから、十分に価値があるように思える。 ■「大型の老犬の通院は特に大変...」

【とくしま鳥の病院 永嶋彩巴獣医師】 「神奈川県の動物病院で働いていた時、犬猫往診を経験し、様々な理由で病院に連れて行くことが難しい患者様がたくさんいらっしゃることに気付かされました。 中でも大型老犬は、体を動かせなくなると、飼い主さま自身が病院まで連れて行くのが本当に大変だということを目の当たりにしました。 動物にも飼い主さまにも負担の少ない『在宅治療をメインとした往診』を、地元・徳島県でもできれば…と思ったのが、往診専門医を始めたきっかけです。 近年ではペットの高齢化が進み、人とペットの老々介護も問題となっています。 往診獣医療が治療の選択肢として必要不可欠な存在になると同時に、困っているご家族の力に少しでもなれるよう尽力したいと思います」 (とくしま鳥の病院 永嶋彩巴獣医師)

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