こぼれ落ちた給水ボトル、その時…
【2013年・大阪国際女子マラソン】

アツい実況でレースに華を添えてきた関西テレビのアナウンサーたち。
心に残る思い出の実況や名シーンをお届けします。
福士加代子選手

福士選手、3度目の大阪でアクシデント

関西テレビアナウンサーの若田部克彦です。
私が振り返る大阪国際女子マラソン、想いでのシーンは2013年の福士加代子選手の走りです。
福士加代子選手
実は福士加代子選手は2008年のオリンピック選考レースで初マラソンを走りました。そこから4年たった2012年の2度目のマラソンも、この大阪でオリンピック選考レースを走りましたが、ともに非常に悔しい、苦しい思いをした選手でもありました。
福士加代子選手
そんな日本長距離界のスター選手が、マラソンで結果を残せない中で迎えた2013年の大阪国際女子マラソン。このレースは小﨑まり選手、そして渋井陽子選手といった福士選手が非常に信頼する、そして慕う、2人のランナーが、大阪に集ってくれた大会だったのです。

私は当時、1号車という、先頭手段を追うという役割の実況車でした。

特に印象的だったのが、5キロ地点で福士加代子選手が給水ボトルをとることができなかった場面でした。

所属を超え…手渡された給水ボトル

(実況)※2013年1月27日大阪国際女子マラソン
福士加代子選手
『さぁ給水テーブルに向かいます、まず渋井陽子取りました、そしてそのあとは福士加代子です、あぁ、取れなかった!福士加代子、最初の給水ボトルを取り損ねました。』
福士加代子選手
(放送画面がスロー再生に切り替わる)
『今、渋井がとった後の、福士のこの動き…あぁっとこぼれてしまった。こぼれ落ちた給水ボトル。』

(解説の増田明美さん)
『でも逆にこれで目が覚めるかもしれませんね、もっと落ち着かなきゃって…あっ!渋井さんが渡してくれました!』
福士加代子選手
(実況)
『そうですね、渋井が渡しました!』
『私の背中を見て、そんな表情で渋井陽子が福士加代子に渡しています。』
福士加代子選手

「アタシが守ってやんなきゃ」の意味

大阪国際女子マラソンという、実業団の代表選手として出るという、そんなレースの中で、「ライバルチームの選手に給水ボトルを渡すんだ…」と感じたのを覚えています。

実はこのレースの前、渋井陽子選手に取材で話を聞いたときには「福士はガラスのハートだから、アタシが守ってやんなきゃいけないんです」なんて話をしていて、それどういうことかなぁと思って中継車に乗ったんですけれども、その給水ボトルをとれなかったことを助けたっていうので、渋井陽子選手の福士選手への愛情というのを感じました。
福士加代子選手
『皆でいい記録を狙おう…』そんな思い入れが詰まった、非常に印象的レースでした。