番組審議会 議事録概要
『Mr.サンデー』について審議
- 放送日時
- 2020年5月24日(日)22:00~23:15
- 視聴率
- 5月24日(日)
[関西]16.2% 占拠率(28.2%)
[関東]13.1% 占拠率(24.7%) - オブザーバー
- 制作局東京制作部 プロデューサー
松田 智
制作局東京制作部 ディレクター
脇山 健人
参加者
委員 |
委員長上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
---|---|
レポート参加 |
井上章一(国際日本文化研究センター 所長) |
関西テレビ |
羽牟正一 代表取締役社長 |
6月11日開催、第615回番組審議会では、5月24日に放送された、東京制作部とフジテレビの共同制作、宮根誠司さん司会「Mr.サンデー」が審議されました。この日に取り上げられた新型コロナウイルス関連は、 ●1都3県&北海道あす解除へ ●解剖で判明新型コロナの「死因」は血栓 ●病院苦悩第2波への備えで経営圧迫 ●全身の血管がコロナの標的切り札は「Dダイマー」●町工場が「作る」新たな日常グッズ等で、委員の皆様からは、番組や新型コロナウイルス報道全般に対する様々なご意見をいただきました。
番組を視聴した感想
- 視聴者も、自分の居住地、勤務先、その辺りがどうなっているのかに最大の関心事があったのではと思う。それゆえ、地元メディアの取材力、伝える力が試されたと思う。大阪にテレビ局があってよかった、関テレがあってよかったと視聴者に思ってもらえるチャンスでもあると思う。
- コメンテーターはたいていリモートで出演してスタジオが密になるのを避け、時節に相応しい配慮をしていたが、コロナ以前に制作されたCMでは、大勢の人たちが集まり密な状態でアピールをするものがあり、気になった。
- 100年前のスペイン風邪の時もあったが、それは第2波、第3波に交ざってコロナウイルスが変質している。感染力も増しているとか、それに罹患する年齢層が違うとか、そこら辺もウイルスのコメンテーターが1人いたんだから、もう少し掘り下げてほしかった。
- 内容的に一番気になったのが小池都知事の発言で、迂闊な若者が街に出歩いたことで第2波が起きるようなニュアンスの発言をした時に、いやいや、若者だけの問題じゃないと、スタジオでもフォローして欲しいと思った。
出演者について
- コメンテーターが少ないのはいい。少数の専門家だけでも、番組は十分成立することがよく分かった。これを機に番組が少しずつ変わっていくのではと思った。
- 5Gになれば変わるかもしれないが、今、タイムラグが非常にある。このリモートの環境が続くなら、スタジオにいる話し相手と、本当に話を聞きたい専門家ぐらいに絞ってもいいし、コメンテーターはこれまでこんなに必要だったかを見直すいい機会かなと思った。
- コメンテーターは基本的にはやはり専門家であるべきだが、専門家の話は正確性を求めるがあまり、回りくどく分かりづらいことも多い。素人が理解できるよう、過不足なく通訳できる人とペアで番組を進めていくことが必要だと思う。
演出・リモート出演について
- 未知のコロナウイルスについての番組制作にあたり、何を視聴者に伝えたいのか、何を放送したいのかということを踏まえ、出演者・コメンテーター人選の制作者側のスキル、誰に何を聞くのかという質問力がより求められてきていると思う。
- 宮根さんのコメンテーターへ振るテンポが早い。リモートのせいだと思うが、そのあたりも配慮して、やはり番組は作られるべきではないだろうか。
- 医療崩壊とか感染の状況は根本的な問題なので、むしろコメンテーターを入れて議論をする、Dダイマーを含めた血栓の問題、コロナウイルスが血管に炎症を起こさせることに私は関心を持ったので、これはニュースからいうと鮮度の比較的高いほうであって、逆にミニドキュメンタリーの方式でコメントを挟みながら放送するような形のほうがよかったのかなと思う。
- ナレーションの問題です。殊さらに重々しく言ってみたり、思わせぶりな抑揚をつけたりが気になった。そうすると、伝えているものが違う方向に誤解されかねない。こういう時の報道は、淡々としたほうがいいのではと思った。
- コメンテーターの柳澤さんのリモート環境、アマチュア無線の機材が後ろにダーっと並んでいて、そっちに目が行ってしまい、背景に変な情報があるのはしんどいなと思った。
各コーナーへの意見
解剖で判明新型コロナの「死因」は血栓
- 塞栓症と血栓症の違いについて分かりやすく説明されていたが、もう少し文字でもフォローしないと、理解が追いつかない人もいるのではないかと思った。
- 血栓による死亡だが、コロナで血栓ができやすいことは知っていたが、そのウイルスが血管を攻撃し、そこで血栓ができるというのを初めて知った。これは非常に新しい発見で、面白く見た。
- コロナウイルスが血管を攻撃し血栓をつくるという新たな知見はとても興味深く、命と治療に関わるとても深刻かつ重要な話であることは分かったが、その症例数が全体の感染規模からするとどうなのかがよく分からなかった。治療する医師には知っておいてほしい知識ではあるが、個人としては、これを聞いてどう対処して、何に気をつければいいのか分からず、ニュースのメッセージがぼやけていたような気がした。
- 新型コロナの死因に関して、新型コロナが血栓をできやすくするという説明や、基礎疾患のある人たちが重症化したり、突然容態が急変する理由がよく分かる内容で、説得力があった。
病院苦悩第2波への備えで経営圧迫
- 新型コロナに対応することで病院の経営が厳しくなることは想像がつくが、その上で紹介された「医業利益率」という言葉とその数字の意味がよく分からず、実際の数字に落とし込んで説明してもらった方が分かりやすかったと思う。
- 医療崩壊という言葉が出ていた。例えば東京医科歯科大学附属病院がコロナ専門病棟をつくったが、コロナ患者がゼロだったら病床はどうなるのか。民間のふじみの救急クリニックでは自腹とおっしゃっていたが、それをどうやって回収し、最終的に負担するのは誰なのかというとこまで突っ込んで放映して欲しい。
- この病院の苦悩と経営圧迫を放送することで、政府への支援要請の後押しになるのなら意義がある気はしたので、そのあたりをもう少し強調して、医療の側からのニーズをもう少し聞き出すようなこともあったほうがよかったと思う。
全身の血管がコロナの標的切り札は「Dダイマー」
- Dダイマーがどういう仕組みで血栓ができやすい、できにくい、あるいは血栓ができているかが分からない。だからDダイマー値という文言だけは知っているけれど、その仕組みをあとせいぜい30秒、1分でもいいので説明していただけると、もっと親切であったかなと思う。
- 番組は終始このDダイマーを切り札と言っていた。切り札というのは、最後に出す最も強力な手段ということなので、私はきっとワクチンとか、特効薬の何かヒントになるものができたのかと早とちりをしてしまった。むしろこのDダイマーというのは、血栓の有無を判断するための指標ですよね。切り札というような大仰な言葉を使ってしまうと、見ている人を戸惑わせてしまいかねないので、報道の立場からしてやはり正確な言葉使いをしたほうがいいと思った。
町工場が「作る」新たな日常グッズ
- 中小企業のものづくりがコロナ対策グッズに生かされているという話題は、ピンチをチャンスに変える明るいニュースでよかった。あそこに登場する社長さんにしても、突然コロナが来てああいうことをやったのではなく、恐らく普段から非常に頑張っていろいろ努力していたからこそ出来たのだろうと感じた。
- 今回の放送で、一番普段の「Mr.サンデー」らしさが発揮されていたのが、最後の「#今できること」というコーナーだったと思う。これだけ3か所で取材されているのであれば、約13分という短い時間ではなく、もう少し丁寧に時間を取って放送してほしかったが、日曜日の就寝前に見る番組としては、こういう前向きな情報があってよかった。
今後の新型コロナウイルス報道に対する要望
- 医療現場、出産現場、飲食店、各種営業施設、労働者、家庭でのDVに悩んでいる方々等、コロナウイルスをきっかけに誰しもが危機や困難に直面している。特別定額給付金について、DV被害者の方々は、住民票の世帯主とは別に受領できる対応がとられているが、離婚を考えている方々は、離婚の決着がつくまで相手に住所を知らせたくないからと住民票をそのままにしていて、取得が難しい方々が一定程度いるので、個別の問題を深掘りするなどして、より内容が密で濃い報道を今後期待したい。
- マイナンバーカードや、この通知カードに絡む消費者トラブルが一つ心配である。それと、6月末にキャッシュレス5%還元事業が終わり、9月から始まるマイナポイント事業に付け込んでくる詐欺も今後発生することが予測されているので、そのあたりの追跡も是非していただきたい。
- コロナの第2波とは、今、北海道や北九州で起こっているような、一旦収まったと思っていたのがまた増えたことなのか。秋や冬、インフルエンザ等の季節に合わせて患者が増えるかもしれないことなのか。外国との行き来が再開し、また患者が増えることなのか。そのあたりも突っ込んで、基礎の基礎みたいな解説をしてほしい。
- 刻々と状況が変わる中、何を報道し、何を報道しないのかという情報の取捨選択、何が正確な情報なのかという検証等、報道の制作者は日々難しい判断を迫られていると感じる。最近の報道番組は、全体的に内容が広く薄いという印象を受けるが、ただ、横並びになる番組になったとしても、重要な情報は何度も報道するべきだとも思う。
新型コロナウイルス禍におけるテレビ局やテレビ番組への期待
- 中小企業の経営者、仕事に対して不安を抱える労働者等、多数いらっしゃると思う。コロナに関する問題に直面した時にどうするべきなのか。相談会や相談窓口等、前向きな情報を積極的に提供することも、関西に密着したテレビ局としてできることではと思った。
- 新聞も普段と違って、1面から3面まで大阪の社会部や経済部が出稿する記事で占められたことが多く、実に存在感が発揮できた。現場の記者やデスクもモチベーションが上がったと思う。大阪発の吉村知事の発言が全国ネットで放映され、ネットでもそのニュースが拡散された。コロナ禍は地方のメディアにとっては、本当に腕の見せどころではないかと思う。
- この時期、テレビがやらなきゃいけないことは何だろう。ダイヤモンドカップゴルフ特別編という番組を観たが、その中で石川遼選手の今が放送された。あのような選手でも髪の毛がぼさぼさになっていて、この期間、自宅でパットの練習をずっとやっている姿を映したり、同じようにステイ・ホームしてこの状況を耐えている有名人の姿を伝えてくれたのはとてもよかった。報道でも、そういった視点から何か取り上げられることもないかなと思った。
- こういう時こそ、質の良いエンターテインメントが必要だろうと思う。それこそ、藤山寛美時代の松竹新喜劇を一日中流すとか、桂米朝の独演会を長時間流すとか、そういう試みをしてもいいのではないか?あるいは、コロナワクチン開発のためのお金が必要だったら、それを集めるためのチャリティー番組を関西テレビさんが中心となって作ってほしい。
- 報道は報道で今おっしゃったようにやってくださったらいいと思いますが、できれば中高年のテレビ離れを防ぐというようなことで、関西テレビが率先して今のうちに、ばかばかしいけれども品のある面白いバラエティ番組を、1本でいいから作ってほしい。今日皆さんの意見を聞きながらの感想であります。
番組審議会に出席して
- 制作局 東京制作部 プロデューサー
松田智 - 世界中を襲う新型コロナウイルスという未知の脅威との闘いが今の日本の一番の関心事であり、毎週毎週、視聴者に何を伝えるべきか模索している日々です。今回の番組審議会の対象となった放送では、血管への攻撃という視点で新型コロナウイルスについてわかったことを中心に伝えました。すでに市民権を得ている「第2波」とはなんぞや、という指摘をいただき、連日朝から晩までコロナ報道に埋もれ、明確な定義をされずに市民権を得て一人歩きしている言葉の扱いについてハッとさせられました。「わからない」ことが怖さの原因であることに立ち返り、より分かりやすく、視聴者と共通認識を持つための形を模索してきたいと思います。また、緊急事態宣言や移動自粛も解除された中、新しい日本社会のあり方など変化する社会情勢を敏感に感じ取り、信頼される番組作りを続けていきたいと思います。
- 制作局 東京制作部 ディレクター
脇山健人 - 今それを見たいのか?今それを知りたいのか?審議会では「扱うネタがコロナばかり」と言う指摘を多く頂きました。刻々と国内コロナ状況が変わる中、視聴者の感情も同じく動いているのだと感じました。では「Mr.サンデー」としてコロナ以外に何を取り上げるべきなのか?いま世間は何を求めているのか?自問自答して模索し続けて参ります。また審議会ではこんな意見も。「初めて僕は知りました。これは非常に新しい発見で面白く見ました。」SNSでも同じような感想に目がいくことがあります。褒められて嬉しいとかではなく冷静に考えて、視聴者はメディアで何か発見を求めているのでは?これがテレビ視聴習慣につながるのではと感じています。