番組審議会 議事録概要
『報道ランナー』について審議
- 放送日時
- 2020年4月23日(木)
[第一部]16:45~17:53
[第二部]18:14~19:00 - 視聴率
- [第一部]8.4% 占拠率(16.3%)
[第二部]9.7% 占拠率(14.8%) - オブザーバー
- 報道局報道センター 報道ランナー編集長
山下 奏平
参加者
委員 |
委員長上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
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関西テレビ |
羽牟正一 代表取締役社長 |
5月14日の第614回番組審議会は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、MicrosoftTeamsを使用してのウェブ開催になりました。審議番組は、報道局制作の「報道ランナー」の4月23日放送分で、この日の放送は岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなられ、新型コロナ関連についても様々な内容が放送されました。5時台ではスーパーマーケットの3密回避の取り組み、ウイルスの専門家によるコロナ対策、医療現場の最前線に密着した特集。6時台では、阪神藤浪投手復帰会見、和歌山の休業要請、JR福知山線脱線事故の特集も放送していて、委員の皆様から様々なご意見ご提言をいただきました。
番組を視聴した感想
- 全体に手堅い構成でよい番組だった。取材スタッフのがんばりが透けて見えた。報道はかくあるべきだろう。
- テレビ局も感染者を出したことで、一企業として感染拡大防止に努めているか否か、取材手法だけでなく、管理部門も含めた業務全般で社会的責任を果たしていることを可視化することが必要になった。ある意味、視聴者の監視対象となったわけである。
- 今回の審議番組はバランスの取れたコロナ報道であったと思う。煽動的にならず、科学的、論理的で、楽観的、悲観的過ぎない等身大のバランスの取れた報道を望む。
出演者について
- 新実さんの安定感は評価されていいと思う。よく勉強しておられるのだろう。安心して聞けた。妙に視聴者を煽らないし、かといって冷ややかでもない。ほどよくあたたかい進行振りだったと思う。
- 全体的には落ち着いて見られてよかった。今後も当番組に限らず、出演者はきちんと専門分野の知識を持って話せる人物のみ、最低限でよいのではと思わされた。
- 報道ランナーがというわけではないが、多数の情報番組・報道番組を見ていて、この状況でタレントコメンテーターが必要なのか、この1か月強く感じるようになった。一般人の視点で疑問点や不安な点を専門家に質問するならまだしも、タレントコメンテーターの政策に対する批判を聞いても何も響かないからだ。
報道姿勢について
- フェイク、あるいは詐欺、あるいは誹謗中傷というのはあってはならないことなので、なぜ駄目なのか、何が正しいのかという科学根拠を基にきちっと「報道ランナー」の中で、一回きりではなくて、何回かに分けてチェックをしていってほしいなと思う。
- 「自粛警察」等の言葉に代表される個人攻撃、村八分を扇動するようなコメント等がSNS上に展開された。テレビはそれらと一線を画することで、オールドメディアの存在意義を発揮するSNSとの違いを期待されていたのではないか。テレビ局はその辺りをよく理解して、災害報道と同様のスタイルで、冷静かつ慎重な姿勢を貫いていたと思う。
- 未知のウイルスで皆が不安を感じており、ネットの普及も重なって、デマやフェイクがSNSであっという間に広まり、暗い話題ほど早く広く伝わってしまう。視聴者を一定の方向に誘導せよと言うつもりは毛頭ないが、報道がどの様に受け止められるかは意識すべきと思う。少なくとも不安を煽る様な姿勢は慎んで欲しいと願う。
- 「報道ランナー」自体はよかったと思うが、ワイドショーや情報バラエティ番組での取り上げ方は、センセーショナルに感染者の行動を責めたり、物不足のデマが流れていると伝える。それを知った視聴者たちは、デマと分かっていても、皆がそれを信じて動くのではという不安から買いだめに走ってしまい、デマが現実のものになってしまうような側面があったように思う。
構成・演出に関して
- 緊急事態宣言下の報道番組としては、少し物足りなさを感じた。NHKでは一部の放送時間帯は画面の枠に、関西の地下鉄の運行状況、店舗の営業時間、各自治体の方針、緊急連絡先等の情報が流れている。地震等の災害時と同様、関西のリアルタイムな情報、生活に密着した情報を報道番組には期待したい。
- 一番問題を感じたのは番組の中身というより、1部と2部の間のキー局から流れてくる内容である。首都圏のローカル情報が流れ出すと、関西の視聴者はそこで離れていきそうなので、キー局からは全国共通のニュースだけで切って、ローカルの局に橋渡しできるような仕組みはできないかと思った。
- カンテレ、フジ、カンテレと報道がつづきます。くらべると、カンテレのスタジオはチープです。フジのほうが金をかけている。その差は、圧倒的だなとかみしめます。
コーナー企画について
岡江久美子さん新型コロナによる肺炎で急逝
- 冒頭での岡江久美子さんのニュース。人の死はどんな場合も悲しいが、芸能人や著名人のコロナ関連死とそれに至る経緯等は、ワイドショーに任せればいい。ことさらに悲しみを盛り上げようとする演出に違和感を覚えた。
ウイルスの専門家によるコロナ対策
- 宮沢氏の『百分の一作戦』は勉強になった。これに関連して、100年前の“スペイン風邪”の状況(日本国内で45万人が死亡。終息までに3年かかった)も補足して欲しかった。
- 「100分の1作戦」で宮沢先生の助言は腹に落ち、実践しようと思わせるものだった。
- 「ウイルス100分の1作戦」で、宮沢先生がウイルス撲滅ではなく、共存を提案されているが、世の中の風潮はウイルス撲滅に傾いていて、マスメディアもそれに沿った情報を流していることを考えると、素直に宮沢先生の意見に耳を傾ける視聴者がどれだけいるのかと疑問に思った。番組でその提言を取り上げるなら、宮沢先生を論理的にもっとバックアップしてほしいと思う。
- 宮沢准教授の100分の1作戦、これは皆さんもおっしゃっていたが、ウイルスをゼロにするよりも緩和をするという意見は大変現実的で、気分的に私なんかは何かホッとするようなものを感じた。ただこのことで、コロナウイルスが過小評価されないようなフォローのコメント等、もう少し言葉を足したほうがよかったのかなと思う。
医療現場の最前線に密着した特集
- 宝塚市立病院の患者受け入れルポは、今回、私には一番興味深かった。医療関係者の苦労がよく分かった。改めて感謝の念がわいた。
- 宝塚市立病院で一人の先生が頑張っておられる様子がよくわかった。「病院機能を落とす決断がついていない」という発言が重く響いた。トリアージの必要性やキャリーオーバーした時の対応について、今後もどのように取り決められていくのか追い続けて欲しい。
- 「医療の最前線」のレポートはさすがテレビだ。リアルな現実を伝えるには映像に勝るものはなし。とてもよかったと思う。
- 宝塚市立病院は私に身近で、昔から子供たちも行っている病院である。どんどん医療や福祉にお金が回らなくなっていて、公立病院はスタッフの体制等、随分しんどくなっている印象で、コロナで医療崩壊の危機が決定的に来たというふうに地元の住民たちには見えている。そういった視点からでも、もう一遍各地の公立病院を取り上げていただきたい。
- 宝塚市立病院の事例では医療現場の深刻さというものがよく伝わったというふうに評価をしたい。ただ、防護服や、人工心肺が不足、あるいは血液を体外循環させるエクモ(ECMO)を扱う病院がないとか、備えている病院がないならば、どうすればいいのか。そういう関連取材をして、コメンテーターの意見も交えてフォローしていただけたらなと思った。
阪神藤浪投手他の復帰会見
- 「阪神3選手の会見」は必要だったのか。阪神ファンにとっては選手の元気な姿を見ることができてよかったのかもしれないが、謝罪させる会見に意味はあるのだろうか。外出自粛を守らず勝手な行動をしたらこんなことになるぞという見せしめのように思えて悲しかった。
- 藤浪選手ら3人の復帰会見の報道について感じたこと。コロナは誰しもが感染しうる病気だ。どのような基準や指針で、感染した人は経済活動・社会活動に戻れるのだろうか。感染後の情報、社会復帰までの経緯等についても、積極的に報道していただきたい。
JR脱線事故の特集
- 14歳の子どもが23歳になり、結婚して現在29歳。今後も追い続けてほしい。数年前、PTSDで電車に乗れなくなった女性が電車に乗る練習をしている様子を番組内で見た。どうしておられるかなと思い出した。
今後の番組への期待や提言
- 外出自粛でテレビの視聴時間が長くなり、特に1人暮らしの高齢者の状況がとても心配である。報道ランナーだけでなく、同様の空気感の番組を朝から晩まで見せられて、どれほど不安感が高まっているだろう。それは、3、4、5月と続き、恐れる気持ちはもう十分浸透している。新型コロナ関連のもっと明るい、希望の持てる話題も提供してほしい。
- この数年の様子を振り返れば、今年も集中豪雨やスーパー台風襲来を想定しておかねばならないだろう。コロナと避難所生活が重なるという最悪の事態も起こるかもしれない。その時に関西テレビはどの様に動くのか、今から考えておくべき事だと思う。
- コロナ関係の情報を仕入れようとした時に一番頼ったのは、非常に申し上げにくいが、ネットのニュースと、使い始めたNHKプラスを立ち上げて、直近の、全国や近くのNHKニュース報道を見ていた。ネットでも中継がどんどん入るようになってきており、民放のニュース番組は速報性で自分たちは新聞に勝っているという前提でここまで来たかもしれないが、速報性以外の何かがないと、ちょっと勝負できなくなってきていると思う。
- 役者、音楽家、芸人達が活動の場を失って苦しんでいると聞く。そうした人にリモートで出演してもらい、ドラマやコンサートの番組は作れないだろうか?スポンサーが付くかが大問題だが、CMも同じ出演者でリモートCMは考えられないだろうか?企画も打合せもリモートで大変だとは思うが、失敗しても「関西テレビは立ち上がってくれた!」と存在感は上がると思う。
- 私はいつも、「報道ランナー」は関西テレビの要だと思っていて、この番組が充実することが関西テレビにとっては大変大事だろうと思っている。そこで言うのですが、現状の報告だけに終わらず、なぜなのか、どうしたらいいのかということを問いかけるような報道番組を作ってもらえたらいいと思う。
番組審議会に出席して
- 報道局 報道センター 報道ランナー編集長
山下奏平 - 新型コロナウイルスをめぐって、報道ランナーは、感染拡大の最新情報や防止策、国や関西の自治体の対応、生活への影響を連日お伝えしてきました。今回の番組審議会で、「確かな情報」を伝えて暮らしを支えるために、さらに番組の質を向上しなければならないと再認識させていただきました。今後、日本社会は、第2波を警戒しながら“新しい日常”を模索し、経済・教育・医療など様々な課題を乗り越えていく必要があります。ご指摘いただいたように問題の原因と対策を検証しながら、困難に直面している方々の声をしっかり伝えて適切な政策や支援に結びつけていきたいと思います。貴重なご意見ありがとうございました。