番組審議会 議事録概要
『ブラマヨがちょっと気になるTV ヒット企画のタネ、探してみました』について審議
- 放送日時
- 2020年2月16日(日)25:00~25:59
- 視聴率
- 3.0% 占拠率 20.0%
- オブザーバー
- 制作局制作部
部長 高島 公美
プロデューサー 大西 文志郎
演出 三方 祐人
ディレクター 田中 祥吾
ディレクター 酒井 椋平
ディレクター 芳仲 真雪子
参加者
委員 |
委員長上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
---|---|
関西テレビ |
羽牟正一 代表取締役社長 |
4月9日に開催された第613回番組審議会は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、対面による会議を避けて書面による開催となり、4月期の番組改編報告に加え、2019年度下期6カ月間の番組種別ごとの集計とCM放送時間について報告があり、番組審議会の了承をいただきました。番組審議は2月16日に放送された「ブラマヨがちょっと気になるTV~ヒット企画のタネ探してみました~」ブラックマヨネーズの2人が選んだ、関西テレビ・若手ディレクター考案の企画3本「ワラマゲドン」「バズれ!」「知らないのは主役だけ」を映像化した番組に対し、委員から貴重な意見をいただきました。また、新型コロナウイルス報道に対する質疑もありました。
番組を見た感想
- 以前審議の対象となった、若手ディレクターの企画を集めた「ハチネンマデ」には、やや内輪で馴れ合っている感じでしたが、今回はブラックマヨネーズの二人にジャッジされるという緊張感があり、内容の濃い、ひきしまった番組となっていました。ブラマヨの二人も、真剣に審査に取り組んでおり、その点も好感が持てました。多くの視聴者が、どの企画がいちばんよいかを、ブラマヨの二人とともに考えたのではないでしょうか。
- 番組の冒頭、画面は白と黒だけで構成されていた。「完全に、二人きり」という言葉ではじまる。にもかかわらず、スタジオ・スタッフの笑い声がすぐ続いた。「二人きり」ではないことを、いきなり番組自身があばいている。
- 前回の『ハチネンマデ』と比べると非常に面白い番組でした。前回は街頭でインタビュー等一般の方を巻き込んだ形の企画が多かったですが、今回は、ブラマヨさんが選んだことに起因しているのかもしれませんが、ディレクターさんたちの攻めたことに挑戦、新しいことに挑戦したいという意欲がより強く表れていた企画になっていたかと思います。前回よりも断然笑わせてもらいました。
- 若手ディレクターたちが29本もの企画書をだしたこと、その中からブラマヨのお二人が選んだ3本ということを思って、「なんとくだらないことか」と思いながらも、熱意のようなものを感じました。
構成・演出について
- 29本の企画から何故今回の3本を選んだのかを、何らかの説明をした方が良かった。例えば29本の企画を全部派手な掲示をするとかして、残りの26本が如何に下らないかの対比が必要ではなかったのか。
- 番組の企画を芸人に選ばせようという段階でダメだろうと思った。なぜ、プロデューサー、ディレクターが自身をもって視聴者に提示しないのか。ある意味、責任放棄ではないのか。
- ブラマヨのお二人もセレクトをいいかげんでなく真面目に選びながら笑いを誘うとされていることも好感が持てました。 企画案として3本とも悪くはない。けれども、つくり方を考え直すべきではないか、つくり方で蘇るように思いました。
- 3本の企画映像をCMなしで47分続け、後半にCMを集中させるという作戦はたしかにおもしろいと思います。視聴者も番組終盤になると集中力も切れて画面を見ていない可能性もあります。それにしても、1分間の本編に3分間のCMを合計3回も挿むとは。もう最後の方はどうでもいいやという気分になってしまいました。それがちょっと残念。
スタジオセット等について
- 黒いマヨネーズのオブジェを前にしたオープニングは斬新で、どこかEテレ風にも思えましたが、深夜放送らしく静かに始まったのはいいですね。
- 『バズれ!』タイトルから受けた私の印象は、「にぎやかさ・騒がしさ」といったもので、爆発した雰囲気、色で言えば赤、橙、黄色等のイメージです。ロゴが「青春・さわやかさ」を前面に押し出していてロゴそのものも素敵です。
- 26万円のオブジェについて。HPの写真にも、わざわざ手書きで価格が記されているが「黒いマヨネーズが26万円」と馬鹿にしたようないい方はおかしいのではないか、ここは笑いをとるポイントではない。作品としてみて悪いオブジェではないし、妥当な金額だと思う。
各コーナー企画に関して
ワラマゲドン
- 「ワラマゲドン」は、ばかばかしいことを全力で行っていた番組で、たくさん笑わせていただいた。個人的にはこのVTRが一番好きだった。「幽霊や宇宙人と人類が大喜利で対決するVTRを作ろう」とよく考えたと思う。この企画を出したディレクターが一番攻めていた。
- 『ワラマゲドン』は、3本の中で最も出演者は多かったものの、正直言ってどこがおもしろいのかわかりませんでした。バカバカしいのは悪いことではないですが、観客以外の出演者がみな胡散臭すぎるのです。
- 役者が台本通りに演じているとして、大喜利自体がつまらない。笑えませんでした。ブラマヨが「笑える」と締めていたと思いますが、ブラマヨのセンスを疑います。
バズれ!
- 「バズれ!」これが唯一素直におもしろいと思える内容だった。出演者全員にやらされている感がなかったのが見ていて楽しくなる要因で、地上波の番組がインターネットの世界をうまく利用することでネットの番組に一矢報いた感のある仕上がりになっていた。
- 「バズれ!」はとても面白く観たが、インターネットなくしては作れない番組で、今後、どこまで「テレビならでは」の内容に落とし込めるかが課題ではないかと思った。
- ネットでバズったのに、リアルな効果(銭湯への集客)につながらなかったという点も、またリアルでした。バズらなかったり、ネット上ではバズっても狙った効果につながらなかったりといったケースも、それをそのまま見せていくことで、新たなリアリティーショウの可能性を切り開いていけるのではと感じました。「バズれ!と言いながらも、バズってなかったやないかい」と視聴者からつっこまれることで、番組がバズっていくような展開を期待します。
知らないのは主役だけ
- 出来は「知らないのは主役だけ」の方が良いと思うのですが、刃物を持った男性に追い詰められると言うのを、主役だけが知らずに、言わばドッキリで制作するのは度が過ぎます。その分バランスが取れている「バズれ」が上位と考えます。
- ドラマ仕立てだが、プロットもストーリーもめちゃくちゃで、ドッキリにすらなっていない。せめて台本くらいはまともな作家に書いて欲しい。
- 企画内容、完成度としては、それなりの線が保たれていると思うが、個人的に、人を騙すどっきりタイプの番組が好きではない。種明かしされて、笑って終わればよいが、この番組の場合、私は主役がかわいそうという気持ちが先に立ち、笑えなかった。
番組に対する疑問点
- 番組制作のねらいが若手の育成で、低予算、深夜枠の中でどれだけ面白いものがつくれるか、だと理解しています。それでも最初からハードルを下げていませんか。もしそうだとしたら、視聴者に対し失礼だと思います。
- 「バズれ!」の局部をかくすツイート映像ですが、尻ははっきり映しだしていました。でも「とくダネ!」で放送された映像は、その尻にぼかしをいれています。カンテレは臀部の裸をそのまま画面にだし、フジテレビはその露骨な画面化をためらいました。カンテレとフジテレビの間に、肉体露出をめぐる規制の違いがあるとは思えません。「ブラマヨ」と「とくダネ!」の相違にあれは根差しているんでしょうか?
番組への要望
- 3本とも基本、ブラマヨはベタ褒めで、甲乙つけ難いみたいな感想を述べていた。褒めても良いけれど、「つまらん」とか「何これ」とかツッコミを入れたりこき下ろしたりすべきではないか。
- プロデューサー、ディレクターにお願いです。もうそろそろ芸人を便利使いするのはやめませんか。
今後の番組制作への期待
- 今回、バズるコンテンツを作り出す力が、地域の活性化に寄与しうる可能性が示されました。クラウドファンディングの仕組みなどとつながった、チャリティの新しいあり方が、この「バズれ!」の特番から始まりうるのではないかとも感じました(「24時間テレビ」とは違う、ネット時代の新たなテレビ局のチャリティ、CSRのあり方)。
- 笑いというのは高度なことで、言葉の間合いとか、視聴者や聞き手の想像力をかきたてる、そこに、動作が加わって笑いになる。今のお笑いの人たちの感覚は単に「顔をしかめたりオーバーな動作をしたりすることが笑いになる」と…何か本質を外しているように思う。制作者側も「なり振り構わず笑わせれば良い」という姿勢で制作すると、どうしても安っぽいものになる、ということを考えてほしい。
-
テレビを取り巻く環境は厳しさを増し、何がヒットするのか見通しの立ちにくい状態が続くと思うが、こうした状況だからこそパイロット版を作って、どんどん世の中に、時には世界に投げかけていく勇気や元気が求められています。若手の発想力と実行力に期待したいと思います。
事業者側よりの返答
難波委員長代行の『「バズれ!と言いながらも、バズってなかったやないかい」と視聴者からつっこまれることで、番組がバズっていくような展開を期待します』のご意見は、「バズれ!」の特番を制作するに当たって、私だけでなく、きっと芳仲Dにも心強い指針になったことと思います。ありがとうございました。この特番のみならず、これからも若手に制作する機会を与えていく所存です。今後とも、関西テレビの若手が作る番組に、ご意見ご感想をいただきたくよろしくお願いいたします。
安藤制作局長
番組審議会に出席して〔制作局制作部〕
- ワラマゲドン:ディレクター
田中祥吾 - この企画は「バカバカしい」ことを全力でやり切る、特にオカルトの世界で能力を持った人を信じ切り、そこに大喜利というフィルターを通すことで、化学反応が起こるのでは?と思い、発案いたしました。ただ、他の委員の方のご指摘にあるように、この雑然とした未知のバカバカしさを伝える際に、その部分の見せ方への配慮が足りなかったためにただの意味不明なものになってしまったのかもしれないです。今回は貴重なご意見ありがとうございました。
- 総合演出
三方祐人 - 「ネットがテレビを超える」そんな声が聞こえてくる今日…3人のディレクターは最後まで情熱的に自分のVTRと向き合い続け、「ヒット企画のタネを探そう!」というこの番組に、若手部員からは29本もの企画が集まりました。
「テレビで何かをしたい!」「テレビを何とかしたい!」という志は、若手制作部員、全員にたっぷりあるのだと思います。だからこそ、年に1度のこの番組が、そんな熱量のスイッチになっていけば…そう思いました。ありがとうございました。
- バズれ!:ディレクター
芳仲真雪子 - テレビよりYouTubeを見る時間の方が長い…そんな世代に当たるので、今回、Twitterと連動した企画を実現させていただいて、様々なご意見をいただいたように、「幅広い世代の方に伝える難しさ」・「SNS上の出来事をリアルに、なおかつ面白く届けることの難しさ」を痛感いたしました。課題の残る内容ではありましたが、ありがたいことに特番化のチャンスをいただいたので、今回の失敗を活かしながら、よりよいものを作れるよう努力してまいりたいと思います。
- プロデューサー
大西文志郎 - 「ハチネンマデ」という企画に求められていることは、1番組として成立していること、2若手の企画である以上企画に新しさがあること、3若手育成」、この3つだと私は考えました。
今回選ばれた3人のディレクターたちはこちらが育てようとしなくても、勝手に育っていきました。毎回の会議は白熱し、ディレクターが作家や我々に食ってかかるような場面もありました。忙しい普段の仕事の合間を縫って書いた企画書は自分の子どものようなものです。それを先輩や作家に好き勝手されたくない、自分の思う最高のVTRに仕上げたい、そんな熱い思いがあったのではないかと思います。それほど全員が真剣に自分のVTRと、この番組と向き合いました。皆、限られた予算の中で知恵をしぼり、アイデアを出して、今回のVTRを作りました。おもしろくなかったというご意見ももちろんあるとは思いますが、全力でやった失敗には価値があります。この経験は次に必ず生きると思っています。この3人と企画書を出してくれた制作スタッフは関西テレビにとって貴重な財産なのではないかと思いました。こんな番組に携わらせて頂き、とても嬉しく思います
- 知らないのは主役だけ:ディレクター
酒井椋平 - 「新たなヒット企画となるような斬新な企画」と提示されている以上、既視感のある企画書を出すことはできませんので、無難に編集上がりのイメージが浮かぶものではなく、とにかくこれまでに見たことがないようなチャレンジングな企画を提出することだけを考えました。当然、見る人によっては突飛だと思われることもあるかもしれませんがが、おそらくこれは全ディレクター共通の認識だったと思っております。
特番でゼロから自分の企画を作るという機会が少なくなっているなか、非常に大きな経験をさせていただきました。
新型コロナウイルス報道に対する意見や提言
-
コロナウイルス関連では、脅威を強調するあまりに不安を煽らないようなバランスの取れた報道を求めます。暗い話だけではなくて明るい話も交えて伝えて欲しいと思います。
政治家のぶら下がり会見ですが、適切な距離を置いているようには見えません。感染症専門家会議の記者会見も同じに見えます。アメリカニューヨークのクオモ知事の記者会見を見ていると、発表者同士も6フィート離れて座っているように見えるのと対照的です。これでは言行不一致で説得力は無いでしょう。テレビの影響力を自覚すべきです。 - 感染予防対策として「3つの密」を避ける以外の積極的な予防法、例えばどうやって免疫力をつけるかなどのアドバイスをもっと伝えてほしいと思います。むやみに怖がらせる報道ばかりではなく、感染していない人ができることは何かという視点も忘れないでほしいです。
-
不安な点ばかり煽られるとパニックや偏った考えを起こしかねません。感染した人がどれぐらい回復しているのか、そもそも回復したとはどのような状態を指すのか、インフルエンザ等との違い、重症化している人数や割合等を提供していただければと思います。
テレビの報道機関は、ネットニュース以上に情報の正確さが担保されていると感じる人が多いと思いますので、正確な情報を提供するという役割をテレビ局として担って頂きたいと願っています。 - コロナウイルスの件への対応として報道機関としてどうだったか、また、番組制作や社員の働き方に関して何らかの対策・配慮がなされたのかについてお教えください。
-
自然災害やパンデミック対する報道は、さわぎすぎないこと、事実と専門家の意見を取り入れ、過小評価も過大評価もしない。そして、常に社会的弱者の側に視点をおいて考えることが大事だと思います。
東京都の知事が外出自粛を伝えた、とたんに都内の食料、生活用品の買い占めがおきた。スーパーの買い物客が「多勢の人がいたので買いそびれないために」とか「人が手を出すと自分も」という主婦らの声をひろっていた。これはまずいなと思いました。記者会見や発表だけの報道に終わらずに、むろん、それだけでいいときもありますが、常にその影響を考えて対応し、異様な行動に駆り立てないよう、注意を喚起することが大事かと思います。
それから、ネットで言われている流言飛語のたぐいを見つけたら、それに惑わされないように、と伝えることも。なぜ、間違っているのか、その根拠とともに否定することが必要だと思います。
今の時代、現実の世界とその延長上にある仮想の世界の二つが取材対象にますますなっていくでしょう。テレビの存在は大きいと自覚して視聴者に正しい情報と偏向のない分析を発信してもらえれば、と思います。事業者側よりの返答
社長からは「社会のためにテレビができること」を誠実に遂行するよう指示を受けています。
会長からは『放送法108条に「災害の発生を予防し、又はその被害を軽減するために役立つ放送をしなければならない」という条文がある。我々は報道・情報において、確認のとれた信頼性のある情報を視聴者に届けるということを全力を尽くしてやらないといけない』との訓示を受けています。
新型コロナウイルス報道については、当初から「正しく恐れる」ために正確な情報発信をするように現場に指示しています。また放送だけでなく、ウェブでも情報発信を続けています。
社内関係部署の理解をえて、ホームページのトップに新型コロナウイルス情報のバーナーを載せております。
ソーシャルメディアとの連携については、フジニュースネットワークが運営するウェブメディア「FNN.JP」を活用し、発信力を高めているところです。
ご指摘の「買いだめ」報道については、系列局報道デスクの間で議題となりました。
現在は東京のキャスターが「買いだめ」は控えましょうと呼びかけています。
委員がおっしゃるように、こういうときは、社会の歪が可視化されます。
弱い立場の人たちに目配りを欠かさずに報道するよう指示しています。
「緊急事態宣言」が発令されました。目に見えないウイルスと社会の闘いは、安心・安全と自由のジレンマといえると思います。私たちのエリアでも、ジレンマに耐えられず心に余裕がなくなり、「ウイルス」ではなく、「人」に怒りをぶつける事例が出てきています。いまこそ「報道ランナー」の出番だと、現場のスタッフに話しています。
委員のみなさまから、災害時報道の視点、「バランス」、「信頼」、「ファクトチェック」、免疫力アップ、回復者についてなど、今後のヒントをいただきました。「地域で最も信頼されるニュース報道番組」の実現に取り組みます。兼井報道局長