番組審議会 議事録概要
『報道ランナー防災SP その時、あなたは逃げますか?~つなげ防災情報のバトン~』について審議
- 放送日時
- 2020年1月6日(月)15:50~17:53
- 視聴率
- 1月6日(月)
3.1% 占拠率10.2%(15:50~16:45)
5.5% 占拠率14.2%(16:45~17:53) - オブザーバー
- 報道局報道センター プロデューサー
豊島 学恵
報道局報道センター ディレクター
押川 真理
参加者
委員 |
委員長上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) (敬称略50音順) |
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レポート参加 |
委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) |
関西テレビ |
羽牟正一 代表取締役社長 |
2月13日に開催された第612回番組審議会では、BPOからの『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見書が報告されて、委員から今後の番組制作に関する意見や提言をいただきました。続いて1月6日に放送された「報道ランナー防災スペシャル『その時、あなたは逃げますか?つなげ防災情報のバトン』」について審議されました。水害からどうしたら適切な避難が出来るのか?情報を発信する側、受け取る側の課題について多角的に検証した番組に対し、委員から貴重なご意見をいただきました。
番組を見た感想
- 災害情報はなぜ伝わらないのか、災害情報のバトンをどう渡していくのかというテーマに絞った防災番組で、他局の防災番組や今までの防災番組と比べて非常に差別化されていて、すごくわかりやすい番組になっていたなと感じました。
- 大切なのは、避難情報を他人事だと思わないこと、行政に頼りきりにならないことであるというメッセージが強く印象に残る番組だった。
- インターネットが普及していますが、SNSなんかでもいわゆるフェイクニュースだとかデマだとか、そういうのが数多く流れているということを考えると、信頼度の高さという点ではやはりテレビです。ここで踏ん張れないと、それこそテレビの存在意義に関わります。
- 何を報じて何を報じないのかというのは最終的には現場のご判断ということになるんでしょうが、優先順位をつけておくというのは、関西テレビの姿勢として、議論はやはり平時にしておくべきです。コロナウイルスの話でも、公益を優先するか、プライバシーを優先するかという非常に微妙な問題ではあるわけですけれども、それを突然現場の人に現場判断でやれというのはある意味無責任な話だと思うので、その前提となる物差しというのは絶えず関西テレビさんでリニューアルし整備をされておく必要があると感じた。
- 自分だけでは守り切れない弱者、特にテレビを見ている人はインターネットも使えない人も多いし、一人で歩けない人も多い、そういう人に向けては、自分で守ると言ったら、多分うちの母とか足が悪いので「もう逃げなくてここにいてるわ」と言うと思う。もうちょっとそちらのほう、率先避難者が人を促すというところ、片平さんは強く、ある場面おっしゃっていたんだけど、意外にそこがさらっと流れたので、ちょっともったいないなと思いました。
番組に対する評価
- ディレクターがおっしゃいました阪神・淡路大震災のこの時期にこういうことに踏み切ってよかったのか、ということですが、問題ありませんで、これは大変よかったと思います。もちろん震災は震災でしっかり構える必要がありますけれども、こういうことも大事だし、特に新しい年の初めのときにこういう防災特集を習慣づけていくというのは、私は意義があることだと思います。
- 防災情報を発信する側・受け取る側に分類して、それぞれの課題を示したのは新しい視点だった。報道番組ならではの防災番組に仕上がったと思う。
- 副題で、「その時、あなたは逃げますか」という副題も片平さんが最初にコメントしていたように、今回の番組は「あなたはそのとき逃げますか」という問いかけなので、人ごとでなく自分事として受け取ってほしいという番組の思いが副題にもよく表れていて、私は非常によかったと思います。
- 番組後半でメディアの役割について、会社の事情なんかも明らかにしながら伝えていましたが、真摯で、謙虚な姿勢がよく伝わってきました。非常に満足のいく番組になっていたと思います。
出演者について
- 最初、男性ばかりで、お正月、年明け早々ちょっと華やかさに欠けるなと一瞬思いはしたんですけども、ただ、見続けていくと、キャスティングも寄り道がなく、無駄がない番組で、本当に4人でよかったなと感じました。
- 新実キャスター、意見のまとめ方がうまい。どんどん安定してきてうまくなっていますね。やっぱり地位というか、立場が人をつくるというのがよく分かりました。この人はどんどん、もっともっとよくなるなと思います。
- 薄田キャスターですか、彼女の目線が時々ずれるんですよね。多分これ、カンニングペーパーを見ているんだと思うんですけども、視線がずれる、目が泳いでいるように見えると、訴求力というか、説得力に乏しくなるというふうに私は感じました。
- お天気キャスターの方が非常にプロ意識、使命感をお持ちで、あの方が気象庁に乗り込んで、いろいろインタビューされていました。本音を引き出せており、インタビューとしては中身があったし、よかったと思います。
- 新実アナの言葉遣いです。たとえば、「緊急の災害特番をやろうとした場合、社内のコンセンサスが必要となるが、手前味噌で恐縮ですが、それが大変むつかしい…」といった発言があったと思いますが、「手前味噌」は、あえて何かを自慢する際に使う言葉だと思うので、この場合は適切ではないのではないでしょうか。また、最後の方での「私たちの努力を棚に上げる気はない」といった発言にも違和感をおぼえました。私たちも努力をおろそかにするつもりはない、くらいの表現の方が妥当かと思います。アナウンサーは「日本語の最後の守り手」を期待されている職業だと考えていますので、要求が厳しくなってしまうところはありますが。
- 前回の特集で減災、減災とおっしゃった福和教授も、新実キャスター、気象予報士の片平さん、神崎さんもよかったです。こういう番組は何か伝わってこないような型どおりのもので終わってしまうことがある中で、心理面ということを捉えたのはバトンという言葉とともに新鮮でした。
校正・演出について
- 4人の男性が机に座られていました。お天気キャスター、アナウンサー、有識者、報道局のデスク。この構成はよかった。そこにタレントとか、コメンテーターが絡んでツッコミを入れるというやり方に、ともすればなったと思いますが、それがなくてよかったと思います。
- 番組前半の防災情報のバトンをどう渡し、どう受け取るかについては丁寧に作られていたが、後半は気象庁インタビュー、南海トラフ地震後の臨時情報、防災教育など企画を詰め込みすぎた感があり、踏み込みが不十分なコーナーがあったことが残念だ。
- 今年のはすごく合格点だと思います。前半と後半で見ると、前半のほうが密度が濃かったので、後半がちょっと物足りなく感じた。
- 住民へのインタビューと現地の映像と、あとスタジオのトーク、これのバランスがいいですね。よく分かりました。気象庁へのインタビューもよかった。
- 南海トラフの件も扱ってはいたんですけども、半割れとかは初めて見た人がどこまで理解できるのかなというのはちょっと疑問に感じました。南海トラフだけでも単体の番組を作ることができると思うので、どれだけ取り上げるのかというのは制作者側としても難しい問題はあるとは思いますが、受け手の印象としては、初めて見る人にはやっぱりわかりにくい内容になっていたのかなとは思います。
各コーナー企画について
- 長野県での被災者の方100名へのアンケートは、迫力がありました。関西テレビ単独でのアンケートだとすると、その労力にまず敬意を払いたいと思いますし、FNNでのものだとしても、その「生の声」には非常な説得力があり、よいコーナーとなっていました。その分、やや後半がダレた印象もありますが、さまざまな工夫や情報提供が盛り込まれており、最後まで興味深く視聴することができました。
- 細かい話なんですけど、南海トラフ地震臨時情報について絵が出てきて、すごく暗くて戦争っぽい感じで空襲警報が鳴りそうな気がしました。もうちょっと何か、普通の生活の中でああいうことが起こるというようなトーンの絵のほうがよかったんじゃないかなと思います。
- 福和先生が言った、大津波警報が出た時に民放4局が空撮を分担し、広範囲を撮影することで避難につなげるという「名古屋モデル」に感銘をうけた。テレビが果たせる大きな貢献だと思う。しかし在阪局でそれがまだできていないのはどうしてだろうか?
今後の防災番組への期待や提言
- 勧告とか警告とか注意報とか警報とかいうのが、いまだに分からんかったですね。これで警戒レベルというふうなものが、数字が入ってきて、震度何々とかと同じような感じで、数字というのは非常に強いものですから、これで避難する人も出てくると思うので、同じような番組を作って、とにかく何度も報道してもらえたらありがたい。
- 最大のメッセージは「自分の命は自分で守ろう」であったかと思います。それはたしかにそうなのですが、災害時にとくにハンディキャップを感じざるをえない、さまざまな弱者とされる人々——たとえば自力歩行の困難な方々——のことを考えると、「命を守ることに困難を覚える方には周囲のサポートが必要なのは当然ですが」云々との、フォローの言葉があるべきではと感じました。私が聞き逃しただけなのかもしれませんが、そうした補足説明は局側の出演者の仕事だと思いますので、今後留意いただければ幸いです。
- 防災番組を新年だけではなくて、例えば梅雨どきであり、あるいは防災の日の9月の前後、できたらそういう機会をとらえて、地震であり、台風や豪雨特集を放送して欲しい。
番組審議会に出席して
- 報道局 報道センター ディレクター
押川真理 - 今回の防災番組テーマは、災害現場での取材で感じたことを、新実キャスターや片平気象予報士、報道センターの仲間たちとあぁでもないこうでもないと話し合う中で生まれたものです。番組審議会でご意見を聞いて「今回のテーマで挑戦してみて良かった」と改めて感じました。一方でより多くの人に見て頂くための工夫がもっと必要だったと反省しています。災害が激甚化している今、私たちこそ10年前と同じ防災情報の伝え方をしていてはいけないと感じています。「防災情報と言えば関西テレビ」となれるよう、報道一丸となって努力を続けたいと思います。