関西テレビ放送株式会社

 

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  2. 1.「クレーム」は価値ある「資源」
  • 1.「クレーム」は価値ある「資源」

(1)初期対応の大切さ

自信をもって私たちが番組を放送したとしても、その番組に「欠陥」が見つかったり、「瑕疵」を指摘されたりすることはあるでしょう。「欠陥隠し」は論外として、私たちの番組が「製造物責任」を問われるような事態に立ち至ったとき、という想定でシミュレーションしてみましょう。

放送後の番組への質問や抗議の発信者には、一般視聴者、新聞・雑誌等のマスコミ、番組関係者、科学者・医学者ら専門家など、さまざまな人がいます。そしてその抗議や質問が最初に寄せられる部署も、視聴者情報部であったり、本社・支社の制作部、編成部、それに宣伝部であったりとさまざまです。

質問や抗議が例えどこの部署を経由しようとも、またどんな些細なことであっても、それを受けたら上司に一報を入れて相談しましょう。「大げさにしたくない」「軽微なものと考えたい」のは人の常ですが、自分一人で解決しようとせず、情報と判断を共有すること、「報告」「連絡」「相談」が大切です。

「ありがちなクレーム」と思える抗議でも、私たちの製品が抗議をされたことの背景を解明することはなんらかの「意味がある」、つまり「有意義」な営みであると、クレーム対応に積極的な思考(ポジティブシンキング)を習慣づけることが有益です。

【視聴者対応の基本の基本】
①視聴者情報部からフィードバックされた視聴者の声を謙虚に受け止めて番組に反映させることが大切です。
②視聴者からの問い合わせが予想される事柄は、事前に必ず視聴者情報部に連絡しましょう。
③視聴者情報部から連絡を受けたトラブルに発展しそうなクレームについて、電話応対するとき、その場で判断せず、相手の言い分を十分聞いてください。
まずクレームの内容をメモします。「よく調べた上で」「担当者(上司)と相談して」、あるいは「後ほどお答えします」などと伝え、先方の連絡先を聞いて一度切りましょう。そして事実関係を把握した上で、上司の判断を仰ぎましょう。


事例 バラエティ番組でゲストが語った自身の離婚騒動 その③
バラエティ番組においてゲストが自身の離婚騒動に答えるという企画でBRC(放送と人権等権利に関する委員会)より「勧告」を受けるに至ったが、これにはいろんな問題が内包されている。
【放送後における問題】
当該ゲストの離婚問題に関する発言が初めてであったこともあり、センセーショナルな話題となった。当然他局からも素材借用の依頼がきて、素材を貸した。
これが、事態を悪化させる一因になった。
さらに、番組販売局に対し普段どおりの販売を行ってしまった。騒動の大きさやタイムリー性を考慮すれば、1か月近く遅れる放送の番組販売は避けるべきであった。
【クレームに対する問題】
元夫よりクレームを正式に受け取ったのは放送から3か月を過ぎる少し前であった。ここでは冷静な判断が必要であった。
『番組内での内容の訂正』や『ネットニュースにおける謝罪』等の条件に、あまりにも頑なに反発してしまったために、交渉による妥協点を見出す方法を見失ったまま事態を悪化させてしまったといえる。
(その①は第2章−2−(2)「事件は会議室でも起こる」
(その②は第2章−8−(1)「トーク内容が名誉毀損に」

(2)生放送中に抗議がきた!

生番組放送中、出演者が不適切な発言、例えば、差別発言、政治的に偏った発言、宗教に関する発言などをした場合、明らかに抗議が予想されたり、実際に抗議があった場合、プロデューサーは上司・編成部あるいは考査部と相談し、同生番組内ですみやかにまた具体的に訂正し謝罪する必要があります。
また、判断に時間がかかる場合でも、訂正・謝罪が必要と思われるものは同時間枠で訂正し謝罪をすることを心がけましょう。


(3)対応策のアップデート

具体的事例の起こった時点では適正であると思われた「対応・施策」でもそれ以降に、修正される必要がでてきているものもあります。
対応・施策が時代によって変容することも想定されることです。すなわち、現況ではどのように対応するのが最も適切と考えられるのか、繰り返し検討し、対応策をアップデートしておく視点も必要です。
例えば、番組内で不適切発言があった場合に、「問題のある文言を再度放送内で繰り返すことは適正でない」との判断から「ただいま不適切な発言があったことをお詫びいたします」等のコメントで対応した時期がありました。
またある時期には「問題発言を不明瞭にしたまま謝罪するのはかえって不適切」との判断となり、不穏当発言を再度明確に繰り返した上で、なぜそれが不適切であるかも説明して謝罪するというスタイルに留意しました。
しかし、これもまたケースバイケースの運用になりました。
日々「想像力」を駆使した、自律的な判断のトレーニングが必要なのです。


(4)丁寧なレスポンス対応資料を

現在の視聴者対応は、直接制作担当者に至る前に、視聴者情報部内で初動対応することが多いのですが、そのための「レスポンス対応資料」を丁寧に作成しておくことは、制作者の大事な務めです。
「視聴者対応」をできる限り制作者自身に引き寄せ、近づける努力が、番組内容を高めることになります。丁寧なレスポンス対応資料を準備しましょう。懇切丁寧なレスポンス対応能力を番組担当者自身も身につけましょう。
「よ〜いドン!」と「スーパーニュース アンカー」では、視聴者情報部と連携して、視聴者対応にあたるスタッフを、番組内にチーム編成しています。


(5)間違っていたことが分かったときには

私たちの製品、すなわち「番組」に重大な誤りが確認されたときは、一般工業製品の「リコール」に相当します。製品の回収はできませんが、誤っていたことを認め、誠実、迅速、率直、明瞭に対応せねばなりません。誤った放送内容の責任は、いかなる理由があろうとも放送局が負います。
また時として、人の権利を侵害する場合もあります。こうした場合、本人の意思を確認しながら、名誉を回復するための放送をしなければなりません。

1)放送法第9条第1項に基づく訂正放送

放送法第9条第1項
放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から三箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。

2)放送法第9条第2項に基づく訂正放送

放送法第9条第2項
放送事業者がその放送について真実でない事項を発見したときも、前項と同様とする。