関西テレビ放送株式会社

 

  1. 第6章 パートナーシップ >
  2. 3.「発掘!あるある大事典」における問題事例
  • 3.「発掘!あるある大事典」における問題事例

「発掘!あるある大事典」調査委員会の調査報告書によりますと、2007年の番組制作における不正は「番組制作の構造上の問題・背景が凝縮されて起こったもの」とあり、指摘を受けた「番組立ち上げ時の問題点」「完全パッケージ方式による制作委託契約の問題点」「再委託契約による制作の問題点」「制作費の削減措置による影響」については発注元・関西テレビと委託先および再委託先の制作会社とのパートナーシップのあり方に深く関わっていたと推察されます。
以下に、教訓として「発掘!あるある大事典」「発掘!あるある大事典Ⅱ」の制作過程において、今回の不祥事の背景・誘因にあたる事象を挙げます。教訓にすることによって、今後の公正かつ良好なパートナーシップを構築する一助にしてください。


(1)番組立ち上げ時の問題点


事例 広告代理店の大きすぎた主導権
1996年10月よりスタートした「発掘!あるある大事典」は、1社提供による日曜21時の全国ネット番組という放送枠の特性ゆえ、この枠に多大な影響力をもつ広告代理店により、関西テレビの編成、営業に企画提案された番組であった。また、企画が採用された時点で、制作会社も広告代理店により想定されていた。
本来なら関西テレビのプロデューサーが権限をもつべき制作会社の選定が広告代理店の主導により事実上決められてしまったため、番組の立ち上げは制作会社主導で行われ、関西テレビのプロデューサーの及ぶ権限の範囲は限定的にならざるを得ず、スタッフのすみずみまで指導性を発揮できないような制作体制になってしまった。

一般的に、番組企画の成り立ちは、必ずしも関西テレビのプロデューサーやディレクターの発案によるものとは限りませんが、企画が決定した後の制作体制の構築については、関西テレビのプロデューサーは、その詳細を把握し、指導・監督する立場であり、そのような環境を局の編成・制作・営業の幹部も整えなければなりませんでした。


(2)完全パッケージ方式の番組制作におけるリスク管理


事例 不十分だった掘り下げ、洗い出し、見直し
すでに健康ブームが到来し、多くの健康食品などが売り出され、まがい物も多く社会問題となっていたなか、2003年5月1日に健康増進法が施行され、そのガイドラインで健康食品の過大な効果を宣伝することのないよう要請されていた。関西テレビが制作委託しているテレワークにおいても、2005年1月25日放送のテレビ東京「教えて!ウルトラ実験隊」で実験データについて事実に反して番組を制作する捏造事件※が起きた後も、実験の公正さを確保する方針は示されたものの、関西テレビ、テレワークとも制作実態に問題がないか十分な掘り下げ・洗い出しを行うなどの対策や番組の企画内容の見直し検討などを行わなかった。
※花粉症の治療法を取り上げ、治療の体験実験を行った際、本来は2週間経過後に花粉症の改善状況を放送すべきところ、4日後の検査シーンを実験の2週間後の結果として花粉症が改善されたかのように放送したというもの。

完全パッケージ方式の番組制作では、ともすれば信頼関係に基づく委託制作会社の自主性を重んじるあまり、あるいは丸投げしたために監督意識が薄れ、プロデューサーは制作体制への責任者としての役割遂行に消極的になる場合があります。
しかし、番組の安全性・正確性が急務な場合、関西テレビのプロデューサーは、委託制作会社と協力して、具体的ガイドラインの設定や番組作成手法に対する見直しなど、すみやかに適切な対策を講じなければなりません。最終的な放送責任を有する関西テレビのプロデューサーは、適正な制作体制が構築されているかを指導・監督する立場にあり、また疑義が生じた場合は、仔細に報告を求める必要があります。視聴率の高い安定した番組であっても、リスク管理体制の点検を怠るべきではありません。


(3)再委託契約による制作の問題点


事例① 長すぎた支払いサイト
テレワークと再委託の制作会社との間では納品された放送制作物の委託料支払いが、納品日からではなく、放送日の月末締めで放送月の翌々月の10日払いとされていた。この支払い条件によると、再委託先制作会社アジトの『納豆ダイエット編』の場合、納品日が2006年12月26日であるにもかかわらず、放送日が2007年1月7日であることから、委託料の支払いは3月10日となり、納入日から75日後に支払えばいい、ということになる。
このような支払い方法は、元請け制作会社にVTRの納品日から60日以内に、しかもできるだけすみやかな支払い義務を課している改正下請代金支払遅延等防止法(2004年4月1日施行)2条の2第1項に違反する違法な取り決めであった。関西テレビとテレワークとの契約書においては、テレワークが再委託先制作会社と、下請法等の法令を遵守し、優越的地位の濫用にあたるような契約を結んでいないかなど、適正な契約が結ばれているか否か、チェックできる条項が入っていなかった。

当時の関西テレビとテレワークの契約書には、再委託に関する条項があったものの、内容は十分とはいえませんでした。今後は新契約書に則り、元請け制作会社は番組契約書の「再委託等」の条項に従って、関西テレビに対しても、再委託先の制作会社に対しても誠実に対応することを明示した約定を交わし、関西テレビはそれぞれ適正な関係が築けるよう指導・監督していくことが求められています。(2007年4月以降、関西テレビの番組契約書には「再委託」の条項内容を詳細なものにしている)


事例② 詳細論拠不明のままでゴーサイン
『納豆ダイエット編』において、再委託先制作会社アジトのAディレクターは、「納豆でヤセる」理論を初期のβコングリシニンを活用するものからDHEAの摂取に理論構築を変更する際に、テレワークのプロデューサーと制作会社所属の総合演出ディレクターにβコングリシニンでの企画が実現できなくなった経緯を説明し、「細かい論拠は不明だが、DHEAへのロジック差し替えでいけそうです」と報告した。テレワークのプロデューサーと総合演出ディレクターは、それ以上深く聞こうとせず、了承した。
またこの変更をテレワークから関西テレビの担当プロデューサーに伝えられたのは、その4日後であった。

企画成立が危ぶまれるような不安要因を、担当ディレクターがテレワークのプロデューサー、総合演出、関西テレビのプロデューサーに率直に伝え気軽に相談できる環境が整っていれば、テーマの変更も含め、適切な対策が講じられたかもしれません。未成熟なパートナーシップというほかになく、「調査委員会報告書」が繰り返し指摘された、表現のプロフェッショナルとしての「チーム全体」の当事者意識の問題をここでも痛感します。チーム総監督として関西テレビのプロデューサーの責任は重く問われます。


事例③ 多忙にまぎれて問題を放置
『納豆ダイエット編』で、スタジオ収録終了後の反省会の後、アジトのAディレクターはアジトのプロデューサーに初めて、「C教授はイソフラボンの話をしていません」「(アメリカ人被験者の)写真は同じものを使っていません」という話を打ち明けた。
これに対してアジトのプロデューサーは「そりゃまずいなあ。何とかしないとね」と語ったものの、それ以上具体的な修正作業の指示を行わなかった。また他のディレクターによるデータ改ざんや捏造についての報告もされなかった。以後、多忙さにまぎれたせいもあって、これらの問題はそのまま放置された。

2006年12月17日のスタジオ収録から2007年1月7日の放送当日まで、約3週間ありました。もしもこの間、アジトのディレクターからアジトのプロデューサーに伝えられた「ボイスオーバーの不正」や「被験者の写真素材の不正な使用」について、アジトからテレワークのプロデューサーや関西テレビのプロデューサーに伝えられていたら、捏造やデータ改ざんなど不正のすべてを防ぎ、何らかの対応策を講じることができたと推測できます。アジトのプロデューサーとテレワークおよび関西テレビのプロデューサーも、肝心なときに、どんなことでも相談できる関係を築いていなかったことが露呈してしまったといえます。


  1. 1
  2. 2