関西テレビ放送株式会社

 

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  2. 2.特殊効果と処理
  • 2.特殊効果と処理

(1)モザイク・ぼかし

取材・ロケ・放送の基本は実名報道・放送ですので、「モザイク」「ぼかし」は取材源の明示の原則から外れた例外措置となります。
モザイク・ぼかしは5W1Hの「WHO(誰)」を欠落させることになり、映像の真実性を損なうともいえ、視聴者の不信を招く恐れもあります。安易に使うことは避けるべきです。やむを得ないインタビューの場合、カメラアングルなど工夫も必要です。
以下にモザイクを検討する必要がある場合を挙げることにします。

1)一般人

インタビューは顔を出して肉声が基本です。取材交渉では、この原則を理解してもらえるよう相手方を説得すべきです。断った方に対して、顔を出さなければ問題ないとの解釈で、後ろ姿で出したり、モザイクやぼかしで出したりなどは、絶対にしてはいけません。断られたら、絶対に放送できないということです。


事例 インタビューを断った女性
バラエティ番組で、インタビューロケにて中年女性(一般人)がインタビューを断って去って行くところを、顔に「怒りマーク」付けて放送に使用。
名誉回復の措置をとるように要求があった。

撮影場所が公共の場所で、撮影していることが相手にも認識されていると理解される状況であり、なおかつ撮影拒否の意思表示がなかった場合には、プライバシーや肖像権の侵害は発生しないと考えられます。このため、人物にモザイクをかける必要はありません。ただし事件の犯人の直接の目撃者で、犯人が逃走している場合、目撃者の安全を確保するために、本人が顔の撮影を許可したとしても、放送局側で配慮し、モザイクをかけることがあります。
第4章−2−(1)−10)「資料映像」参照)

2)建物や看板、パンフレットなどの資料

ある建物の映像を撮影・放送することで、事件や疑惑に関係があると誤解されかねない場合や、明らかに営業妨害となる場合にはモザイクをかけることができます。逆に、モザイクをかけずに放送したために、トラブルになったケースもあり、十分な注意が必要です。


事例 パンフレットの社名
情報番組で、悪徳商法の紹介でサークル商法の被害者の証言をもとに、再現VTRを流す。しかし、パンフレットの社名にモザイクをかけ忘れたため、当該会社から釈明文書を求められる。

3)少年

「少年の氏名・年齢・職業・住居・容貌などにより、そのものが当該事件の本人と推知される記事を掲載してはならない」という少年法61条の趣旨を尊重します。
容疑者となった少年の顔写真は使わないが、凶悪事件の容疑者の少年の顔写真にモザイクをかけて使用するケースがあります。しかし、多用は避けるべきであり、本来、意味を持たないと考えます。使用した場合も、徹底したモザイク処理が必要です。
少年の自宅の外観、通う学校や職場をそのまま使用することも不可です。ただし、画面全体にモザイクをかけることは、その映像を使用する意味がないので多用は避けます。建物の部分のアップなどカメラワークを工夫することにより、モザイクをかけなくて済むようにします。
学校の制服は、学校の特定に繋がる恐れが強いためモザイク処理します。
第3章−4−(1)「少年事件」参照)

4)被害者

被害者の人権は守られなければなりません。
性犯罪やストーカーの被害者の場合はプライバシー保護の点から顔や肉声は本人が許可する以外は放送すべきではありません。加害者が暴力団など、報復が予測される場合にも同様の配慮が必要です。

5)情報提供者

取材相手が内部告発者などで、顔や肉声を出すことにより人物が特定され、後刻、不利益が予想される場合はモザイク処理を検討します。


事例 通り魔殺人事件のインタビュー
通り魔殺人事件の取材で(事件が未解決の段階)、正面からインタビューした中学生の映像にモザイク処理などをせず、そのままニュースで放送した。
この中学生の父親から、犯人からの仕返しなど不測の事態を招きかねないと抗議があった。以後のニュースでは、映像にモザイクをかけるとともに音声の変換処理をして放送。また、担当の記者とデスクが中学生の自宅に赴き謝罪した。

6)捜査員

捜索や現場検証、任意同行などの捜査員の顔にモザイクは必要ありません。
ただし、スリや痴漢、内偵捜査など犯罪捜査の密着取材などで、事前に顔を出さないことを約束した場合にはモザイク処理します。

7)手錠・腰縄

「ロス疑惑事件」の裁判で「さらし者にするような連行行為は違法」との判決が出て以降、手錠や腰縄は人権侵害の恐れがあるとされ、モザイクをかけます。
ただし、容疑者本人が手錠をかけられたことを殊更にアピールするため、頭上で掲げる場合には、その限りではありません。

8)車のナンバー

風景撮影で映ったナンバー、事故を起こした車のナンバーについてはモザイクの必要はありません。ただし、事故車両が盗難車であることが明らかな場合は、本来の持ち主に被害が及ぶことも考えられるのでモザイク処理します。違法駐車の一斉取り締りなどではモザイク処理もやむを得ません。
有名人・芸能人の車については、プライバシー保護と犯罪防止の観点からモザイクをかけます。

9)個人データ

リストや名簿に掲載された個人の氏名や住所、電話番号などは個人情報であるので、撮影前に隠すかモザイク処理します。視聴者が読み取れないよう配慮します。

10)資料映像

資料映像を使用する際、その映像が視聴者に誤解を与える恐れがある場合には、モザイクまたはぼかしなどの映像処理が必要となります。

11)その他

事故や事件現場の多量の血痕や押収されたわいせつビデオテープなど視聴者に不快感を与える映像や、遺体や遺体の一部など死者の尊厳を損なう映像については、使用しないかモザイクをかけるなどの配慮をします。


(2)サブリミナル

サブリミナルは、通常の視聴では認知できない速度の画像や音量で本編のテーマとは異なるメッセージを挿入し、人の潜在意識に影響を与えるものです。意図のあるなしに関わらず、サブリミナル手法は用いてはいけません。


(3)パカパカ

いわゆるパカパカは、閃光や急速に点滅したり変化する光の画像、また、極端に短い画像を瞬時に何回も繰り返して演出効果を強調するものです。特に発育途上の児童・青少年は、刺激の強い画面を見ることで、ひきつけ、けいれん、吐き気、頭痛などの「光感受性発作」を起こす可能性が高いとの研究結果が示されています。
民放連では「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」(放送基準61条)を設け、映像や光の点滅が原則として1秒間に3回を超える使用を避けるとともに、「鮮やかな赤色」の点滅は特に慎重に扱うことなどを決めており、CMでもこのような表現方法と同じことはできません。また、暗い中で多くのカメラがフラッシュをたいて撮影を行ない、それをビデオテープに録画・放送した場合、演出のパカパカと同じ効果をもたらす恐れがありますので注意が必要です。


事例 通販番組内のパカパカ
関西テレビのCS衛星放送で2006年4月に放送した通販番組の中で、「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」に抵触するシーン(1秒間に3回以上の映像変化)が含まれていた。
報道発表するとともに総務省衛星放送課ならびに近畿総合通信局に報告。従来、購入番組や通販番組においては納品時に担当者が視認チェックしていたが、総務省の要請もあり、チェック体制を強化するため、パカパカ現象を検知する最新機材を導入した。

(4)字幕スーパー

編集・放送においては、場所や説明のスーパー、また、聞き取りにくいインタビューや強調したい内容のフォロースーパーを出す必要があります。「見やすさ」という点で、近年多用されていますが、文字に間違いがあったり、画面が字幕だらけになったり、タイミングを間違えて内容よりも画面のあわただしさに目が行ってしまったりと危険と裏腹です。多用は避け、本当に必要なスーパーを吟味する必要があります。
また、インタビューの内容をフォローするスーパーについては、発言者の意図を意訳しすぎたり、捻じ曲げたりしないように注意すべきです。
外国人の発言を日本語で字幕スーパーする場合、番組の都合のいいようにするためや、番組を面白くするために極端な意訳をすると、捏造と批判されても言い訳が立ちません。
外国語が堪能な人ならば、すぐにわかることです。


(5)ボイスオーバー

ボイスオーバーとは、外国語の発言を、視聴者にわかりやすくするために日本語に吹き替えるものです。編集段階では、外国語の音をそのままの音量でおいたまま、日本語の訳をのせると聞き取れなくなるため、必然的に外国語の音を聞き取れるか聞き取れないかギリギリまで音量を絞ることとなります。
このときも、意訳しすぎたり、内容を捻じ曲げたり、捏造することが絶対にないようにしなければなりません。


(6)編集による加工

Aで取材したシーンを編集でまとめ上げるときに、Bで取材した似たような状況のシーンやカットを挟み込むと、Aの事実が歪められて伝わることがあります。
そのシーンの伝えるべき意味をきちんと検討してください。番組の都合で事実に手を加えたり、ごまかしたりしてはいけません。
誰でも簡単にビデオカメラやデジカメ・携帯の動画機能を操れる時代です。撮影や編集に少し慣れた人ならば、何が事実で、何が加工によって可能になった映像かは判断ができます。


事例 JRでの痴漢シーンに、誤って京阪の車内シーンを繋ぐ
「JRの痴漢逮捕シーンで、その車内には吊り革があり、窓には上下スライド式の日除けのある車内でしたが、その場面の途中で、女性警察官が男の犯行を何とか確認しようとしていた場面で、明らかにJRの車内ではない場面が出ています。その車内は吊り革がなく、窓にはカーテンがあり、たぶん京阪電車だと思います。違う場面を繋いで、あたかもJRの車内と思わせる行為に問題はないのか?」という指摘があった。
原因は長期取材にわたったため、編集作業中に別々の逮捕のシーンを誤って編集してしまった単純ミス。


資料 BPO放送倫理委員会第7号「最近のテレビ・バラエティ番組に関する意見」より
引退したプロ野球投手が「疲れていて、投げたくなかった試合」のエピソードを話したとき、野手たちが心配して、彼を囲んでマウンドに集まった様子が映し出された。しかし、それは別の球場の、別の試合のときのシーンだった。その後、当の試合の映像にもどって、2三振を取るのだが、話と関係のない、まったく別の映像を挿入して、断りもなく、そのときの映像のように見せるのは虚偽放送ではないか。

(7)音声の加工など

音声加工は映像でいうモザイクと同様、報道の信頼性を担保するために多用は避けたいものです。ただし、保護すべき情報提供者や事件の目撃者、プライバシーや身の安全を守られるべき被害者については、音声加工を検討します。
聞きづらさを補うため、発言の内容を字幕スーパーでフォローすることが望ましく、単なる演出上のテクニックで音声加工をしてはいけません。音声の加工ではありませんが、映像と音声がまったく関係のない放送例として、以下の事例のような、注意を要するケースもあります。


事例 関係のない映像にNBAの歓声
バラエティ番組で内容とはまったく関係のない公園の映像にNBAの試合を観戦したときの音声を重ね、「NBAから許可が出なかったので音声しか流せない」旨の放送を行った。(名誉毀損で抗議)

番組スタッフが現地で直接NBAに許可を得て撮影したテープであっても、NBAの試合に関するものはすべてNBAの日本法人に権利があり、一切無断で使用できません。
第5章−3「報道に関わる権利処理」参照)