関西テレビ放送株式会社

 

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  2. 1.報道取材
  • 1.報道取材

(1)取材の基本

1)正確さと公平

ニュース報道は何よりも正確でなくてはなりません。より深い取材が正確なニュース報道を生みます。事実に迫るためには徹底的な取材が必要で、先入観や思い込みにとらわれてはなりません。
何が真実かをつかむことはとても困難な作業です。取材から放送に至るあらゆる局面で真実に迫ろうとする姿勢が必要になります。
加えて、さまざまな角度から事実を見つめ、多角的に報道することもまた大切なことです。意見が分かれる問題に関しては、関係するさまざまな当事者の主張を伝えなくてはなりませんし、特定の者への配慮から自己規制するようなことがあってはなりません。
当然ながらテレビには速報性が求められますが、急ぐあまり誤った報道をしてはなりません。また、わかりやすく伝えようとするあまり事実を曲げるようなことがあってはなりません。

2)取材の心構え

取材は誠実で謙虚に行わなければなりません。
取材は、取材される側の気持ちに立って行わなければなりません。記者は関西テレビという報道機関の一員として取材をしますが、関西テレビに何か特別な権利があるわけではないのです。
一般市民などに対して、無理強いや押しかけの取材は決してしてはなりません。また、行政など公権力を保持する機関に対する取材でも、威圧的な態度を取ることがないよう努めなければなりません。
取材は積極的・果敢に行わなくてはなりませんが、取材者には節度をもつことが求められます。
事件や事故の被害者などに対しては、その立場や意思を尊重することが特に大切です。取材方法の是非は、その場面場面で判断されますが、一人ひとりが考え、迷った場合には必ずデスクや所属長と相談してください。
もちろん、盗用や捏造は許されません。ほかの著作物を引用する場合には、正確に引用しなくてはなりません。別名を名乗るような取材も許されません。
また取材で得た情報を、自らの利益や特定の利益のために流出させたりしてはなりません。

3)ニュースソース

ニュース報道においては、情報の出処を明らかにする必要があります。情報の出処がわからないニュースは、視聴者が内容の信頼性を判断できないからです。個人名が出せない場合は、情報出処の官公庁や企業名、所属部署などを可能な限り明らかにします。取材相手がオフレコを取材条件にした場合でも、安易にこれを受けてはいけません。 一方で、情報の出処を明らかにしない条件の取材もあります。特に不正を告発するような場合は、その内部告発者を保護しなければなりません。
信頼できる取材源で出処先を明らかにすると危害や不利益が及ぶと判断される場合や、出処を隠すことが条件になっているときは、出処を明示しません。取材源の秘匿は絶対的な責務です。ニュースソースについては記者だけでなく会社としても、それを秘匿しなければなりません。ただし記者は、デスクや会社から編集上の判断で取材源の開示を求められた場合は明らかにする必要があります。
裁判などで取材源を明らかにするよう求められても拒否しなくてはなりません。裁判所などから証拠物件として、取材のメモや録画テープの提出を求められても、原則として提出してはいけません。報道目的以外に利用されると、報道への信頼が失われるからです。


事例 リクルート事件贈賄ビデオ押収事件
1988年在京テレビ局のカメラがリクルート疑惑で当時野党の国会議員とリクルート幹部との現金のやりとりを議員の了解を得て隠し撮りし、その後議員がリクルート幹部を贈賄容疑で告発したもの。捜査当局は同テレビ局にビデオの任意提出を求めたが拒否され、強制的な押収となった。そのため同テレビ局は押収を認めた裁判所に対し「報道の自由を侵害する」として抗告していた。
決定では、事件の全容を解明するにはビデオテープは重要で不可欠な証拠であり、告発した議員自身が重要証拠に挙げていることなどから、公正な裁判と適正な捜査のために、取材の自由がある程度制約を受けるのはやむを得ない、などと判断した。
(東京地裁の準抗告最高裁第二小法廷1989年1月30日)


資料 社団法人日本民間放送連盟、日本新聞協会の緊急声明より
報道機関で取材活動に従事するすべての記者にとって、「取材源(情報源)の秘匿」は、いかなる犠牲を払っても堅守すべきジャーナリズムの鉄則である。隠された事実・真実は、記者と情報提供者との間に取材源を明らかにしないという信頼関係があって初めてもたらされる。その約束を記者の側から破るのは、情報提供の道を自ら閉ざし、勇気と良識を持つ情報提供者を見殺しすることにほかならないからである。
(2006年3月17日)

(2)人権・名誉毀損

私たちは報道の義務を負っています。市民の知る権利に応えて民主的な社会を構築する一助になる責務があるのです。
事件や事故の被害者や家族から、「報道被害を受けた」「被害者の人権」「報道される側の権利」という声が投げかけられることがあります。被害者やその家族に対しては無理な取材をしないことはもちろん、プライバシーや感情への配慮が一層求められます。
それでも公共の利益のために報道しなければならない場合が多々あるのも事実です。私たちは報道の公共性・公益性と個人の権利との調和を図る努力を続けなければなりません。

名誉毀損

名誉とは個人や団体の社会的な評価を指します。公然と事実を摘示することによって、人の社会的評価を低下させる行為が名誉棄損にあたります。具体的には、刑法上は名誉毀損罪(刑法230条)が成立し、民法上は不法行為(民法709条)が成立するということになります。
ただし、人の社会的評価を低下させたとしても、常に名誉毀損が成立するわけではありません。「表現の自由」や「報道の自由」とのバランスを図るため、以下の①〜③の要件を充たした場合、名誉毀損の成立は否定されます。(刑法230条の2参照)
①摘示された事実が公共の利害に関する事実であり(公共性)、かつ
②その目的が、もっぱら公益を図ることにあった場合で(公益性)、
③摘示した事実が真実であると証明されたとき(真実性)、あるいは、真実との証明がなされなくとも、真実と信ずるだけの相当の理由があるとき(真実相当性)

報道機関の場合、①②の要件は通常充たされていると考えられますので、③の要件を充たすかが問題になることがほとんどです。重要なことは、上記3要件については、免責を主張する側(メディア側)に立証責任が生じることです。つまり、放送(報道)が名誉毀損であると訴えられた場合、放送局側が真実性や真実相当性があることを証明しなければ免責されないということなのです。そのため、取材時に、取材経過やその裏付け資料を記録(たとえば、時系列で記載した取材ノート)に残しておく作業は極めて重要です。
とはいえ、本章「(1)取材の基本」の「3)ニュースソース」で述べたように、報道する側はニュースソースを絶対に守らなければなりません。訴訟になった場合に取材過程で取得した情報をすべて真実性(真実相当性)立証のために用いることができるわけではなく、ここに名誉毀損訴訟における“メディアのジレンマ”があります。ただ、いずれにせよ取材経過を詳細に残しておくことで、ニュースソースを守りつつ、真実性立証に用いる手法の選択も可能になる場合がありますので、取材経過は“記憶”に残すのではなく“記録”に残すということを心がけましょう。
ところで、真実性(真実相当性)の証明が必要となる摘示事実とはどのように判断されるのでしょうか。最高裁は、ダイオキシンによる野菜汚染のニュース報道訴訟で、「全体的な構成、登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して、判断すべき」であるという基準を示しています。
すなわち、単に放送原稿が放送内容(摘示事実)になるのではなく、リード、テロップ、映像内容等も含めて放送内容が何かということが判断されることになるのです。分かりやすく表現しようとするあまり、補足的に出したテロップを単純化しすぎたり断定的な表現にしたりしてしまうと、そのテロップ等の表現そのものが放送内容だと判断される可能性があります。この場合、真実性立証が難しくなってしまう場合も少なくないでしょう。テロップ等の文字表記は、これを見た視聴者がどのように受け取る可能性があるのかよく吟味するとともに、インタビュー内容や映像を含めて、放送原稿から離れた内容になっていないかを放送前に確認しておくことが重要です。


事例 精神病院患者死亡事件報道をめぐって
大阪の精神病院で起こった患者の死亡事件をきっかけに病院の取材を行い、ニュース番組(1993年放送)とドキュメンタリー番組(1994年放送)を関西テレビが制作・放送したところ、1994年に病院側が名誉毀損にあたること等を理由に、大阪地裁に民事訴訟を提起した。
この訴訟では、人権擁護団体が病院側と交渉する様子や病院内部を無断で撮影した行為が不法行為となるか否か、病院の実名を取り上げて病院の閉鎖性を問題とする放送内容が名誉毀損となるか、の2点が主として争われた。
一審(1995年)と二審(1996年)は、病院側の請求をいずれも斥(しりぞ)けたが、最高裁(2000年)は「審理不十分」として大阪高裁に差し戻す。差し戻し後の大阪高裁(2001年)は、①「黄色い粉薬、ほんまにフラフラになる、怖いでー。何が入っているか、調べなあかんわ」「断ったらね、一服盛られるしねぇ」という病院の元入院患者の声、②「多くの患者が黄色い薬を飲まされ血圧降下や手足の震えなどを訴えている。ほとんどの患者が番号で呼ばれるという。薬には患者の番号が書かれている」というナレーション、③調剤風景、錠剤の混じった粉薬をテーブルに散布落下させる3つの資料映像で構成された投薬場面について、「原告病院は入院患者に危険な薬を違法に投与し、薬を濫用して患者をいわゆる薬漬けにしている」と一般視聴者は受け止めると認定し、この場面に限って名誉毀損の成立を認めた。
これに対し、一審の大阪地裁は「精神病院で入院患者に種々の薬理作用のある薬を投与すること、薬の効果が患者に現れること、薬を誤って投与しないように薬に番号を付すことは、いずれもそのこと自体は特別なこととはいえない」として病院側の社会的評価を低下させる(差し戻し後の大阪高裁で認定された)ような事実が摘示されていないと認定。上記投薬場面に対する一般視聴者の受け取り方に関する裁判官の判断が分かれたことで結論が変わってしまった裁判例といえる。

(3)取材のマナー

すべての行動において、法令や社会のルール、会社内の規定を遵守することは当然です。社会人としての当たり前のマナーを心がけなくてはなりません。
どんな服装で取材に行くのか、どんな言葉遣いをするのか、一般的な常識の範囲内で行動する必要があります。
現場や現場周辺の路上などでの飲食・喫煙は慎む。ゴミは持ち帰るようにする。トイレは、近くの公共的な場所を利用する。また、車のアイドリングに関しては、必要がある場合以外は禁止とする、などを心がけてください。
ヘリコプターによる撮影は、航空法および社内の規程を遵守しなくてはなりません。
人命救助を優先して、ヘリコプターの自粛要請があった場合は、その要請を最大限に尊重しなくてはなりません。



(4)災害報道

私たちは報道機関であるとともに防災機関でもあります。地震の発生や津波に関する情報は、早く正確に伝えなければなりません。
台風や大雨などでも被害を防ぐために正確な放送をしなければなりません。人命に関わる避難指示などの情報も、さまざまな手段で放送するように努めます。被災者には必要な情報を伝え、被災地以外に対しては被災者への支援を広げるよう努めることも必要です。
第9章「大規模災害時等」参照)


(5)政治・選挙報道

政治は、公平・公正に扱います。その上で自主的に判断し、視聴者の皆さんに有益な情報を伝える必要があります。
選挙は民主主義の根幹です。不偏不党や政治的公平の原則は当然ですが、自主的な判断で報道することが大切です。
選挙報道は政治報道と同様、事実に基づいた公平な報道を行います。公職選挙法は、政見放送および経歴放送以外の選挙運動のための放送や特定の候補者の選挙運動に繋がる放送を禁じていますので、放送にあたっては細心の注意が必要となります。
放送の時間を配分する配慮は必要ですが、機械的に行う必要はありません。
各政党・各派の異なった政策論を偏らず公平に放送し、事実に基づいて表現するようにします。


事例 候補者の扱いは平等であるべきか?
34人が立候補した1983年の参議院選挙東京選挙区をめぐり、氏名しか報道されなかった候補者が不公平な扱いを受けたとして放送局に損害賠償を求めた裁判で、東京高裁は「選挙報道は政見放送や経歴放送と同じレベルの平等な取り扱いは要求されていない。当該放送は番組編集の自由の範囲内」として訴えを棄却、最高裁もこれを支持した。
関西テレビでは7人が立候補した2011年の大阪府知事選挙の告示のニュースで、政党の公認や推薦などを受けた有力候補3人については氏名をナレーションで読んだほか、候補者の顔と肉声も放送。他の4人については顔写真と氏名のスーパーのみの放送とした。

(6)裁判員裁判の報道

2009年より「裁判員裁判」が始まりました。私たちは裁判員となる可能性のある視聴者のことを考慮し、これまで通り正確性、公平性などを重視した報道を心がける必要があります。偏った犯人視報道に陥らないように十分に配慮しなければなりません。
また、裁判員への取材は報道機関として自主・自立の判断に基づいて行われるものですが、不当な圧力などが加えられることのないよう取材・報道される側のプライバシーなどについては尊重します。裁判員候補者や審理をしている裁判員への接触は法律で禁止されています。しかし、裁判が終わった後は裁判員だった人が「評議の秘密」を漏らして罪に問われないよう十分配慮しながら、取材にあたります。


(7)スポーツ取材

スポーツの取材は、プロ野球、Jリーグサッカー、ゴルフ等それぞれにスポーツ独自のルールが定められています。
また、試合会場では各試合カメラ台数、取材エリア等の取り決めがありますので、スポーツを取材するときは、前もって、スポーツ部の担当者に確認が必要です。
第5章−2−(1)「自社素材の場合」参照)