関西テレビ放送株式会社

 

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  • 13.演出

(1)まず自分の演出プランを

ロケ取材をする場合、予算と日程が許す限り下見をするべきです。規模にもよりますが、できるだけディレクター自身で行うことをお勧めします。構成作家に頼らず、自分の頭の中で組み立てることが、血となり肉となっていきます。
それをもとに構成者と(あるいは自分で)ロケ台本を作成するわけですが、撮り方や撮り順など演出プランをはっきりさせておきましょう。また、芸能人などが出演する場合は、こちらの意図をまず説明してください。話し合いの上で、演出プランが変わることは、多々ありますが、最終的な目的を外さないようにすることが大事です。
スタジオ本番の出演者との打ち合わせは、スタジオ台本をもとにしますが、トークなどのスタジオ展開を中心にする場合、番組の狙いをうまく伝えることが大切です。細かく伝えたからといってそのとおりになるとは限りません。要点をどう伝えるか、それまでの人間関係や、コミュニケーションのとり方も重要になってきます。
特に台本や演出メモを渡したからそれでいい、という甘い考えは持たないでください。必ず自分の肉声で伝えてください。


事例 出演者が思わぬ発言
京都のお年寄りの間で10年程前に流行していた「ダンスセラピー」の取材。ちょっとした病気や慢性疾患などもこの健康ダンスをすることによって身体が活性化し、免疫活性化作用により快方に向かうというもの。VTR取材したものを生放送のスタジオで出演者に見せ簡単な感想とダンスのおさらいなどをしてみよう!という朝の軽い健康コーナーのつもりが、出演者の一人の「こんなもんで健康になるわけないじゃん! 馬鹿じゃない?」で台無しに!!
スタジオはなんとか丸く収めて段取りを終えたが、収まらないのは取材対象となったお年寄りの皆さんである。放送終了直後より猛烈な抗議! これに関しては誠心誠意、プロデューサーとディレクターが足を運びお詫びしたことと、客観的には放送上のマイナスイメージがそれほど残らなかったのが幸いしたといえる。
予想外だったとはいえ、事前打ち合わせで取材対象者の思いを伝えていれば免れたかもしれない。

(2)「演出家」と「ディレクター」は違う?

最近、バラエティ番組でもスタッフクレジットに「演出」と「ディレクター」が別々に表記されていることがあります。その違いはどこにあるのでしょうか。スタジオを覗くと、サブ(副調整室)にいるのがディレクターで、スタジオフロアにいるのが演出のようです。出演者などに対する本番前の指示は演出とされる人物がしています。そして、サブでカメラなどのスタッフに指示を出しているのがディレクターです。これも制作現場内での分業化のなせるわざかもしれません。
しかし、番組は、カメラで切り取った映像が最後の出口になるのですから、作品としての番組の責任者はどちらなのでしょう。「ディレクター」の日本語訳は、「演出家」「監督」なのですから、同じなのでは……。


(3)スタッフの名前を覚えよう 〜番組は団体作業

ドラマでは、よくロケバスに乗り込むと「役者部、撮影部、照明部、音声部、美術部、演出部揃ってますか?」と点呼をとります。
番組は、ディレクターだけでも、あるいは役者やタレントだけでも成立しません。規模の大きい番組では、50人以上のスタッフが関わっています。それぞれが大事なパートを担っています。演出プランは頭の中だけのもので、スタッフが一丸とならなければ良い番組は実現できません。ではどうすれば、スタッフにも良いアイデアを出してもらえるのでしょうか。
コミュニケーションを深めるためには、まずは、スタッフの名前を覚えることから始めましょう。


(4)アシスタント・ディレクターの目指すもの

いわゆるADは、文字通りディレクターを補佐するわけですが、仕事内容はさまざま、スタジオでキューを振ることから、ロケで車止めをしたり、撮影前の犬の相手を何時間もやったり、弁当を配ったり……。
しかし、いずれにしてもディレクターへの登竜門です。
忙しいなか、何を心がけていけばよいか。
まず、スタッフ、キャストを自分の号令一つで動かせるようにならなければなりません。そのためには、どれだけ彼らから信頼を得ているかが、重要になってきます。特に生放送のフロア・ディレクターは、「自分が番組を仕切っているんだ」、という気概を持ちましょう。
また、自分がディレクターだったらどう演出するかを常々考えていくことが大切です。これは、いざというときだけでなく、先回りして本番準備ができるので、AD作業の効率化にも役立つはずです。
やがて、精神的、物理的余裕が生まれれば、先輩ADやディレクターの仕事を任せえてもらえるよう積極的に行動していきましょう。


事例 雨降って地固まる 〜あるADの失敗談〜
生のトーク番組のチーフADをやっていたときです。時間どおりに番組を収めるのが私の務め。しかし、何週かにわたり、エンディングのタイアップ商品紹介を飛ばしてしまいました。
その都度、実費が発生したためプロデューサーの逆鱗に触れることになりました。
今週こそ、時間どおりに進行させようと本番に臨みました。しかし、途中でいつものように予定時間が押し始め、司会者に「まいてください」とサインを出しましたが、うまくいきません。冷や汗が背中をタラタラ流れるのを感じました。
仕方なく、ゲストに「時間がありません」とサインを出すと、その方が、「もう時間ないの?」と発言。今度はそれを聞いた司会者が激怒し、「ゲストに向かってなんて失礼なことをするんだ!」。生放送中、生きた心地がしませんでした。
時間内に収めるのがADの仕事とはいえ、司会者を軽んじた結果になったことは、確かでした。放送後、司会者の方と十分話をしました。
おかげで、その後はその司会者の方と、より良好な関係を築けました。