わかぎゑふ連載エッセイ「大阪のおばちゃん目線」

プロフィール

ハチプレ!版 第39回

「影響力」

中高生の時に沢村貞子さんのエッセイが好きでよく読んでいた。往年の名脇役として記憶されている方も多いだろうが、津川雅彦さんの叔母に当たり、芸能一家に生まれ育った人だ。
何より私が惹かれたのは粋な江戸っ子のおばさんだったからである。彼女のエッセイに出てくる着物の話や、料理のことなんかが、関西で育った私にはまったく見聞きしたことのない文化だった。母や叔母、学校の先生と違う東京の女の人の考え方がそこにあり、実に興味深かった。

エッセイにはそういう教えの魅力がある。なんて思っていたら、先日行った講演会の後で「私、わかぎさんのエッセイを読んで大阪の玉造に住むことにしたんです」という女性にあった。
「ええ?私のせいで?」と内心思ったが、涼しい顔して「そうですか、嬉しいなぁ」なんて応えてしまった。おいおい、そんな無謀なことせんと、早う田舎に帰りなはれ。と、言いたかったが…。

そんなことでふと沢村貞子さんのことを思い出したのだ。芝居の勉強のため東京に住み始めた20歳頃の私も、「ここがエッセイで読んだ湯島かぁ」なんて思いながら行ったものだった。40年ほど経って、自分が逆の立場になろうとは夢にも思わなかったが、嬉しいような、こそばゆい気持ちである。

また別の日に、友達にお礼の葉書を書いてポストに投函するときに「昔の人は何でも葉書一本書いて送ったもんやけど、最近の若い子は書かへんなぁ」と思った瞬間「まてよ、昔の人って誰や?…私やん!」と自覚して笑い出してしまった。
これか、おばちゃんになった自覚が欠落してる現象って!と思ったからだ。いやぁ十分におばちゃん化を楽しんでいたつもりだったが、まだまだ甘かったようだ。

これからはもっと影響力のあるおばちゃんであることを発揮して生きなくては!と思うアラ還の春です。