イントロ

『スワロウテイル』(96)『リリイ・シュシュのすべて』(01)——。その溢れ出る感性で、国内はおろか世界の心を震わせてきた監督:岩井俊二×音楽:小林武史。ふたりが奏でる新たな映画が、この秋スクリーンに響きわたる。『キリエのうた』と題された本作は、壮絶な運命と無二の歌声を宿したキリエの音楽がつなぐ13年に及ぶ壮大な愛の物語。降りかかる苦難に翻弄される男女4人の人生が、切なくもドラマティックに交錯していく。
歌うことでしか“声”が出せない路上ミュージシャン・キリエ役に選ばれたのは、2023年6月に惜しまれながらも解散した伝説的グループ「BiSH」のメンバーで、現在はソロとして活動中のアイナ・ジ・エンド。映画初主演を飾った本作では、劇中曲として6曲を制作し、劇中で圧巻のパフォーマンスを披露。彼女自身の生き様が溶け出したような説得力と存在感、魂に直に訴えかけてくる歌唱——。アイナでなければ生まれなかった歌姫・キリエの人物像と岩井×小林との豊穣な化学反応は、この先も永く語り継がれていくことだろう。
姿を消したフィアンセを捜し続ける夏彦役を任されたのは、大ヒット作『すずめの戸締まり』が記憶に新しい松村北斗(SixTONES)。過去にとらわれた青年の複雑な心情表現を細やかな演技で魅せる。
傷ついた人々の心に寄り添う教師・フミ役を託されたのは黒木華。映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)に続く岩井監督とのタッグで、彼女ならではの清らかな慈愛を体現している。
過去を捨て、名前を捨て、キリエのマネージャーを買って出る謎めいた女性・イッコ役には、『ラストレター』で岩井×小林の世界の住人となった広瀬すず。今回は従来のイメージを覆す役どころに挑み、新境地を拓いた。
石巻、大阪、帯広、東京——。岩井監督のゆかりある地を舞台に紡がれる、出逢いと別れを繰り返す4人の壮大な旅路。儚い命と彷徨う心、そこに寄り添う音楽。 “あなた”がここにいるから——。13年に及ぶ魂の救済を見つめたこの物語は、スクリーンを越えて“貴方”の心と共振し、かけがえのない質量を遺す。

キャスト・スタッフ

アイナ・ジ・エンド

松村北斗

黒木華
/
広瀬すず

村上虹郎
松浦裕也
笠原秀幸
粗品(霜降り明星)
矢山花
七尾旅人
ロバートキャンベル
大塚愛
安藤裕子
鈴木慶一
水越けいこ

江口洋介
吉瀬美智子
樋口真嗣
奥菜恵
浅田美代子
石井竜也
豊原功補
松本まりか
北村有起哉
原作・脚本・監督
岩井俊二『キリエのうた』(文春文庫刊)
音楽
小林武史
主題歌
「キリエ・憐みの讃歌」 Kyrie(avex trax)
制作プロダクション
ロックウェルアイズ
配給
東映
公開
2023年10月13日(金)
©2023 Kyrie Film Band