解説

【解説】SDGsライター伊藤緑の、こんなとこにも「ちょっとだけ」SDGs

第17回(9/29放送)

テーマ(1):令和の子供の悩みをちょい変えしよう

12.つくる責任 つかう責任12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
1.貧困をなくそう1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
11.住み続けられるまちづくりを11.1 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。

子どもたちの悩みが、SDGsで語られる貧困や飢餓という深刻さではなく、一定レベルの生活ができているから生まれる悩みであったことに安心しました。
しかし、どんな状況であっても、子どもたち、いや子ども限らず、人は悩むものです。その悩みを解決する、悩みが本当に悩みであるかを検証することは、生きていくうえで大切なことだと考えます。

ディスカッション板書(1)嫌いなものを食べなければいけないの何で?(じょうちゃん)
ディスカッション板書(1)嫌いなものを食べなければいけないの何で?(じょうちゃん)

(1)嫌いなものを食べなければいけないの何で?(じょうちゃん)
ホワイトボードで皆さんが答えてくださっていることが、“まさに”だと思います。
40年以上前の小学校の給食の時間には、食べものを残すとそれを食べ終わるまで席を立つことができない、掃除の時間になっても残されるということがありました。
しかし、今はそのようなことは基本的に行われていないと思います。「給食の完食指導」は、議論されることがあり、完食指導により不登校になったというニュースも出ています。しかし、嫌いなものを食べる理由のひとつには、嫌いだと思い込んでいるだけだということに気づくためということもあります。“食べず嫌い”という言葉もあります。食べたことがないのに嫌いだと思っている。人から聞いた印象で嫌いだと思っている、ということもあるかもしれません。一度チャレンジをしてみることは良いことだと思います。
また、大人になって味覚が変わることもあります。また、自分で育てることで食材への関心が高まり、食べてみよう、という気持ちになることもあるでしょう。調理方法で食べられる場合もあります。食品アレルギーでない限り、一度挑戦してみることは食の楽しみを増やすことになるかもしれません。そして、調理されて自分の皿に取り分けられたものを残すことは、食品ロスに繋がります。食べられないのであれば、そのことを伝えることも必要です。また、地球上には、食べ物に困っている子供たちがいることを知る機会があると、視点が変わるかもしれません。

ディスカッション板書(2)スマホを買ってもらえない(せいちゃん)
ディスカッション板書(2)スマホを買ってもらえない(せいちゃん)

(2)スマホを買ってもらえない(せいちゃん)
インターネットやスマホに関する悩みは、現代こその悩み。
スマホを買ってもらえないのは、金銭的な余裕の問題ではなく、家庭ごとにあるルールかもしれない、と考えます。家庭ごとにルールを決めていることであれば、家族と話し合うことが大切だと思います。
こちらもホワイトボートにある通り「買わないことに理由がある」、「物がないから上達する」、「公園でブランコや滑り台で遊ぶ」は、大人目線では分かることですが、子どもには理解できないかもしれません。また、怖いことのひとつは、持っていないことで起こるかもしれない“いじめ”に繋がる行為です。その点も踏まえて、なぜ今、スマホを買ってもらえないのか?家族で話し合う(一方的な決めつけでなく話し合い)ことで、家族間の繋がりも強まります。

ディスカッション板書(3)見れないサイトがある(よっぴー)
ディスカッション板書(3)見れないサイトがある(よっぴー)

(3)見られないサイトがある(よっぴー)
見られないサイトがあることは、おそらく子どもたちを守るために行われていることだと考えます。
インターネットの世界は、子どもたちがリアルで生活している世界に比べとても広く深く、家庭や学校という枠を軽く超えて外に出ることができます。そこには、時に悪意があるサイトや情報も混ざっています。それらが正しいかどうか判断することは大人でも難しいです。そして、危険が隣合わせである場合もあります。「11.住み続けられるまちづくりを」には、誰もが安全であることが語られています。安全であるために、正しい判断ができる年齢になるまで制限がかかることは必要かもしれません。
また、ホワイトボートにあるように、すべてをインターネットで解決しようとせず「不便こそ楽しもう」という感覚も大切です。簡単に調べられたものは、すぐに忘れてしまいます。サイトを見るだけでなく、教科書で調べたり、図書館に行ったり、実際にその仕事をしている方に会ったりで得られることもあります。「米農家に聞きにいく」は、リアルな体験もできるかもしれません。

ディスカッション板書(4)つけまとカラコンが怖い(のあぴちゃん)
ディスカッション板書(4)つけまとカラコンが怖い(のあぴちゃん)

(4)つけまとカラコンが怖い(のあぴちゃん)
仕事で使うために必要であれば、正しく・安全に使う方法をプロに聞き、慣れていく・自分でできるようになる方法を考えることが必要です。
どんなことも最初からうまくできる人はいません。継続することで慣れていき、できるようになることもあります。もし仕事ではないのであれば、なぜつけまとカラコンを使う必要があるのか?その理由が、「みんなもやっているから」であれば、つける必要はないかもしれません。
今は個性の時代です。周りと同じであることで安心を得られるかもしれませんが、自分が嫌な思いをしてまで行う必要があるのか、を考えてみるのも良いと思います。「つけなくてもカワイイよ」ということを知ることも大切だと考えます。

テーマ(2):日本の公共トイレを使いやすくする方法を考えよう

ディスカッション板書
ディスカッション板書

6.安全な水とトイレを世界中に6.2 2030年までに、全ての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、並びに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。
6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。
11.住み続けられるまちづくりを11.7 2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。

日本の公共トイレを使いやすくする方法を考えよう
日本は、世界的にみればトイレに関してはとても恵まれている国です。今、日本で“野外での排泄”を強いられている方は、皆無とは言えませんが相当少ないはずです。この理由のひとつが、公共トイレの存在です。
しかし、トイレで苦労されている人もいます。それは、何かしらの障害があり、通常のトイレを使うことができない方々です。国土交通省では、「多目的トイレ」「多機能トイレ」「だれでもトイレ」「みんなのトイレ」と呼ばれているトイレを、2021年に「高齢者障害者等用便房(バリアフリートイレ)」と呼ぶことを促しています。通常のトイレを使える方が、「多目的・多機能・だれでも・みんなの」という言葉で使ってしまうことにより、本当に必要としている方が使えないシーンがあるためです。
そして、“高齢者障害者等用便房(バリアフリートイレ)の表示は、「多機能」「多目的」等、利用対象とならない方を含め、誰でも使用できるような名称ではなく、利用対象及び個別機能を表示するピクトグラム等のみで表示する、又は機能分散がなされている個別機能を備えた便房であれば、主な利用対象者を明確にする名称やピクトグラム等で表示する工夫を行う”と書かれた資料が出ています。

SDGsの観点から公共トイレについて
SDGsの観点から、これらのことを踏まえたうえで、公共トイレ(公園等の公衆トイレ、駅や公共施設、商業施設のトイレなど不特定多数の人が外出先で自由に利用できるトイレ)について、考えます。

トイレ利用時は無防備な状態になることから安心・安全な場であることが必要です。しかし、「学校トイレの5K(臭い、汚い、怖い、暗い、壊れている)」という言葉があるように、トイレにはいろんな問題があります。学校トイレは、学校に所属する人が使う場所であり、公共トイレとは違いますが、公共トイレでも同様な問題はあり解決すべき問題だと考えます。また、公園のトイレの入り口が見えづらく、危険を感じる場所になっていることもあります。子供にとって危険な場所は、公園とトイレと伝えている方もいます。

ホワイトボードの意見
ホワイトボードの意見は、より使いやすいトイレへの思いがあり、安心・安全高め、便利になる機能を提案していただいていると感じます。ただ、この場所は公共の場であり、目的を終えたら立ち去り、不特定多数の方が常に使える状態をキープする必要があることを考えなければなりません。快適すぎることで長居をしてしまい、必要な人が使えない、快適なゆえに他の目的に使ってしまう、ということが起きないことを考えていくことが大切です。

しかし、5K(臭い、汚い、怖い、暗い、壊れている)を解消する提案は、公共の場が綺麗であり続けるために必要な要素です。1枚の割られた窓ガラスをそのままにしておくと、さらに窓ガラスが割られ、街全体が荒廃してしまうという、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱した「割れ窓理論」とも繋がります。5K(臭い、汚い、怖い、暗い、壊れている)を放置すると、増々荒れていく可能性があります。

「こすらず落とすそうじシート手に届くところに置いておく」は、自分が汚してしまった場所を元の状態に戻して立ち去ることができ、これが続けば綺麗な状態が続きます。

混雑するトイレでは、「外にどれくらい人が待っているか中から分かる」のも、公共の場を皆で使うという点で非常に良いと考えます。

公共トイレに対する意識
公共トイレは、明確な目的があって使うものであり、それ以外の目的で使わないこと。常に現状復帰(汚した場合そのまま放置しない・できる範囲で元に戻す・管理している人に伝えるなど)を行うことで、誰もが利用しやすい場所であってほしいと考えます。社会インフラと呼ばれるコンビニエンスストアのトイレですが、使う側の使い方によっては提供を辞めることもあります。そのためには、一人ひとりの公共トイレに対する意識を変えていくことが必要です。