解説

【解説】SDGsライター伊藤緑の、こんなとこにも「ちょっとだけ」SDGs

第11回(2/24放送)

テーマ:動物の生活環境を良くして、幸せに暮らしてほしい!

ディスカッション板書
ディスカッション板書

動物と人が共生するために
SDGsの17の目標、169のターゲットのなかには、海洋生物・野生動物・外来種についての記述はありますが、飼育する動物についての記述を見つけることはできません。しかし、人と動物が共生することは、命を持つもの同士のパートナシップであると考えられます。
日本では、ペットとして飼われている動物に対する虐待は、刑法261条の器物破損罪と言われてきました。命あるものなのに、なぜ器物なのか?ということもしばしば問われてきたことです。この法律では、「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」です。
しかし、2020年6月1日に動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)が改正されました。改正内容は、「護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」だったものが、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」(第44条1項)となりました。

動物愛護法が改正された理由には、
行政が安易に犬猫を引き取り殺処分が増える可能性を懸念し、動物愛護の観点から望ましくないという考えや、人が共生する動物の重要度が高まったことで、ペットとして飼う人が増えるなか虐待事件や遺棄などが深刻化したことなどがあると、言われています。

海洋生物・野生動物・外来種については、SDGsのターゲットについては後述します。

(1)動物と話せる人を育成する
動物が人の言葉をどこまで理解しているか分かりませんが、私たちは動物の声(言葉)を正しく理解することはできません。コミュニケーションの方法はさまざまですが、動物と言葉でコミュニケーションをとれるようになったら、新しい世界が生まれるのではないでしょうか?

(2)教育に入れる(昔は学校でペットを飼っていた)
学校で動物を育てていた時代があります。学校で動物を飼わなくなった理由には、動物アレルギー・鳥インフルエンザ・費用の問題などがあるようです。動物を身近に感じることがないまま大人になる人が多くなったことで、動物との接し方が分からないという人も増えた可能性はあります。「可愛い」という理由だけで、動物を飼うことがいかに大変であるか、費用が掛かるか、を学ぶことは、動物を飼う前に必ず学んでほしいと思います。動物と暮らすことには、経験しないと分からないことがたくさんあります。安易に買い、飼えなくなったら捨てたり、外来種を池や川に放ったりすることがなくなり、看取る覚悟で動物を迎え入れていただきたいと考えます。

(3)ペットレベルで入れる店を作る
日本にはペットと入ることができる店は少ないかもしれません。海外には、そもそも「ペット可」という言葉がなく、動物と人が共に過ごすことが当たり前という国もあるようです。日本には、「ドッグカフェ」という名前があるように、動物が一緒に入れる店は限定されています。海外との違いは、文化の違いかもしれません。ただ、動物アレルギーの方がいるのも現実ですし、どうしても動物に対して恐怖を感じてしまう方もいます。海外のようにハードルをなくすことは難しいですが、動物と共に生きる人が増えるのではれば、動物と一緒に入れる店が増えていくのではないでしょうか?

(4)保護犬・保護猫の施設を市町村に一か所作る
多頭飼育崩壊という言葉を聞くようになりました。またテレビでも、保護犬や保護猫の番組が放送されています。動物も命を持って生まれ、幸せに生きる権利を持っています。人間のエゴで彼らを不幸にすることは、とても残念なことです。現状を考えると、保護犬・保護猫の施設を市町村に一か所作ることも素晴らしいことです。しかし、そのような場所がなくても動物と人が共に幸せに暮らせる生き方や飼育の仕方、街づくりも考えていきたいことです。

(5)会社でペット
1人暮らしの場合、動物を一人で飼うことが難しい場合があります。昼間は動物だけで留守番させてしまう。出張や旅行などで家を空けるときにどうするか?自身の体調が悪いときにどうするか?また、ペット可物件の少なさやペットにかかる費用の問題。しかし、動物とは触れ合いたいと思いが強い場合は、会社やシェアスペースで動物を飼い、皆で責任を持つことは良いと思います。ただ、飼う前にルールを決めることが必要です。そして、共有のスペースなので、皆の意見を聞いてからスタートすれば、良いのではないでしょうか?

(6)動物の惑星をつくる&フェス
もしかしたら、すでに宇宙空間のどこかに動物というか、人間以外の生物だけが住む星があるかもしれません。人間は多くのことを知っているようで、まだまだ解明されていないことは多いです。そして、すべて解明することが良いことではないのかもしれません。地球も人間が主役と考えて良いのか?という意見もあるでしょう。今から2億3000年ほど前、中生代という時代のジュラ紀の前の三畳紀の後半に恐竜が生まれたと言われています。今後、地球がどのような星になるかは分かりませんし、いつか地球も変わるかもしれません。そして、すでに動物だけが生きる星があるのかもしれません。そんな星でフェス!この番組を見るごとに、フェスは多くの問題を解決するひとつの手段のような気がしています。

海洋生物・野生動物・外来種については、SDGsのターゲットは以下のとおりです。

14.海の豊かさを守ろう14.a 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
15.陸の豊かさも守ろう15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。
15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。

実際の取り組み事例(天王寺動物園)

「3.すべての人に健康と福祉を」は、人間について書かれているものですが、動物も地球上に生きる動物。私たちと同じ命あるものです。園内に柵を作らず自然に近い形での飼育で健康寿命を延ばすためのアイディアには、動物ファーストを感じます。遠くに餌を置くことは、年老いた動物に無理をさせているではないか?と思う方もいるかもしれません。しかし、動くことができるのに動かない状態であれば、その環境を作るのは人間の仕事なのではないでしょうか。また、餌を食べるために転がしたり揺らしたりする工夫が必要ということも、普通に食べさせてあげれば、と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、「楽=幸せ」とは限りません。動物も人も現状をキープするだけでなく、トライすることでより健康になったり、知恵が付いたりすることもあるでしょう。動物も人も健康で幸せに生きていくためには、食事だけでなく運動や工夫はとても大切なことです。彼らの健康寿命を延ばすことは、私たちの健康寿命を延ばすことを改めて考える機会になります。

2月21日に、上野動物園のパンダ、シャンシャンが中国に返還されました。シャンシャンに癒されていた方がたくさんいらっしゃったようです。最後の観覧倍率は70倍。見送りの様子も多くのニュース番組で放送されました。海外との動物の貸与と返還はグローバルな活動です。これは、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」にも関わるのではないでしょうか?国と国のパートナーシップです。動物園の動物たちは、国と国を繋いでいます。

そして、寄付の方法が直球で分かりやすいと感じました。せっかく気持ちを込めて贈るなら、100%使ってもらいたい。その方が、贈る側も嬉しいものです。これは、贈ったけれど使われず廃棄されてしまう可能性を下げる意味で「12.つくる責任 つかう責任」と繋がります。欲しいものを提示することに抵抗がある人もいるかもしれません。しかし、本当に欲しいのは動物です。そして、動物園という場所で、動物が生活するために必要なもを分かっているのは園内で動物に接している人たち。モノを無駄にしないために、今すぐに使いたいものを伝える行動は必要だと考えます。

また、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」についても関わっているように感じます。2017年9月に動物園と社会インフラについての記事が出ています。日本動物園水族館協会の2017.12.31現在の動物園加盟園データによると、協会に加盟する91の動物園のうち、官庁(地方自治体)が設置した施設は70です。自治体の予算には限りがあります。動物は、社会インフラか?記事には、「限られた予算を教育や福祉などに配分しなければならない自治体において、動物園が「誰のためにあるのか」、「何のためにあるのか」は問われ続けている」と書かれています。まさに、動物園への動物への予算についてです。
そのため、サポーター制度を設けている動物園は多いようです。天王寺動物園が「天王寺動物園のほしい物リスト」は、動物たちへの支援です。また、2022年には、川崎市の夢見ヶ崎動物公園では、「夢見ヶ崎動物公園の動物たちに、より健康・安全な飼育診療を行いたい!」というクラウドファンディンを行っています。宇都宮動物園では、高齢のキリンのために「のんびり過ごせる寝小屋をキリン舎につくる」というクラウドファンディングが行われています。宇都宮動物園では、象のためのバリアフリーのクラウドファンディングも行われました。「動物たちの住環境向上へ!」は、動物園という人間が作った場所にいる命ある動物を守るために、その動物に癒されている人間がすべき社会課題ではないでしょうか?