解説

【解説】SDGsライター伊藤緑の、こんなとこにも「ちょっとだけ」SDGs

第3回(6/28放送)

テーマ(1):海の生き物たちの環境をなんとかしたい!

ディスカッション板書
ディスカッション板書

(1)都会の人の意識を変える」。海のゴミは海で発生したものではなく、街から川を伝って流れたものも多く含まれます。その点から、海の問題は海だけの問題ではありません。また、一度流れたプラスチックゴミは溶けることなく、何十年も漂います。都会に限らず、内陸に住む方の意識を変えることはとても大切なことです。

14. 海の豊かさを守ろう14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。

(2)食べられる食器・スプーン ゴミを生まないという点で、SDGsです。海に限らず、山やキャンプ、BBQを行う際にも積極的に使っていただきたいです。

12. つくる責任 つかう責任12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

(3)地球の絵や海の画像を毎朝3分見る すべての人ではないですが、海を見ることで心理的に癒されるという人がいるという研究結果が出ています。これは、人が健康に過ごすことに繋がります。
※海での事故経験がある方や、溺れた経験がある方など、水に対して恐怖心がある方は避けてください。

3. すべての人に健康と福祉を3.d 全ての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。

(4)ギャルがゴミ拾いフェス 今、行われている海辺のゴミ拾いはボランティアが多いかもしれません。それを楽しいイベントに変えることで、これまで関心がなかった人が集まるようになります。「ゴミを拾う=面倒・格好悪い」という意識を、「格好いい・クール」に変えるためには、それを発信する人が必要かもしれません。そういう意味でもイベントは、意味があると思われます。そのイベントが終わったあとは、ゴミひとつ残っていない、そのうえ開催前よりも綺麗になっている、それが各地で行われることで観光にも繋がります。イベントを行えば、雇用も生まれます。

8. 働きがいも経済成長も8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

14. 海の豊かさを守ろう14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。

12. つくる責任 つかう責任12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。)であれば、その点でもSDGsに繋がります。

実際の取り組み事例(エネルフィッシュ)

2050年には、海には魚よりゴミの方が増えるのではないかと言われています。そこには、映像にもあったように800万トンのプラスチックゴミが含まれています。プラスチック製品は水に溶けることがなく何十年も海をさまよいます。その海で生きる生物を守るために考えられた「エネルフィッシュ」は、海の生態系を守ることに繋がります。

14. 海の豊かさを守ろう14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。

海で起きている問題は遠いことと考えがちですが、彼女たちのように柔軟な発想で身近なものと繋げることができます。正直、すでに海に流れしまったゴミを回収することはとても難しいです。そして、海に流れるゴミをすぐに止めることも難しいことです。「こうなったら良い」という理想を追うのではなく、今すぐできること考え実行することこそ、すぐにできるSDGsです。魚が食べないポリ袋は新たな視点であり、イノベーションです。「高校生ビジネスコンテスト」というビジネスチャンスにより、企業と繋がることができたことも年齢や性別を問わないといというSDGsの目標のひとつです。

8. 働きがいも経済成長も8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。

4. 質の高い教育をみんなに4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

海でプラスチックゴミを食べてしまった魚たちが食卓に並ぶ可能性もあるということは、私たち人間の生活にも問題が起きてきます。その視点を広げていくと、飢餓の問題に繋がります。

2. 飢餓をゼロ2.4 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。

「エネルフィッシュ」を考えた4人は女子高生。現在の大学名を知ると、彼女たちだからできたことと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、「こんな商品があったら」と考えた当時は、高校一年生。女性であることで意見を聞いてもらえないことも、まだある時代に、企業や大学の教授に相談することができ、「高校生ビジネスコンテスト」にエントリーできたことは、ジェンダー問題や人の不平等をなくすことに繋がります。また、生徒と企業とのコミュニケーションが行われたことや、商品化に企業が関わっていることはパートナーシップに繋がります。

5. ジェンダー平等を実現しよう5.1 あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。

10. 人や国の不平等をなくそう10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

17. パートナーシップで目標を達成しよう17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。

魚が食べないポリ袋にするために、混ぜているデナトニウムは、「安息香酸デナトニウム」として、通販でも販売されているようです。また、人体に害がないということで、子供向けのおもちゃにはすでに使われていました。その視点から商品開発は、発想次第でSDGsがとても身近にあることだと気づくことになります。すでにあるものを工夫し、新たな効果を生むことは、「12.つくる責任 使う責任」にも繋がります。

12. つくる責任 つかう責任12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。

テーマ(2):夏休みの自由研究のテーマ何する?問題を考える!

実際の取り組み事例(路上博物館)

夏休みの自由研究とSDGsは、とても相性が良いと考えています。これからの時代を生きていく子供たちにとって、自分が生きていく未来について考えるきっかけにもなります。

17の目標からいくつかピックアップして、夏休みの自由研究として子供たちが興味を持ちそうなことをお伝えします。

1. 貧困をなくそう

最近、日用品の値上がりが続いています。それにより金銭的に厳しくなっている家庭もあると思います。お金の話は大人の話ではありません。これからの子供たちは、お金について今から学んでいく必要があると言われています。実際、投資について学んでいる子供たちもいます。学ぶにはお金がかかりますが、自分で調べる、知ろうとすることで知識を得ることができます。お金に対する知識が身に就けば、自分の将来にも役立ちます。日用品の値上がりがなぜ起きているのか?その状況を回避するにはどうするべきか?子供たちにはできることを考えてみてほしいです。また、お金の問題だけでなく、賞味期限が近付いた商品がなぜ安く販売されているか?を調べることも良いと思います。日々の生活で起きる変化の理由を調べることは子供たちが、これから生きていくための知識になります。

2. 飢餓をゼロ

毎日食事をきちんと取れている子供たちには、飢餓は遠い話かもしれません。しかし今、日本では、「こども食堂」が増えています。2021年の調査では、6,014。しかし、まだ足りないと言われています。「こども食堂がなぜ必要なのか?」を調べてみることで、自分にとっての当たり前が当たり前でないことを知ることができます。ただし、同じくらいの年齢の子供たちのことを調べるので、自分と比べ、見下すような視点を持つことがないように注意してください。

3. すべての人に健康と福祉を

コロナ禍でマスクをする。それはなぜか?理由を知ることは知識になります。また、体育の時間はなぜマスクを外すのか?熱中症とは何か?自分の健康をどう守るのか?マスクすることを「みんながしているから」ではなく、理由を知ることで納得してマスクをすることができますし、考えてマスクを外すことができます。そして、自分の健康を考えること、健康な状態はどんな状態か?体だけでなく、心の健康って何か?を考えることにも繋がります。これから暑くなり、寝つきが悪くなることもあると思います。その理由は何か?眠ることはなぜ大切なのか?などを考えても良いと思います。

4. 質の高い教育をみんなに

ICTが進み、今の小学生はパソコンやタブレットを持っています。ハードをもらっても、ソフト面が進んでいない地域もあるようですが、なぜ自分たちにパソコンやタブレットが配られたのか?この機器は何のために使うのか?を考えてみることで、有効に使うことができるようになります。親戚や知り合いに自分が住んでいる地域と違う場所(都市部と過疎地域や島しょ部など)があれば、学校生活を比べてみることも研究になるでしょう。

5. ジェンダー平等を実現しよう

男の子は青、女の子は赤、という時代は終わりました。今のランドセルはとてもカラフルで、女の子の人気カラー赤・ピンクに続いて、ブラウンや紫などが上位に入っています。多様性は大人だけの問題ではありません。まだ自我が明確になっていない子供たちには難しいことですが、男の子だから、女の子だから、という考えを持たずに生きていくのが、これからの小学生です。そういう意味で、自由研究のテーマに性別を意識したものをいれないことが自由研究の根本にあると考えます。

6. 安全な水とトイレを世界中に

日本は、水やトイレに恵まれた国です。しかし、地域によっては、水道水は飲めないという場所もあるでしょう。そして、井戸を使っている場所もあるでしょう。そういった場所へ行くことができれば、水はどこからくるのか?水はどこへ流れるものなのか?をか考えるきっかけになります。蛇口をひねって出てくるのが当たり前でないことを知ることも、自由研究になるのではないでしょうか?ダムって何のためにあるのだろう?も良いと思います。そして、汚してしまった水を綺麗にするのに、どれくらいの水が必要なのか?を調べてみるのも良いでしょう。また、暑くなると言われている2022年の夏に、節水を求められてもいます。それをどう乗り切るか?子供たちにできることを考えてみることも良いと思います。
洋式トイレしか使ったことがない子供たちが、和式トイレを使ってみることは新たな経験になるかもしれません。災害の多い日本です。洋式トイレでないと用が足せない、では済まないときがくるかもしれません。新たな経験は、知識を超えるものになります。

7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに

2022年の夏は節電を、と言われています。しかし、熱中症防止のためにはエアコンを使う必要があります。エネルギーは無限ではありません。そして、エネルギーには種類があります。スイッチをいれれば電気がつくということだけでなく、なぜ電気が使えるのか、その電気の元は何のエネルギーなのか?自分たちが住んでいる地域は、どんなエネルギーを使っているのか?を調べてみるのも良いと思います。再生エネルギーで運行している電車もあります。再生エネルギーって何か?難しいことのようですが、今当たり前にできていることが、いかに当たり前ではないかを知ることは、突然の停電時にも役立ちます。

9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

毎日、通る道や乗っているバスや電車、川を渡るための橋。これらは誰かが作り、点検をしてくれているから、私たちは使うことができます。電車の点検などは、終電後から始発の間に行われます。電車が時間通りに来る国は日本くらいとも言われています。そのような恵まれたインフラを支えている人がいることを調べることで、これまで知らなかった職業を知ることができます。

11. 住み続けられるまちづくりを

日本には、世界遺産が25件(文化遺産20件、自然遺産5件)あります。もし、そのエリアに近い地域に住んでいたり、旅行で行く機会があったりすれば、なぜ世界遺産になったのか?それを調べることで、守るべきことが分かります。また世界遺産でなくても、守るべき文化遺産はたくさんあります。そういった場所に落書きをしてしまう人がいますが、大切さを知っていれば、落書きや破壊をしない大人に育ちます。知らないからやってしまうという理由があるなら、知ることでやらないという大人になります。
また、障がいを持つ人が持っているヘルプマークや妊娠している方がもっているマタニティマークなどを知ることは、子供たちが他者に理解を持つ大人になることに繋がります。

12. つくる責任 つかう責任

食品ロス問題は、関わりやすい問題です。最近増えている賞味期限が迫った商品を販売する店舗に行ってみる。なぜ価格を下げて売っているのかを知る。「てまえどり」について知るなど、食品に関することは子供たちにとても身近です。また、物のリサイクル、リユース、リデュースの3Rについて調べることも大切です。また、自治体によって違う物の捨て方を調べてみることも良いと思います。

13. 気候変動に具体的な対策を

異常気象といわれていますが、すでに異常ではなく、暑い夏、長雨、ゲリラ豪雨など、子供たち自身も経験していることが多いです。それがなぜ起きているのか?そういう場合にはどう対応するのか?これは自分の命を守ることにも繋がります。雹が降る理由も調べてみると気候に興味が持てるかもしれません。天気は人の生活にとても身近なものです。晴れた日を天気が良い、雨の日を天気が悪いと言いますが、適切な雨は地球を守るため、植物が育つためには必要で、消して悪いものではないことも知ってほしいと考えます。玉ねぎが高くなっていることにも天候が関わっています。カレーに必要な玉ねぎが高くなっていることは子供にとってとても身近なことです。

14. 海の豊かさを守ろう

海岸や川沿いのゴミ拾いに参加することで、海や川沿いに落ちているゴミの種類を知ることができます。そして、なぜゴミがそこにあるのかを考えること。そのゴミが海に入ってしまったあと、川に入って海に流れついてしまったあとに起こることを知ることで、海に生きる魚に及ぼす影響を知ることができます。これはイベントでなくても、家族で行うことも可能です。イベントがなければできないという思いこみを捨て、定期的に行うことで子供たちは、正しくゴミを捨てる習慣が身に付きます。また、続けることで分かること、知ることは自由研究の材料になるかもしれません。

15. 陸の豊かさも守ろう

住宅地での熊の目撃などのニュースが流れています。なぜ熊は住宅地に来てしまったのか?森にいられない理由は何かを考えることが森林を守るという理解に繋がります。生き物を飼ったとき、命が尽きるまで面倒をみることが大切であるということから、生態系を崩さないということを学ぶことができます。生態系を壊すといわれているのは主に外来種ですが、ペットとして飼われていた動物を野生に放つことがもたらす問題を考えることで、命の大切さを改めて知ることができます。