解説

【解説】SDGsライター伊藤緑の、こんなとこにも「ちょっとだけ」SDGs

第2回(5/31放送)

テーマ(1):身近でも起こりうる 世界の水不足問題をなんとかしたい!

ディスカッション板書
ディスカッション板書

(1)雨をためる」。温暖化による気候の変化で、台風の規模が大きくなったり、線状降水帯の発生頻度が増えたりしています。雨として降る水を持続可能な方法で再利用すれば、水不足の解決になります。

11.住み続けられるまちづくりを11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。

(2)使ったものを再利用(おふろの水を洗濯に)」。水も使用目的によっては、必ずしも水道水(衛生面での安全性)でなければならないわけではありません。洗濯以外でも、植木への水や、網戸を洗う、車のタイヤの泥落としなど。衛生面が叫ばれる今ですが、目的によって水の再利用を考えることも大切なことです。水道代の節約にもつながります。

12. つくる責任 つかう責任12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。

(3)フロボットを作る」。水を使いすぎることなく衛生的な生活をするために、お風呂の水のかさ増しができれば、持続可能な取り組みです。

3. すべての人に健康と福祉を3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。

(4)水不足ヤバいぞフェス」。面白いと思います。SDGsで語られることのすべては、知ってもらう(認知される)ことから始まります。日本では水に困っている人は少ないですがゼロではありません。また、世界的に見れば大きな問題です。当たり前に使っている水の大切さを知ってもらうためだけのイベントは、「水が大切であることを認知して行動をする」ために意味あるフェスです。このフェス(イベント)を行う際には、すべての蛇口にバブル90を付ける、雨水を使える場面では事前に貯めた雨水を使う、フェス中に節水企画を立て参加者がポイントを得られたり、達成するとオリジナルグッズがもらえたりのゲーム性があったりなど、ほかのフェス(イベント)との差別化を考えると面白いかもしれません。水を「押しボタン式」にすることもありですね。このようにフェスの運営にも、衛生面を守りつつ節水企画を盛り込むことでより話題になり認知されます。

6. 安全な水とトイレを世界中に6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。

(5)砂漠でラクダに乗って3日旅する」。2つのターゲットに繋がります。人は情報だけでは行動に移せない場合が多いです。ですので、実際に自らが問題を体験し、どう向き合うかを考えるかはとても良いことだと考えます。ただし、衛生面には十分に注意をしてください。海外の水は日本の水とは違います、体調を崩したり、病気になってしまったりしては意味がありません。

6. 安全な水とトイレを世界中に6.4 2030年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。

15. 陸の豊かさも守ろう15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。

(6)映えるダム」。インフラとしての意味、映える場所に人を呼び込むという意味では考えられることです。しかしながら、ダム建設は非常に難しいものであり、自分が生まれ育った町が水の底に沈むことです。その場所に住んでいた人に与える心理面も考える必要があります。ちなみに、1973年に多目的ダムの建設計画が行われ、住民の立ち退きが行われた愛知県の「設楽ダム」は、計画から49年経った今も完成しておらず、2022年5月に「2034年完成」が発表されました。このような事例もあるダム建設は慎重に考える必要がある問題です。

9. 産業と技術革新の基盤をつくろう9.1 全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。

11.住み続けられるまちづくりを11.c 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。

実際の取り組み事例(大阪府東大阪市:バブル90)

2022年5月17日、愛知県豊田市の取水施設「明治用水頭首工」で大規模な漏水が発生し、工業用水・農業用水の供給ができなくなりました。この地域は、日本のデンマークと呼ばれ農業が盛んです。田植えの時期に打撃を受けています。

日本では蛇口をひねれば、安全な水が出ることが当たり前で忘れがちではありますが、災害時には水が、いかに大切で当たり前のものでないかを感じます。また、点検による短時間の断水でも不便を感じた経験がある方もいるのではないでしょうか?

安全・安心な水を得られない人が地球上にはたくさんいます。限りある水を無駄にせず使うために考えられた「バブル90」は、世界で活躍。まさに世界に向けた社会問題解決です。

6.安全な水とトイレを世界中に6.1 2030年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。

ガスコック(熱源となるガスを供給する管の、開閉を行う栓)の技術を生かす「バブル90」の開発が、親子の知恵と技術の結晶であることでのパートナーシップ。東大阪の町工場が起こした「創造性及びイノベーション」は、世界の水問題に一石を投じています。今回紹介された町工場の規模は分からないのですが、「中小零細企業の設立や成長」にも繋がるかもしれません。

8.働きがいも経済成長も8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。

アフリカのボツワナのレストランチェーンで使われていることは、まさに「持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する」です。限りある水を持続可能な形で使う。蛇口に取り付けるだけで、できる節水はより多くの場所に浸透すると考えられます。

「インフラ」は、日々の生活を支える基盤であり、公共施設、ガス・水道、道路・線路、電話・電気などです。大きな設備や施設を思い浮かべるかもしれませんが、大きな工事を行わず、変えていけることがあるという発見にもなります。

9.産業と技術革新の基盤をつくろう9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。

農業インフラという面で水は欠かせないものです。愛知県で起きた取水施設での漏水からも分かるように、飢餓をゼロにするために農村インフラは必要であり、水は必須です。

2.飢餓をゼロ2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。

テーマ(2):神社仏閣の経営を圧迫するお賽銭の入金手数料発生問題をなんとかしたい!

実際の取り組み事例(大阪府交野市: コインチェンジ)

銀行や郵便局が小銭の入金を有料にした理由には、低金利時代の窓口業務の負担軽減もありますが、ATMに小銭を多くいれることでATMに負荷がかかり故障することも関係しているとも言われています。実際、駆け込み入金での故障のニュースも出ています。
機械が計算してくれるのに、なぜ有料と思った方もいると思いますが、手数料を払えばOKという問題ではなく、ATMという機器(インフラ)を守るためでもあります。

住吉神社さんのアイディア「コインチェンジ」は、神社仏閣と地域との繋がりです。これは、まさにパートナーシップ。お祭りなどのイベント時だけでなく、日常的に地元の神社と商店が関係を持つことは、17.パートナーシップで目標を達成しよう です。

17. パートナーシップで目標を達成しよう17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。

両替手数料がなくなり浮いたお金で腐葉土を作りプレゼントすることは、地域コミュニティの繋がりです。また、花が植えられ街が綺麗になる、街が綺麗になると犯罪が減るという「割れ窓理論」があります。また、花を愛でることでの精神的な健康もあるかもしれません。15.cのターゲットの後半部分は規模の大きな話になっていますが、街の住む人たちが正しく繋がることで密猟(密漁)や違法な取引がなくなると考えられます。

15. 陸の豊かさも守ろう15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。

神社仏閣の経営が厳しいという問題について、「地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業」が必要だと考えます。人が来ることで、街(町)は潤います。近年の神社は、御朱印や授与品等に力を入れ、コロナ禍では郵送での授与も行っています。今後は、ディスカッションで出た電子マネー化も行われていくかもしれません。

8. 働きがいも経済成長も8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

神社は日本に8万8千社以上あるといわれていますが、神職(神社で祈祷やお祓いなどの神事を行なう奉仕者)は、2万5千人といわれています。大きな神社には多くの神職がいます。そのため、神職が兼務の神社も多くなっています。神社は男社会といわれており、女性神職も増えてはいますが18%程度。女性の場合、家が神社という理由で神職になることも多いようで、やはり男社会です。これは、ジェンダー問題と関係するかもしれません。

5.ジェンダー平等を実現しよう5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。