今年8月から新たに創設された「U-21 Jリーグ」が、若い選手たちのサッカー人生に大きな変化をもたらしている。19歳から21歳という、プロ選手として飛躍するための最も重要な時期。これまでは、トップチームでの出場機会に恵まれない若手選手が実戦感覚を保つことが難しかったが、この新リーグにより「観客が入ったスタジアムで90分間の真剣勝負を年間通して戦う」というプレー環境が整った。 「試合→休息→トレーニング→試合」というプロ本来のサイクルで、失敗と成功を重ねられるこの舞台は、若き才能たちにとって「希望の光」だ。
権田、前川、新井…… 神戸の「高すぎる壁」とつかみ取った実戦の場
この新リーグの価値を、誰よりもかみ締めながら戦っている選手がいる。ヴィッセル神戸に所属するプロ2年目のゴールキーパー、ウボング・リチャード・マンデー(21)だ。今期も優勝争いを繰り広げる神戸のゴールマウスを守るラインナップは、Jリーグ屈指。元日本代表の権田修一(37)をはじめ、前川黛也(32)、新井章太(37)といった経験豊富な凄腕守護神たちがズラリと顔をそろえている。 プロのピッチに立てるキーパーはわずか1人。J1で彼らの壁を越えてスタメンを掴むのは容易ではない。だからこそ、リチャードにとって「U-21 Jリーグ」の存在は格別だ。 「若手はJリーグでプレーするチャンスが少ないから、21リーグがあることでみんなプレーできるし、スカウトも見ている。アピールもできるし、本当に最高に良い環境です」 公式戦ならではの独特な緊張感とプレッシャーの中でプレーすることで、彼は着実な成長を遂げている。
「ホンマに感謝」コテコテの関西弁と愛される素顔
194センチ、84キロという恵まれた体格。長い手足を生かしたシュートストップと圧倒的なハイボール処理で強烈な存在感を放つが、一歩ピッチを離れれば、チーム屈指の愛されキャラだ。 ナイジェリア出身のリチャードは、京都の福知山成美高校時代に日本語を猛勉強。今では通訳がいらないほどペラペラで、口をついて出るのはコテコテの関西弁だ 。 「ホンマにこの機会を与えてくださった皆さまに感謝いたします。僕のことはリチャードって呼んでください!リッチーがあだ名やけど(笑)」 新体制発表会で見せた陽気な挨拶でサポーターの心をわしづかみにしたリチャードだが、試合に向かう準備には自分ならではのスタイルがある。試合前にはキリスト教のお祈りを欠かさず、大好きなナイジェリアのダンスミュージックを聴いて気持ちを高めるなど、最高のパフォーマンスを引き出すためのルーティンを大切に守り続けている。
権田・前川ら「最強の師」からの学びと家族を日本へ呼ぶ夢
権田や前川といった代表クラスの先輩たちは、超えるべき壁であると同時に、最高の「家庭教師」でもある。 「権田さんや前川さん、新井さんたちは、僕が若いから、めっちゃアドバイスをくれる。サッカー以外でも体のケアとか、どうやったらうまくなるかを教えてくれて、もうマジでいいと思います」 U-21 Jリーグでは現在2試合に出場(チーㇺは2勝1敗で3位)。9月のガンバ大阪戦では2失点と課題も残した。それでも、先輩たちの技術を目に焼き付け、今は課題である「左足でのビルドアップ」の向上に余念がない。U-21 Jリーグでの目標を尋ねると「優勝したいです。マジでみんなに見てほしいのはシュートストップ。点も入れないし、クロスボールのキャッチとか。優勝できたらステップアップして、ナイジェリア代表に入りたいです。マジで頑張ります」と鋭い眼光を見せた。 彼を突き動かしているのは、母国ナイジェリアで暮らす家族への強い思いだ。亡き父に代わり家族を支えたいと願うリチャードには、母と4人のきょうだいを日本に招待するという大きな夢がある。1人往復約32万円かかる渡航費は、5人分となれば大きな壁だ。それでも、トップチームで結果を出して勝利給を得られるようになれば、絶対に家族を日本に呼べる。異国の地で汗を流す熱き守護神は、家族の笑顔を思い浮かべながら、今日もピッチで己を磨き続けている。 成長のチャンスを手に入れた194cmの大器。偉大な先輩たちの背中を追いかけながら、異国の地で汗を流す熱き守護神のサクセスストーリーは、まだ始まったばかりだ。


