今週、サッカーW杯がついに開幕。世界中がサッカーの熱狂に包まれている。そして来年この熱気を受け継ぐのは、女子日本代表のなでしこジャパンだ! 舞台は1年後のブラジル。なでしこジャパンの司令塔として活躍が期待される長谷川唯(29)は「自分たちで取ったわけじゃない」とあえて過去の栄光を突き放し、自らの手で真の頂点をつかみ取るための「逆襲」を静かに、しかし熱く誓っている。
「自分が取ったわけではない」レジェンドを追うのではなく自らつかむ頂点
「(W杯では)優勝はもちろん、自分自身すごく楽しみたい」 2027年ブラジルW杯。狩野倫久監督が掲げる「世界一奪還」に対し、長谷川の言葉はどこまでもシビアだ。「世界一を取った選手は今、サキちゃん(熊谷紗希)しかいない。自分たちで取ったわけではない」2011年の栄光を知る先輩たちの背中を追うのではなく、今の自分たちの手で初めての頂点をつかみ取りたい。そんな貪欲なまでの「飢え」が、今の彼女を突き動かしている。 日本代表で100試合を超える経験を積み、彼女のリーダー像にも大きな変化が起きた。かつてはピッチ上で「自分がなんとかしたい」と即座に言葉をぶつけるタイプだったが、今はまず若い選手たちが何を考えているのかを「聞く」ことを大切にしている。自分一人が叫ぶのではなく、上下関係を超えて意見を交わせる空気感こそが、今のなでしこの強さに直結していると確信しているからだ。 その実直な素顔は、盟友・清水梨紗(29)が直面した最大の苦境への接し方にも表れている。パリ五輪初戦のスペイン戦で襲った悪夢の大けが。一時は「もうサッカーができなくなるのでは」と絶望の淵に立たされた清水に対し、長谷川はあえて、気を遣ってサッカーの話題を避けるようなことをしなかった。 「梨紗じゃなかったら嫌われていたかも」と笑い飛ばすが、そこには彼女なりの深い敬意がある。「この場面、梨紗ならどうする?」と1人の選手として意見を求め続けたのだ。中学時代から苦楽を共にしてきた2人にとって、もはや遠慮や気休めの言葉などいらない。どんな逆境にあっても、ただ純粋にサッカーの熱量でつながっていられる。そんな「最高の理解者」の存在こそが、長谷川が世界で戦い続けるための何よりの原動力となっている。
「次はゴールを」新たな役割と世界一への課題
ピッチ上では、飽くなき向上心で新たな武器を磨き続けている。所属するマンチェスター・シティでは、昨季までの守備的な役割から一転、よりゴールに近い位置でのプレーが増えた。その卓越したパフォーマンスは本場イングランドでも高く評価され、今季のリーグベストイレブンに選出された。 しかし、世界屈指の司令塔として認められながらも、本人の自己評価は驚くほどにシビアだ。得点やアシストという目に見える結果に対しては、「物足りない」と自らを突き放す。そのわずかな手応えを「満足」ではなく「さらなる課題」へと変換し、なでしこの攻撃を一段階引き上げるための過酷な役割を、彼女はあえて自らに課しているのだ。 1年後に控えるブラジルW杯。かつての「天才少女」から、仲間の声を聞き、チームの心臓として鼓動する「真のリーダー」へと脱皮した長谷川唯。彼女の足元から放たれるパスと、自らのゴールが、再び世界を青く染める日は、もうすぐそこまで来ている。


