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2017年3月14日

和歌山カレー裁判 やり直し 判断へ

19年前、猛毒のヒ素が入ったカレーを食べた住民4人が死亡した、「和歌山カレー事件」。

この凶行に及んだとされるのが現場近くに住んでいた主婦・林真須美死刑囚。

最高裁で「死刑」が確定しています。

しかし、真須美死刑囚の弁護団はこの事件をめぐって、早ければ今月中に”ある判断”が下されるとみています。

それは、“裁判のやり直しを認めるかどうか”についてです。

 

 

【林健治さん】

「これは真須美からの手紙です。(届いたのは今年の)2月7日やったね。近くに引っ越してきてね、しょっちゅう会いに来てって書いてあります」

林真須美死刑囚から届いた手紙。

見せてくれたのは真須美死刑囚(55)の夫の健治さん(71)です。

 

【林健治さん】

「どっから考えてもやってるように思わん。もし、やったんやったら20年間して一貫してやってないって言い切るのは出来るかな。あの調べの厳しいこと、普通じゃないよ」

(消防無線)「大人及び子ども、10名程度食中毒」

 

1998年7月25日。

和歌山市園部の夏祭りに参加した住民らが次々と体調不良を訴え、67人が病院に搬送、うち、10歳と16歳の子供など4人が死亡しました。

住民らが炊き出し、祭りで振る舞われたカレーに、猛毒の「ヒ素」が混入されていたのです。

 

一体誰が、毒物を入れたのか。

事件から1か月が経った頃、現場近くに住む真須美死刑囚が注目を浴びました。

カレー事件が発生する前に、健治さんやその知人が「ヒ素中毒」に似た体調不良を訴えて入退院を繰り返し、多額の保険金を受け取っていたと報じられたのです。

真須美死刑囚は祭りの日、交代でカレー鍋を見はる当番もしていたとの話もあり、「疑惑の人」として自宅の周りを報道陣が連日取り囲む異常な事態になりました。

このとき真須美死刑囚は、取材に応じています。

【林真須美死刑囚(当時37歳)】

「まるで私が詐欺行為をしているかのようにマスコミ週刊誌さんだけが騒ぐんです。カレー鍋は左の真ん中らへんにあった」

(Q触っていない?)

「そこには行ってない」

(Qヒ素を扱ったり見たことは?)

「ないですよ、そんな」

保険詐欺の関与も、毒カレー事件への関与も、否定しました。

しかし…。

(警察官)「林さん…おはようございます」

(記者レポート)「現在午前6時2分 捜査員が自宅の中に踏み込みました」

事件発生から2ヵ月以上がたった1998年10月。

真須美死刑囚と健治さんは、知人にヒ素を飲ませ保険金をだまし取った、殺人未遂と詐欺などの疑いで逮捕されました。

警察は、保険金詐欺の疑いで林夫妻の自宅などを捜索。

自宅の台所にあったプラスチック容器や、親族の家からヒ素の入ったドラム缶などを発見。

カレー事件の容疑者を一気に真須美死刑囚に絞り込みました。

その後、真須美死刑囚は健治さんにもヒ素を飲ませ、保険金をだまし取った疑いで再逮捕されます。

しかし、健治さんはシロアリ駆除会社を経営していたときに仕入れたヒ素を「保険金欲しさで、自分自身でなめた」と否定します。 

【林健治さん】

(Qヒ素は自宅にあったんですか?)

「あった」

(Qなぜあった?)

「それをなめたりしてね、急性腸炎になって入退院したら1日の給付金というのがおりるでしょ。その給付金を狙うためになめたりする。仮病薬になったね。小遣いなくなったらそれなめて。自分でなめた金は、裁判で出たのは8億7千万」

(Q真須美死刑囚から飲めと言われたことは?)

「それは全然ない。もし真須美に飲まされてたら死んでるな」

裁判所は「家族をかばっている」として健治さんの主張を却下。

真須美死刑囚が飲ませたと認定しました。

健治さんは、検察官からこの事件の取り調べを受けた際、ある取引をもちかけられたと主張します。

 

【林健治さん】

「(検察官が)真須美に毒飲まされて、今は憎くて仕方ありませんと。だから極刑は仕方ありません、極刑をお願いしますと裁判長の前で言えと。(健治さんの)刑の求刑はわしがするからお前がこっちに協力してくれたら、そこらのところは考えてやると 明けても暮れても言われました。なんか証拠でもあったんですか?って聞いたら、なんも証拠はないんやって。だけど、世間が騒いだんで誰か1人犯人にしてまわしゃーないやろってしょっちゅう言われた」

 

真須美死刑囚が犯行を行ったことを決定づける物的証拠が何一つない中、焦点となったのは、カレーに混ぜられたヒ素と、真須美死刑囚の周辺で見つかったヒ素が同一のものかということ。

警察から依頼を受けた東京理科大学の中井教授が、当時最新の大型放射光施設、「SPring-8 (スプリングエイト)」で、カレーと、真須美死刑囚の周辺で見つかったヒ素関連の証拠品数点について、調べた結果、不純物の割合などからこれらは「同一と考えていい」と鑑定したのです。

 

【東京理科大学 応用化学科 中井泉 教授】

「我々の化学者の立場から考えますと、ほぼ同一といっていいと思います。総合的にみても問題ない。十分な証拠であると私は現在考えています」

逮捕直後から、カレー事件への関与については否認し、その後口を閉ざしていた真須美死刑囚。

捜査当局は、直接的な証拠も、自供も無い中、この鑑定結果を大きな根拠に、カレーにヒ素を入れ4人を殺害した罪などで起訴したのです。

そして、事件から4年以上が経った2002年12月。

和歌山地方裁判所での判決の日には、32席の傍聴席を求めて、2000人以上が抽選に並びました。

そして…。

【記者】

「死刑です。死刑です。真須美被告に死刑を言い渡しました」

その後、上告された最高裁判所も死刑判決を言い渡しました。

「動機は分からない」としながらも、「カレーに混入されたヒ素と、組成上の特徴が同じヒ素が自宅から見つかっていて、カレーにヒ素を入れる機会は林死刑囚にしかなかった」としました。

 

(林真須美死刑囚の手紙の文面)「私は犯人ではなく、国に殺される理由は何もありません」

 

これは、手記を出した出版社に、死刑確定後に届いた真須美死刑囚の文章です。

 

(林真須美死刑囚の手紙の文面)「何とか一日も早く再審無罪としてもらいたい」

 

健治さんらは、2009年、裁判のやり直しを求めました。

弁護団は京都大学の河合教授に当時SPring-8 で鑑定されたカレーや真須美死刑囚周辺のヒ素のデータの再分析を依頼。

その結果、カレーの鍋にヒ素を入れるのに使われたとされる紙コップについて、新たな分析結果を示しました。

【京都大学大学院工学研究科 河合潤 教授】

「違うドラム缶に由来するヒ素が紙コップに入れられてカレーに投入されたことが言える」

紙コップに付着したヒ素は別の物。

これまでの鑑定結果を覆す意見書を裁判所に提出したのです。

【京都大学大学院工学研究科 河合潤 教授】

「不純物をみると、不純物は明らかに違っていて、紙コップに付着していたヒ素と、(林真須美死刑囚の周辺で)保管されていたヒ素とは成分が違う。同じ製造業者が作ったヒ素ですが、別の日、あるいは別の年に輸入したヒ素であると結論づけることができます」

カレーの鍋の中のヒ素については、データが乏しく検証できなかったということです。

当時、SPring-8 で鑑定を行った中井教授は、

「私の鑑定が唯一、カレーのヒ素と真須美死刑囚の周辺のヒ素を結びつけることが出来る、最適の手法だった。犯行に使ったヒ素が、同じ商品の別のドラム缶から入れられた可能性は鑑定結果から否定できないが、それは捜査機関が考えるべきことで、我々の鑑定の範囲外だ」と話しています。

【林健治さん】

「あ、ここが現場。夏祭りやりよったんよ。ここで、20年前にあんな大騒ぎがあったのかと、考えられんねやっぱり。やってないならやってないで助けてやりたいね」

 

真須美死刑囚が拘置所の中からこう問いかけます。

 

(林真須美死刑囚の手紙の文面)

「裁判員となった日本国民1人1人の方は私を死刑にしますか?」

 

弁護団によると、早ければ今月中にも、やり直しの裁判を認めるかどうか和歌山地方裁判所が判断するということです。

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