大阪市にある私立の男子校・清風高校。文武両道の名門校ですが、今校則を巡りある声があがっています。
生徒たちの髪型を見てみると、きれいに揃えられた刈り上げ。清風高校には「必ず裾と耳もと全体を刈り上げしなければならない」という校則があり、“清風カット”と呼ばれています。
しかも、「これを守らない時は退学になる」という校則になっています。
清風高校2年生:
「色んな先生が交互に1人ずつ見てきて、アウトだったら『アウト、切ってこい』と言われます。清風に入ったから、しょうがないなと思っています」
毎月100人ほどを清風カットに仕上げるという理髪店は…。
ヘアーサロンの店長:
「正直、皆さん全然『いやや』とか、そういう感じはないです。入る時に校風とか全部理解して入ってると思うんですよ、私学の場合は」
一方、卒業生は…。
卒業生:
「(Q.髪を切るペースは?)月一です。検査にあわせて3日前とか1週間前にバリカンでいってもらって。後ろは大体3ミリとかつまめないくらいって言われてました」
別の卒業生:
「結構みんなイマドキの感じにうまいことアレンジしてて、ブラックじゃない!絶対違います。特色ですね!」
清風カットについて理解する声もありますが、去年一部の生徒が声をあげました。
<反対の訴えを起こした生徒>
「髪を染めようとも、長髪にしようとも考えていない。普通の高校生がしている髪型、それすらできないのがうちの学校なんです」
頭髪規定の撤廃を求め、大阪弁護士会に嘆願書や署名を添えて、匿名で人権救済の申し立てを行ったのです。
伝統の“清風カット”、守るべきなのか変えるべきなのか、街の人は…。
男性:
「厳しいですね、退学は…。そんな高校まだあるんだなって」
女性:
「(入学して)思ってたのと違うっていうこともあるだろうし、それによって変わるか分からないけど、言うことは大事じゃないかなと思います」
別の男性:
「私立っていっても宗教系の学校や、色んな学校があるじゃないですか。入学の時に条件を出したうえであれば、それはやむを得ないかなと思います」
学校を運営する清風学園の担当者は…。
<清風学園の担当者>
「頭髪規定を理解し入学しているはずで校則は学校の特色。学校としては十分な対応を心がけていくが、一部の生徒の声で変えるわけにはいかない」
厳しい校則に法的問題は…。また、学校独自のルールはどこまで許されるのか…。菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「ブラック校則であれば違法にもなり得ますが、清風カットはセーフかと思います。
校則は、学校側が裁量権という一定の範囲内で制定することができます。教育目的であり、合理的な範囲ならば適法なのですが、その範囲を出てしまう校則だと違法ということになります。
例えば『下着の色は白』なんていうルールは、それって目的は教育のためなんですか?なぜ必要なの?と合理的な範囲を超えてしまっていて、違法ということになりかねません。
私は本来、生徒たちがライフスタイルを自主的に決めるという権利は認めたいんですけれども、私立学校は公立とは違う独自の教育方針もあり、それは社会の中で尊重すべきことだと思っています。
清風学園がなぜ“刈り上げ”と定めているのかですが、これは『仏教の戒律を守る精神で堅く守ってください』という形で教育をされているということで、長髪とは相容れない教育方針があると。健全な宗教に対する理解というのは、社会はそれを尊重しなければいけないということがあります。
さらに、そうした校則を承知して皆さん入学しています。また丸刈りとは違って“清風カット”だと、それほどライフスタイルへの侵害はきついものではないということで、どちらかというと裁判所で正面から争ったら、裁判所は『セーフ』と言うかもしれません。
一方で、『守らないと退学』というのはちょっと厳しいのではないでしょうか。
ルール自体を変えようと正面から突破するのはなかなか難しいかもしれませんが、ただ違反に対して1発レッドカードというのは厳しすぎると思います。『まずイエローカードからやってください』というような戦い方はできるかもしれませんね」
――今回は、生徒が弁護士会に人権救済の申し立てをしたということですね?
菊地弁護士
「そうですね、人権に関しては我々弁護士がお助けすることですが、皆さんから声を上げることは大切だと思います。
人権救済申し立てというのは、色んな所で人権についてお困りの方からの申し出に対して、弁護士会などが人権侵害されていないかということを調査して、場合によっては問題のある所に勧告や警告などを出すというものです。
ただ、法的な拘束力がないんですね。強制的に調査できるわけではなく、勧告などに相手が従わなければいけないということでもないという限界があります。しかし、一定の社会的な地位がある組織ですから、それなりの価値はあると思います」
(関西テレビ1月18日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)