緊急事態宣言が出ている中、子どもの受け入れを続ける保育の現場。
新型コロナの影響で様々な感染対策をとって運営をしていますが、業務の負担が大きくなり、保育士をやめたいと思う人が増えているといいます。
保育の現場は今、何を望んでいるのか取材しました。
■新型コロナの影響で…負担の増える保育現場
大阪市生野区にある民間の認可保育所・「東桃谷幼児の園」。
緊急事態宣言が出ている中、いつもと変わらず0歳から5歳まで134人の子どもを受け入れています。
ここで働くのは、保育士のほか、栄養士や看護師、パートの職員あわせて39人。
保育の合間に、子どもが触れるテーブルや棚、おもちゃなどをこまめに消毒しています。
「行くよ~!着いてきて」
1歳児のクラスを担当している、保育士の湯口修平さん(38)です。
【保育士・湯口修平さん】
「今まではなかったような消毒作業とか、子どもたちの衛生面も、これまでも気にしているけど、今まで以上に気を配らないといけないというのは、負担と思ってしまう部分も正直あるのが本音です」
以前は、給食を子どもと一緒に食べていましたが、同じ空間で保育士がマスクを外すことを避けるためにやめました。
遊び回った子どもたちが昼寝をしている間、保育士は順番に職員室に行き、黙って食事をとります。
子ども同士の接触も極力減らすため、様々な年齢の子どもたちが一緒に遊ぶ「異年齢保育」もやめました。
【保育士・湯口修平さん】
「コロナまではいろんなクラスが集まって歌ったりしていたんですけど…。(異年齢保育で)乳児は5歳児の姿をみて憧れていろんなことをしていくが、接点が薄く薄くなってしまうのはコロナになってから特に。もどしかしいけど、一緒にはできないし」
■子供を預かり、保護者の生活を支える
午後6時ごろ、保護者が続々と子どもを迎えにきました。
その中には医療従事者もいます。
【手術室で働く看護師】
「看護師です。大きなオペもあるし、がんの人もいるし、帝王切開の人もいるので。預けないと昼間に仕事ができないので、すごく助かっている」
女の子を迎えに来たのは、コロナ患者を治療する病院に勤務する看護師の女性。
夫も看護師のため、夫婦ともに休みがとれる状態ではありません。
【コロナ患者に対応する病院で働く看護師】
「休める状況じゃなくなった、職場が。看護師が足りていないので」「子どもも保育園に行きたがるんですよ。楽しいし、ずっと家にいると『い~』てなるから。(家だと)お昼寝していなくても夜寝ないとか。やっぱり保育園での活動量がすごいから」
保護者の中には、コロナの影響で仕事を失った人もいます。
【保育士・湯口修平さん】
「雇い止めにあったとか、仕事を変えたという話も聞くので。そういう社会状況の中で、自分たちにできることは子どもたちを預かって保護者の生活を支えるというのがあるかなと思うので」
■高まる危機感…職員への早期のワクチン接種を
感染者の増加や変異ウイルスの拡大とともに、保育所などでのクラスターが増えている中、職員の危機感は高まっています。
この日の朝、登園してきた子ども2人に37.5℃以上の発熱がありました。
保育所は保護者に連絡し発熱した子どもは自宅に帰らせて、症状がおさまるまで登園を控えてもらいます。
これまで、この保育所では、職員1人と子ども1人の感染が確認されましたが、濃厚接触者は全員が陰性でした。
ただ、園長は今後クラスターが起きる不安は拭えないとして、大阪市でも早く、保育現場の職員にワクチン接種を進めて欲しいと訴えます。
■責任ある仕事なのに「低い給与」…懸念される離職
こうした中、懸念されるのが保育士の離職です
全国の保育士などの労働働合が、去年10月から今年1月に行った調査では、コロナの影響で業務の負担がさらに増す中、「いつも仕事を辞めたいと思っている」と答えた人が約12%と、過去10年間で最も高くなりました。
【認可保育所の保育士(20代)の回答】
「保育士は責任のある仕事なのに、全然給料がもらえない。いつやめてもおかしくない」
【認可保育所の保育士(30代)の回答】
「大好きな子どものためになるなら何でもしますが、やることが多すぎて終わらないうえに増えていく。やめようと思うが、本当はずっと続けたい」
国の基準をもとに決まる保育士の平均的な給与は月額で24万9800円。
(2020年賃金構造基本統計調査)
すべての産業の平均に比べ、8万円ほど低くなっています。
労働組合などは、国に対し改めて賃金水準などの引き上げを求めています。
■長年改善されない「保育士の不足」
【保育士・湯口修平さん】
「お父さんお風呂入るから、中に入っといて」
湯口さんは万が一のことを考え、保育所から帰宅したらすぐに風呂に入ります。
家で待っているのは幼い3人の子どもたち。
妻の明香さんは幼稚園の教員の資格を持ち、湯口さんの大変さもわかっています。
【湯口さんの妻・明香さん】
「私も(保育所でも)働いていたのでわかるんですけど、子どもの人数が多いし、リスクは他のところより高くなると思うので、心配ではあるんですけど。密になるからこそ、保育者と園児の信頼関係が生まれるような仕事だと思っているので。本人のやりたい仕事であれば、そこは辞めてとは言わないです」
コロナの影響が長引く中で、湯口さんは改めて、保育士という仕事の重要性を強く感じるようになりました。
だからこそ、保育現場の改善を急いで欲しいと訴えています。
【保育士・湯口修平さん】
「目の前にいる子どもたちを大切にしたいと思う、そのやりがいの部分でみんな続けている。でもバランスがとれなくなって、やめてしまう人もやっぱりいるし。お金をもらえたらいいだけという話でもないとは思うんですけど、保育士が少ない問題をどう解決するか」
保育現場で長年改善されていない問題が、コロナの影響で深刻さを増しています。