関西テレビ放送株式会社

 

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  • 5.問題となる取材

(1)集団的過熱取材(メディアスクラム)

民放連および新聞協会では、集団的過熱取材を「大きな事件、事故の当事者やその関係者の元へ多数のメディアが殺到することで、当事者や関係者のプライバシーを侵害し、社会生活を妨げ、あるいは多大の苦痛を与える情況を作り出してしまう取材」と定義し、「このような状況から保護されるべき対象は、被害者、容疑者、被告人とその家族や周辺住民を含む関係者で、中でも被害者に対しては集団的取材により一層の苦痛をもたらすことがないように特段の配慮が必要」としています。
そして、取材者が留意すべき点として以下の項目を挙げています。
@嫌がる取材対象者を集団で執拗に追い回したり、強引に取り囲む取材は避ける。未成年者、特に幼児・児童の場合は特段の配慮を行う。
A死傷者を出した現場、通夜・葬儀などでは遺族や関係者の心情を踏みにじらないように十分配慮する。
B直接の取材対象者だけではなく、近隣の住民の日常生活や感情に配慮する。取材車両の駐車方法、取材者の服装、飲食や喫煙時のふるまいなどに注意する。

しかし、注意しなくてはならないのは、集団的過熱取材への対応は、取材・報道を自粛することと同義ではないということです。事件・事故の当事者に取材することは取材の基本です。真実を追求するという報道の使命を果たす上で、取材される側のプライバシーに最大限配慮するということです。
集団的過熱取材で保護の対象となるのは主に私人です。公人の場合は、報道内容に公共性がある場合、説明責任が生じ、記者会見なども想定されるため、保護の対象にはならないこともあります。


事例 日本人大学生拉致事件
海外を旅行していた日本人の男子大学生が拉致された事件。現地で事態が急展開したときに備えて大学生の実家前にメディアが殺到し、夜になってもメディアスクラム状態が続く。テレビ局6社は1社ずつ6時間交代で自宅前に残る「代表取材」に切り替え、メディアスクラム状態を解消する措置をとる。その後、取材対象者と代表社の話し合いで、一定の節目ごとに取材対応を検討していただくことになり、自宅前からメディアは撤収した。

(2)身分を隠しての取材

取材の基本は、自分の所属・取材目的を相手方に告げ、了解を得て取材することです。しかし、非合法・反社会的な対象を取材する場合は、例外的に身分を「隠した」取材もあり得ます。
その際に条件となるのは
@身分や取材目的を明かすことで、取材が不可能となる場合
A取材内容に公共的利益がある場合
B取材内容が真実と信じるに足るものである場合
などが考えられます。
週刊誌の記者が主婦と偽って拘置所で被告と面会し、記事にしたことについて、1991年7月の東京地裁は「身分、目的を隠して取材し、公表した場合は、一般的にプライバシーの侵害として不法行為となりうる。その取材が実際にプライバシー侵害となるには、身分や目的を秘匿した理由、取材内容の私的性格の程度、公表されることの不利益と公表の必要性、記事内容の正確性などを考慮し、総合的に判断すべき」として、記者の行為をプライバシー侵害と認定しました。


事例 被災地取材で「偽ボランティア」と指摘される
新潟中越地震(2004年11月)被災地の取材で報道関係者の立ち入り禁止規制地域に、関西テレビ取材班がボランティア団体の同行取材で、ボランティアメンバーとともに現地に入る。このことが「身分を偽っての取材活動」と解され、取材を中止、放送もしないことを約束した。
ただちに報道局長が現地へ向かい、市長など関係団体へ釈明と謝罪を行った。原因は取材班が、現場の取材自粛などの取材ルールや現地情報を十分把握していなかったこと。

(3)電話・インターホン取材

電話やインターホン取材は、相手方に取材・放送の了解が得られているかという点で疑問が残るうえ、内容の信憑性において直接取材に比べると劣るといえます。よって多用は避けるべきですが、次の条件を満たせば許される場合もあると考えられます。
@取材内容が必要不可欠であり、相手方が直接取材ではなく、電話やインターホンの取材を望んでいる場合
A相手方に身分・取材目的を告げ、録音し放送に使用することについて、事前に了解が得られている場合
B時間的な制限などから、直接取材ができない場合
事件等の聞き込み取材で、インターホン取材を安易にしないように。
ただし、非合法・反社会的な対象を取材する場合は、例外もあり得ます。


(4)隠し撮り・隠しマイク

通常の取材では認められず、「身分を隠しての取材」同様、慎重な運用が必要です。ただし、次の条件を満たせば許される場合もあります。
@公然の取材方法では映像が得られず
Aその映像や音声なしでは報道目的が達せられず
B報道目的が公益にかなう場合
ただし、非合法・反社会的な対象を取材する場合は、例外もあり得ます。


事例 営業妨害で喫茶店廃業報道
ニュース番組で、移動販売のたこ焼き屋台を営んでいた女性店主が、駅前の喫茶店前に車を停め、喫茶店に対して脅迫めいた言葉や嫌がらせを続け喫茶店を廃業に追いやったという放送をした。この内容に対して女性店主が「番組は盗撮映像や誘導的会話などを繋ぎ合わせて構成し、人権を無視し犯罪者扱いにしている。公平な取材と謝罪を望む」としてBRC(放送と人権等権利に関する委員会)に審理を申し立てた。
放送局は、本事案は明らかに駐車違反や脅迫など犯罪が成立している。また報復の恐れがあるといった諸状況を考慮し撮影し収録した。匿名性についても映像を加工するなど配慮したと反論した。
これに対してBRCは「放送内容の主要な事実は真実であることが証明されているから名誉毀損など人格権侵害は成立しない。しかし報道の目的意図を明らかにして申立人から十分な事情聴取をすることなく放送した点において放送倫理違反がある。また隠しカメラ・隠しマイクによる取材が不可欠であったと認められる事情は存在せずこの点においても放送倫理違反がある」としている。
(2005年5月BPO/BRC資料より)

(5)謝礼の授受

1)接待

取材相手から、飲食などの接待を受けたり交通費や宿泊代などのサービスを受けてはなりません。

2)協力謝礼

取材や中継などで協力してもらったり、便宜を図ってもらったりした場合には謝礼を支払うことができます。

3)出演謝礼

ニュース取材では原則として謝礼を支払いません。


(6)建物内・公道上での取材

公共の場所(公道や公園など)での取材・撮影にあたっては、歩行者の通行などの妨げにならないように注意しなければなりません。公共の場所でも施設の内部に関しては管理者の許可が必要な場合が多くあります。雑居ビルなどは管理者の許可を得るよう努力しなくてはなりません。


(7)子どもへの取材

事件や事故の取材で、小学生以下の子どもにインタビューをする際は保護者などの許可をとるよう努力するとともに、子どもの心情に十分配慮する必要があります。
第4章−2−(1)「モザイク・ぼかし」参照)
第4章−3−(6)「児童および青少年への配慮」参照)


資料 「被害児童の家族・友人に対する取材」に関して 2005年BPO青少年委員会より
家族や友人等への執拗な取材、特に児童へのインタビューは、悲惨な事件によって打ちひしがれた心をさらに傷つけることにもなりかねず、また、親しい者の死を悼む子どもの心的領域に踏み込む行為でもあるので、慎重を期すよう要望したい。なお、被疑者家族への取材にも一層の配慮が望ましい。

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