ザ・ドキュメント

2007年12月18日(火)

企画意図

厚生労働省は来年度から、アルツハイマー病を原因とする認知症の全国的規模の調査、研究に乗り出す。アルツハイマー病は、認知症の原因の半数以上を占め、完治させる薬は未開発だ。同省によると認知症患者は2005年で推計170万人。30年には65歳以上の10人に1人にあたる353万人に増えると見ている。

予防、治療法が今のところ解明していない認知症は、本人だけではなく介護にあたる家族にも深刻な問題を投げかけてくる。

そんな光の見えない認知症を取り巻く現状の中で、認知症の母親を連れ、ライブハウスなどで歌うシャンソン歌手がいる。安土明中子さん(59)だ。外出をし、人の輪に加わり、そして自分の歌声が、すこしでも母親の心を元気づけることが出来ればと、願っている。

母親の貞子さん(85)は8年前に夫を亡くし、大阪市内のタバコ屋をひとりで切り盛りしてきた。5年前から、おつりを間違えたり、銘柄がわからなくなったりすることが多くなり2年前店を閉じた。認知症と診断され、ここ半年で病状が進み、要介護3と認定され週3回デイサービスに通っていた。7月末に転倒して左腕を骨折し、現在入院中。日中は弟さんが、夕方から朝までは明中子さんが病室に泊まり込んで介護にあたっている。本格的な歌手活動はここ2年休止している。

貞子さんの表情が和らぎ、笑顔になる瞬間がある。それは、娘の明中子さんのコンサートにゆく話と、昔、日本人形作りを学んで、人々の居間に飾られるまでになったころの話だ。老いて認知症になっても、人生を生きてきた誇りは失われない…。

実は、明中子さんは17年前に脳腫瘍の摘出手術を受け、後遺症で右足に麻痺が残っている。大病をきっかけに、故郷の大阪に戻り、歌手としてのリハビリを続けているころ、健常者と身障者のふれあいの場で活動をするようになり、様々なボランティア活動を行うようになった。母親の認知症が重度へ進む今、介護に否応なく一日中向き合わざるを得ない状況にある。しかし、歌手であり続けるための努力は怠らない。自分のために、そしてステージで最も自分の歌を楽しみにしている母親のために。

認知症という現時点では治療法がみつかっていない病。老い、病んだ中で、本人が、そして周りの者が、幸せを感じる瞬間を見失わないこと。光が見えない認知症の介護の現場で闘い続ける安土さん親子の姿をみつめ、長寿社会ニッポンの幸せの在り処について考える。

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