2007年10月30日(火)
ヒトに近いから ~森と別れたチンパンジーの余生~

ヒトに近いから ~森と別れたチンパンジーの余生~

企画意図

70年代、多くのチンパンジーが海外から輸入された。ヒトの医療や科学の発展のために研究の対象とされ、ヒトに近いことから多くの成果を生み出した。いまやチンパンジーは法令上「ひと科」に規定され、人間を理解する上で欠かせない存在となったが、その一方で野生においては急激に数を減らし、絶滅の危機に瀕している。日本にはいま347頭が55の施設に別れて暮らすが、孤独に生活するものも多く、高齢化も問題になりつつある。こうした現状をうけ、この春、チンパンジーの「幸せ」を追求する研究部門がサンクチュアリとして設立されることになった。我々ヒトと同じように社会性の強いチンパンジーにとって何が必要なのか?仲間(群れ)作りを通して幼くして野生の森と別れたチンパンジーの幸せを考える。

番組内容

熊本、雲仙普賢岳が眺望できる小高い山の施設で、80頭近いチンパンジーが余生を過ごしている。彼らの過去は決して幸せとは言えるものではなかった。およそ30年前、当時日本で蔓延していた肝炎ワクチンを開発する目的で幼い頃アフリカの野生から連れてこられたのである。
彼らの多くはこの施設に引き取られる前、狭い檻でひとり暮らしの辛い生活を強いられていた。そのストレスからかここに来た当初は毛並みが悪く、普通に歩けないものまでいた。そんな彼らがいまや見違えんばかりにたくましく育っている。理由は仲間。この施設では本来の野生のチンパンジーが持つ社会性や強さを取り戻すため、群れ作りが進められてきた。
その中で群れに入れない2頭のチンパンジーがいる。不治の病に倒れ、絶対安静の狭い檻で入院生活を送るヒトミ。気の遠くなるような長い時間ひとり暮らしを強いられ、社会性を失いかけているイヨ。この施設で最後となる群れ作りがはじまろうとしていた。チンパンジーの幸せを願い、20余年の間チンパンジーに体当たりでぶつかってきた飼育員と獣医らの葛藤がはじまる。