ザ・ドキュメント

2007年2月27日(火)

番組内容

-琵琶湖にラクダ-

湖畔から吹き付ける風にすっかりと山吹色に染められた琵琶湖のほとり。そのほとりに点在する住宅地の一角に四六時中動物の鳴き声がする倉庫があります。サル、ピューマ、アライグマ、ワニ。かつて動物園で脚光を浴びた主役たちから障害をもったペットまで500を越える固体がひしめき合って暮らしています。「堀井移動動物園」。移動動物園で活躍する動物たちの住居である倉庫は、決して動物たちにとってオアシスとは呼べるものではありません。馬と羊が身を寄せ合って暮らし、希少種のサル類や猛禽類が狭すぎる檻に閉じ込められるように暮らしています。

-トラ、ラクダ、柴犬-

堀井動物園には動物園の開園を目指し、移動動物園で連れて行くことのできない大型の動物も田んぼの一角を借りて飼育しています。人工保育で群れに馴染めなくなった牛の仲間、芸を覚えなかったチンパンジー。ほかにもシマウマ、ラクダ。動物園で見たことのある名だたる動物がひしめく中に1匹の柴犬がいます。この犬は人が近づくと牙をむき、堀井さんさえ近づけようとしません。この柴犬はガス室に送られる寸前でした。飼い主がペットとして念願の柴犬を手に入れたのも束の間、その子供たちが親の目の届かないところでバットや棒でおもちゃのようにいじめ続けていたのです。人を寄せ付けなくなったペットの運命。保健所のガス室に連れられて行く寸前に堀井さんに引き取られることになります。動物を引き取るたびに堀井さんは動物が感じさせてくれることがあるといいます。「いままで幸せだったかどうか、動物の表情やしぐさからわかる」。
堀井さんに命を救われた形になった柴犬は心を開くことなく、家族にさえ牙をむきます。いつの日か心を開くときが来るのでしょうか?

-園長の夢-

園長の堀井嘉智(ほりいよしのり)さん。幼いころの堀井さんは動物好きから捨てられた犬や猫を拾い集め、やがてケガや障害を抱えて薬殺寸前になった大型の動物を引き取るようになります。理由は「生きているから」。障害動物の集まる動物園がないことに疑問を持った少年はやがて大人になった今もすべての動物がのびのび暮らせる動物園の開園を夢みて移動動物園を続けています。子供たちの喜ぶ顔に後押しされ、保育園や孤児院に動物園の出前に勤しみ、帰宅しては糞掃除とえさやりにあけくれた日々。そして23年間ひとりで追い求めてきた夢がいよいよ実現しようとします。借金は無理をしたものの、琵琶湖のほとりの造成地は次第に夢を形に変えていきました。しかし、夢は目前で音を立てて崩れることになります。土地の用途の問題、住民からの反対などが原因でした。「近所からの文句がないのになぜ広いところに移すことに文句がでるのか」人生最大の絶望でした。
動物園の夢が現実味を帯びたのは今回がはじめてではありませんでした。十数年前のバブル期に購入した山間の静かな700坪の土地。ここにはこれまで堀井さんが歩んできた歴史が詰まっていました。「28年間も水に入ることなくよその移動動物園で連れまわされていたカバがうちに来た時どうしてもプールに入れてやりたくてね」小さいながらもカバのプール、猛獣用の檻、さびついた装飾品などが残っています。今や資材置き場となったこの土地は、堀井さんにとっては捨てきれない思いと宝物のつまった大切な「全部夢見て集めたもんですわ」県から動物園の許可が下りたのも束の間、これまた住民の反対によって断念せざるを得ませんでした。

-夢と現実-

「動物が好き」「広いところへ移してやりたい」その思いとはうらはらに、飼育環境は改善されないまま集まった動物たちに苦労を強いる状態が続きます。狭い檻の中では動物たちにケガや事故がおこり安く、獣医の往復と看病に時間が割かれます。また、高価な温度管理の設備もない環境では寒暑で動物の命が奪われていくのも事実です。愛護団体から批判も受けました。さらに鳥インフルエンザなど動物を介した感染病のニュースが世間を騒がせ、移動動物園の営業にまで追い討ちをかけます。残ったのは借金と家族、数え切れない動物たち。夜中に布団の中で泣き、すべての動物を殺してやめようとも思いました。堀井さんにできるはずはなく、動物園の敷地を求めてさまようがごとく、幼稚園児に夢を運ぶ動物バスはきょうもどこかを走り続けます。

-夢の続き-

この冬、堀井さんは資材置き場から資材を集め、田んぼの一角にある大型動物の飼育場で工事をはじめます。
「夢や夢やと失敗ばかりしてても仕方がない。動物をいい環境にしてやるのは今しかない。小さくても少しは広い動物園を作るのは今しかない」と。

関西テレビ ページトップへ戻る