ザ・ドキュメント

2006年11月28日(火)

企画意図・内容

去年秋、兵庫県豊岡市にある県立コウノトリの郷公園で、人工飼育された5羽のコウノトリが自然に放されて、1年が経つ。
日本で野生のコウノトリが絶滅して35年。最後の棲息地だった豊岡市で進められている、世界に例のない「野生復帰」プロジェクトだ。
ことしの夏には、新たに2羽の幼鳥が野に巣立っていった。
しかし、ことは計画通りには運ばない。
「野生に返った」コウノトリたちは、思いがけない行動に出ては、人々を右往左往させている。一時的に遠出もしたが、今やすっかり郷公園の周辺に居つき、餌を公園に頼っている。
自立にはほど遠く、放し飼いも同然の状態だ。

「野生復帰」には、地域の協力や理解がなければ成り立たない。
しかし、それぞれの思惑も様々だ。
子どもを運んでくるという言い伝えのように、おめでたい鳥とされながら、一方で、かつてコウノトリは、田んぼを荒らす「害鳥」だった。農家などでは放鳥への不安も根強い。
そんな中、環境への配慮を謳った減農薬・無農薬の「コウノトリ」米を栽培し、全国に売り出そうとする動きも出ている。
経済の活性化への期待も高い。放鳥後、県立コウノトリの郷公園は連日大勢の客で賑わっている。観光業界からは、コウノトリが外に飛んでいかず、公園に居ついてくれたほうがいい、との声も聞かれる。

コウノトリが生きていける社会は、人にとってもやさしい社会だ。
コウノトリと共に暮らすということは、これまで人々が失ってきたものを見つめ直し、取り戻そうとする試みでもある。
一方でそこには、便利で快適な生活を享受しながら、自然の恵みも手放したくないという、人間社会の論理も見える。



コウノトリたちが生きていける環境を再び取り戻すことは、容易なことではない。
人のせいで絶滅したものを、もう一度、人のもとに呼び戻そうとする「野生復帰計画」。
果たしてコウノトリたちが本当に「野生」に戻れる日は来るのか。

雪に閉ざされた冬から、繁殖を迎えた春、初夏の巣立ち…。そして、この秋には、さらに7羽のコウノトリが新たに野に放たれた。
放鳥から一年を追い、コウノトリと人とを巡る壮大な実験の行方を探る。

関西テレビ ページトップへ戻る