ザ・ドキュメント

2004年7月29日(木)

ナレーション

杉山一雄

音楽

はじめにきよし

「転んでもタダでは起きぬ!」夢とロマンの起業家たち。 これぞなにわの「ベンチャースピリッツ」

やっと新年度になって、景気が上向いてきたという。しかし、町には失業者があふれ、中高年者の自殺も絶えない。まだまだ暗い時代には違いない。しかし、時代に左右されず、夢とロマンを求めて明るく生きてきた中高年の発明家たちがいる。今風に言えば「ベンチャー」であり、大阪風に言えば「イチビリ」であり「けったいなおっさんたち」かも知れない。でもこの大阪的「イチビリ精神」こそが、今の時代を楽しく生き抜く方法なのではないか?番組では一見「けったいなおっさんたち」の「夢とロマンの人生」を描く。

大阪・淀川区に事務所を構える発明家「静誠哉(しずか・せいや)」氏(なんと!本名・62歳)は、発明にロマンを求め続けてきた。かつては冠婚葬祭用の白バトをリースする仕事の傍ら発明に燃えていたが、今は毎日ハトに追われていたら「自由がきかん」とハトのリース業をやめ、今は給・排水不要の「エコトイレ」の販売などに精をだしている。

生まれたとき「この子はやかましい子や!」と母親がつけた名前が「静誠哉」。「しずかにせーや!」というシャレのとおり、還暦を過ぎてなお口八丁手八丁の親父である。トイレに行けなくても用を足せる「おしっこちゅんちゅん」などユニークな作品を作り続けてきた。最近では老人の心のケアをお金に出来ないか?と「うぐいすケア」なるシステムを実験中。静さんの頭の中には普段から発想が「ごった煮」のように詰まっている。

4年前静さんはけったいな起業家の会「なんじゃもんじゃの会」をたちあげた。発明家や起業家たちの親睦会である。発明家だがこだわりは「ローテク」。「目で見て触って」分かる世界しか論じない。アイデアを出しあい、コネを使い助け合うのだそうだ。この会のメンバーからは「エコトイレ」の他に「発泡スチロール溶剤」「吸水土のう」「ダニ採りマット」などのビジネスが生まれてきたという。

会員の一人、「エコクリーン」の高岡勲社長(66)は元繊維関係の社長。およそ50人を雇いニット製品を販売していたが、スーパーなどの進出で流通システムが変わり、会社をたたんだ。繊維の知識を利用し、オムツからヒントを得て、水で膨れ上がる「吸水土のう」を開発した。普段は軽いので貯蔵や運搬に便利。しかも水害に使われるので水につかると三分で膨れ上がる土のうは官公庁から引っ張りだこだ。ライバルも多いが独自の生産システムを開発。それはかつて繊維工場が立ち並んだ大阪・泉州の「蓄積された高い技術力・ていねいな仕事ぶり」を利用したものであった。受注は携帯電話と自ら作ったホームページ、ほとんど一人で仕事をし、売り上げを毎年伸ばし軌道に乗りかけている。

をし、売り上げを毎年伸ばし軌道に乗りかけている。

「光電エンジニアリング」の津田功社長(58)は脱サラ組。40歳を前に、大手電機メーカーの営業職を辞めた。モノづくりの会社であるはずが、接待費作りに追われ社内の派閥にも嫌気がさし、自分の会社人生の先も見えてしまった。大企業の安泰な生活を捨てて照明工事の下請けを生活ベースにしながら、合間に発明に頭を使う日々。出来たてホヤホヤの作品は去年愛犬が死んだことをきっかけに、照明技術を駆使して作り上げた「毛細血管血流視認システム」という顕微鏡。津田社長はこれまでに、照明に鳥の糞がつくという問題解決のため、ハトなどの天敵・ハヤブサをモデルに「フライングファルコン」という鳥よけの器械も開発。上海の新空港にも採用された。

尼崎で止水工事の会社、「エコプロ」を営む勅使河原勉オーナー(53)は工事で稼いだ金を研究に費やす。自宅の隣の工場の物置で研究を重ね、発砲スチロールを溶かす薬品を開発。梱包で不要になったスチロールを溶かしてゴミを減らすだけでなく、溶かした液からさらに燃料にも使える軽油に近い物質に精製し注目を集めている。
このほか「食品リサイクル法」をきっかけにミミズの養殖に夢をかける青年など、それぞれが金だけではなく、仕事を自分の生きざまとして楽しんでいるように見える。

一攫千金の世界でもあるが、みんな真剣ながら金儲けにがつがつしている風情はない。むしろ、自らの頭の中からこんこんと沸いてくるいろんなアイデアを楽しんでいるように見える。そして会員たちも大企業に呑み込まれる危うさもない。「クジラのシッポとなるよりイワシの頭でありたい」のだそうだ。
静さんに起業家の心得を聞くと「影の薄い成功者となるよりも華やかな敗者となるのを望む、大胆な勝負師でんがな」という。

番組では「なんじゃもんじゃの会」の会員たち数名の日常と作品にかける熱意を取材し、夢とロマンを追う人々の姿を記録する。「これぞなにわのベンチャースピリット」だ。

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