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18時台の特集/バックナンバー
目次 › 2014年12月22日放送の18時台の特集/バックナンバー
精神障害があっても…「地域の中で暮らしたい」
特集は、精神科病院の現状について考えます。
日本では精神障害で1年以上の長期入院を続けている患者が20万人にものぼります。
これは他の先進国と比べて突出して多く、なかには、必要がない人まで入院を強いられているという指摘があります。
障害があっても地域で暮らしたいと願う人たちの声を聞きました。


 

ここは精神科病院の病棟。
日本では、およそ30万人が、統合失調症やうつ病などの精神障害で入院しています。
そのうちおよそ20万人が1年以上の長期入院です。

【長期入院している人たち】
「(入院して)13年。もっと入ってる人多いよ。20年、30年、ざらやで」
「ずっと入院です。50年…50年おります」

社会の偏見や差別を背景に、国は、精神障害者を病院へ収容し地域生活から隔離する政策を半世紀以上も続けてきました。
その結果、入院治療の必要がない「社会的入院」と呼ばれる人々が大勢生み出されたのです。

 

島田満生さんもこうした社会的入院を余儀なくされました。
かつて妄想や興奮などの障害で精神科病院に13年間も入院を強いられました。
今は生活保護を受けて暮らしています。

【食事の準備をする島田さん】
「ついでに薬飲んでいい?…すいません。分かってもらえるか分からへんけど、いちいち聞かないといけないっていう癖が(病院に)13年間おってついてしまって。どうしたいですかとか、希望を聞かれるとかえって困るねん。それが取れへんねん、いまだに」

今も訪問看護や通院治療を受けています。
13年という長い入院生活を送った島田さんにとって、地域社会に溶け込むことは容易ではありません。

【島田さん】「くくられて、ご飯食べるときも食べさせられるんです」

自分の意思とは関係なく入院させられた島田さん。
症状が重い患者を隔離する「保護室」に入れられたこともありました。
鉄格子の狭い部屋の中で手足を拘束される場合もあり、人間性を奪い兼ねないその治療環境はしばしば問題視されてきました。

【島田さん】
「縛られるの外してもらった人なんかは、のどが渇くと自分の尿とか、流してもらった便器の中の水をすくって飲むかどっちか。そういうところに僕もいたんです。もう思い出したくもない病院ですね」

島田さんのような社会的入院を減らすため、国は10年前から地域生活を進める方針へと転換しました。
しかし、経営上の問題から患者を手放さない病院もあり、状況は変わっていません。

 

そこで、新たに考えられたのが「病棟転換型居住系施設」です。
本来、地域移行政策では、病院を退院して地域で暮らすことを目指しています。
これに対し、今回、国がまとめた方針では、精神科病院の病棟をグループホームなどの居住施設に作り変えます。
そこに患者を住まわせることで「退院」とみなし、社会的入院の数を減らそうというのです。

 

<病棟転換型居住系施設」について考える会・ことし10月>

果たしてそれが退院と言えるのか?
国の提案に、当事者や家族・支援団体などから反対の声が上がっています。

【NPO大阪精神医療人権センター・山本深雪さん】
「いま私たちが言わないといけないのは、『院内に退院するのは嫌です』、その声は言わないといけないと思っています。あなた方がしたい人生、歩みたい人生を送っていっていいんですよというスタンスに立たないと、入院している方の口から自分の意欲・希望が本当の意味で口にできるわけがない」

【島田さん】
「退院すると自由があります。でも入院してると自由がないです。住むところとか死ぬところとかぐらい自由にさせてもらっておかしくないじゃないですか。そう思いませんか、皆さん?やっぱり住むところぐらいは僕たちの権利のあるところで」

日本の精神科病院はほとんどが民間経営のため、入院患者の数が減ることは死活問題です。
しかし、患者が地域の暮らしに戻れるように、退院を進めてきた病院もあります。
そうした病院も、「病棟を居住施設に転換する」という国の方針に疑問を投げかけています。

【光愛病院・有本進院長】
「(退院促進は)一緒に食事に出かけたり外出したり、家族への理解を促したり、本当に地道な作業。その人が退院後どんな生活がしていけるか、どんな希望を持って地域で生活できるかを思い描けるような支援が、いまの精神科病院に長期入院されてる方々には必要な支援だと考えています」

 

どうすれば精神障害者が地域で暮らしていけるのか――。
生活を支える取り組みも進んでいます。
このデイケアセンターでは、仲間づくりや就労の準備など、自立のための様々なサポートを行っています。

【こうあいクリニック作業療法士・陶山弘善さん】
「僕らがあんまり『これしたらどうですか?』『あれしたらどうですか?』ってなると、きっと島田さんはしんどくなるかなと思うんですよ」

【島田さん】
「就労っていうのはまだ早いと思う。だから、そうじゃなく、何かデイケアの中で楽しめるものがないかなと」

地域で働く場を提供する活動も行われています。
精神障害者を支援する団体で、弁当を配達する仕事をしている下村幸男さんです。

【弁当を届ける下村さん】「こんにちは、ひとつですね」 

【下村さん】
「入院中はもう本当に地獄、いつ退院できるか分からへんかったから、もう刑期のない刑務所みたいに思ってて」

下村さんは大学時代に統合失調症と診断され、7回の入退院を繰り返しました。
その時、長期入院していた仲間が次第に社会復帰を諦めていく姿を目の当たりにしたことで、精神障害者の自立と人権を訴える活動に加わるようになりました。
下村さんが所属するNPO法人では、障害があっても“地域で当たり前に暮らす”ことを目的に、およそ30人の精神障害者が働いています。
下村さんもここで、少しずつ社会との関わりを広げてきました。



【下村さん】
「この陽だまりの会に25年いて、その中でいろんな人とも出会えたし、地域の中でみんなと話をして、その人が元気になっていくこととかは僕も嬉しくなるし、その人も元気になってきたなっていうのも分かるし、そういうのがすごく自分にとっては支えになってるかな」

下村さんは仲間とともに音楽活動を通じて、地域で生きていくことへの想いを伝えています。
つらい経験も多くの仲間と出会うことで喜びに変えていける――
そんなメッセージが島田さんの心に響きます。
精神障害者として声を上げ続けてきた下村さん。
そんな先輩との出会いは、島田さんにとって大きな励みとなりました。

【島田さん】
「俺だけじゃなかったんやと思ったんですよ。俺だけじゃなくて、こういう思いしてる人がいっぱいおったんやと。同じ悩みを持つ仲間の話を聞いてみることをまずしていくことによって、将来はピア(当事者の)カウンセラーとして生きたい、やってみたい、そういう気持ちがあります」

精神障害があっても、地域で暮らしながら希望を見つけたいと願う人たち。
自由に生きる権利をどう保障するのか、国の政策が問われています。
2014年12月22日放送
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