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金曜日のギモン/バックナンバー
目次 › 2015年1月30日放送の金曜日のギモン/バックナンバー
金曜日のギモン!?なぜ賠償金が支払われない?
今回は、事件の被害者を取り巻く理不尽な現状を取り上げます。
事件で家族の命を奪われたり大けがをしたりしてしまった方が、刑事裁判とは別に「民事の裁判」を起こし、加害者に損害賠償を求めることがあります。
しかし、実際には、損害賠償を命じる判決が出たにもかかわらず、全く支払いが行われないケースが全体の7割にのぼるというんです。
どうして、そのようなことが起きるのでしょうか?


少年事件で愛する人を失った人たちが、その思いを語り合うシンポジウム『WiLL』。
この日のテーマは、損害賠償でした。

【長男を殺害された女性】
「加害者たちは何もなかったように普通に暮らしている。その中のささやかな罰として、頑張って働いて償ってほしい」

法務省によると、こういった事件の遺族に賠償金が全く支払われないケースは、およそ7割にものぼります。

 

その中の1人、市原千代子さん。
16年前、次男の圭司さんが近所に住む先輩2人と同級生に暴行され、亡くなりました。

【市原さん】
「小さい時からじっとしていることが嫌いな子で、ヤンチャな子でした。イタズラもよくするし。でも、かわいかった」

 

3人は圭司さんを呼び出して「日頃の態度が悪い」などと因縁をつけ、執拗に暴行を加え川に突き落としました。
さらに、コンクリートの側溝に頭から投げ落とされた圭司さんは、病院に運び込まれたときにはすでに瀕死の状態でした。

【市原さん】
「どうしてこういうことになったのか、誰がこんなことをしたのか、全くわからなかったので、驚いたというよりも愕然とした」

3人は傷害致死の罪に問われました。
その結果、20歳だった主犯が懲役4年を言い渡され服役。
ほかの2人も罪を償うことになりました。

刑事裁判で暴行した理由について納得のいく答えを聞くことができなかった市原さんは、3人に対し損害賠償を求める民事裁判を起こしました。

【市原さん】
「私たちはお金がほしくて(民事裁判を)したわけではなくて、彼らと直接話をする機会がなかったので。特に主犯は少年刑務所に4年の刑期で送られていたので、早い時期に彼らから直接、なぜそういうことをしたのか、私が知りたい部分を聞きたかった」

裁判では、求めていたのとほぼ同じ額、3人であわせておよそ1億円の支払いが命じられました。

 

法廷では、主犯に直接話を聞くことができました。

【市原さん】
「息子のなくなった命、奪ってしまった命と、自分たちの犯した罪に向き合ってほしいという思いはずっとあったので、そういうことも伝えられたっていうのは、伝えないまま裁判で終わってしまうのとは違うと思った」

しかし、主犯が罪に向き合うことはありませんでした。

【市原さん】
「少年刑務所を出所してきて、1度来てから全く音沙汰もないし、連絡もないしという状況になったので、このままでいいのかなという思いを抱きながら・・・いろいろな思いを抱えてました」

出所後、主犯は市原さんの家を一度訪ねたきり行方をくらまし、賠償金についても支払おうとしませんでした。

【市原さん】
「お金の問題ももちろんですけど、謝罪とか反省の姿というか、どういうふうに思っているのか全く見えないし聞こえてこないことというのがしんどいなと思いながら過ごしていました」

なぜこのようなことが起きてしまうのか――。
現在、損害賠償を支払わなかった人に罰則を科す規定はなく、「逃げ得」とも言える状況になっているのです。

【亀井正貴弁護士】
「被告の側に立つと、執行される財産がないというのは、ある意味、負けても結局失うものはないので、そういうような心境で対応している被告はいる」

財産を隠すような悪質な加害者もいます。

【亀井弁護士】
「自分名義だと差し押さえられるが、第三者名義とか現金で隠されてしまうと、執行ができない。そういう弊害とか不合理はある」

損害賠償が払われないまま、判決から10年となったおととし。
市原さんはある手続きをしなければなりませんでした。

【記者リポート】
「損害賠償を命じる判決は10年で時効を迎えます。市原さんは時効を延長するため、再び裁判を起こさなければなりませんでした」

 

損害賠償の支払いを命じる判決は、確定してから10年で時効となり、従う義務がなくなります。
この時効を延長して支払いを求め続けるためには、もう一度同じ損害賠償を求める裁判を起こすことが必要でした。

【市原さん】
「なぜ時効があるのかと思いました。1億円という金額を彼らに背負わせておきたかったので、やらなければいけないという思いはありました。本当にやり始めるとお金がいることを知っていたが、自分たちがまた負担してやっていかなければいけないのはおかしいなと思いました」

古くなっても大切にしている花は、加害者から送られたものです。
市原さんは、罪に向き合ってきていると思える2人を外して、主犯にだけ時効の延長を求めました。
最初の裁判でおよそ300万円、時効延長の裁判でおよそ30万円が必要でした。

去年10月のシンポジウムには、全国で初めて自治体が損害賠償を立て替えて支払う
条例をつくった兵庫県明石市の泉市長が出席しました。

 

【明石市・泉房穂市長】
「判決が出れば、300万円をまずは被害者の方にお渡しし、代わりに明石市が責任を持って永遠に300万円を加害者から取り立てるシステムです」

明石市の条例では、犯罪によって身内を亡くした人や大きな後遺症に苦しむ人に、300万円を上限に明石市が損害賠償金を立て替え払いします。

【泉市長】
「税金の滞納と同じようなことになるので、隠し資産であるとかも行政なら少なくとも一個人よりはより情報を集められる立場でありますので」

【市原千代子さん】
「私たちが加害者から取り立てるということは住所がない以上無理なんです。そういうことが現実としてこれからも根付いていくように、継続していく方法を考えてほしい」

賠償金を得られない事件の被害者や遺族が少なくない中、市原さんたちがずっと求めてきたのが立て替え払いの制度でした。

 

【市原さん】
「行政が加害者に取り立てに行ってくれるのは、すごいなと私は思ったんです。それは息子にいま私たちがしてあげられることはそれぐらいしかないんだろうなという思いもあってやっているが、直接彼らに関わり続けるのは本当にしんどいなって思います」

何の落ち度もない被害者たちに大きな負担としてのしかかる、損害賠償が支払われないという問題。
支援の手はまだ十分ではありません。
2015年1月30日放送
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